真章13~不伝~怪力乱神御伽噺~双子悪魔放送局~


双子悪魔から民衆へ。

はーい、ウシロノとショウメンだよ!今両方でお話してまーす!

我々はダンス・ベルガードを探してまーす!その為に放送局を乗っとりました!

良いかい皆、ダンス・ベルガードを探してよ!じゃないと拳銃が大きな音を立てて放送局を爆破させるからね!キャーハハハハー!





「お伝えしたい事は、それだけなのかい?」


放送局、放送室の有名DJ『オルガン・ベルノート』は目の前でケラケラ笑っている二人組に声をかける。

ウシロノはこくこくと頷いた。


「そうそう、ちゃんと伝えてよ!

僕達悪魔がこの放送局をせー、せー、せー」

「占拠?」

「そうそれ、センキョしたって!」

「ダンスー!立候補するなら今だぞ!早くしないと拳銃で放送局を爆発させるからね!」


かなりハイテンションでマイクに向かって喋りまくる二人組。

対してベルノートは冷や汗をかいていた。


「むむむ、見た目には可愛い少年少女だから楽しく話をしたい所なんだけど……警備員をハンマーで気絶させたり無茶苦茶暴れまくったりしているから、やはり君達は凶悪な放送ジャック犯なんだよな。

どうも複雑な気分だ」

「可愛い、私可愛いの!?やったあ!悪魔を長く続けてて良かったあ!」

「やったねウシロノ!ファンが増えるよ!どうしようファンクラブが出来たりしたらー!」

「君達を捕まえる軍団なら近付いてるから安心していいよ。

しかしそのピストル、本当に危険な物なのかい?俺は初めて見るんだが」

「勿論だよー!ダンス・ベルガードはこれで怪我したんだから!

放送局を爆発だって出来るんだよー!」

「ちょ、ちょっとショウメン」(ヒソヒソ)


ウシロノはこっそりショウメンに話しかける。


ショウメン(ヒソヒソ)「何?」

ウシロノ(ヒソヒソ)「大丈夫なの?私達は拳銃の使い方知らないのにそんな事言っちゃって」

ショウメン(ヒソヒソ)「大丈夫大丈夫!

今の所脅しは聞いてるから、きっとバレてないよ」

ウシロノ(ヒソヒソ)「はあ、ショウメンはもう少し後先を考えてよ」

ショウメン(ヒソヒソ)「ウシロノはもう少し前向きに考えようよ」


ウシロノとショウメンが話しているのは目の前のDJには聞こえておらず、とりあえず放送を締めようと言葉を繋げる。


「さて、この通り我々はウシロノ・ショウメンと名乗る少年少女にジャックされてしまった。

我々はダンス・ベルガードの情報をお待ちしています」

「皆ー!早く情報だしてねー!」



〜王城、会議室〜


会議室は酷い騒ぎになっていた。

この放送を聞いた国民達が王城に何度も何度も電話をかけ、事態を重く見たコッコ国王秘書が緊急会議を開いたからだ。

大臣の一人が叫ぶ。


「何だ今の放送は!

悪魔!拳銃!ダンス・ベルガード!?

我々が秘密にした情報が、次々と流れてきているではないか!」

「悪魔がこの国に存在しているなんて、聞いた事無いぞ!」

「警察や軍隊は今出撃準備しているが…出てきた情報は隠蔽できん!」

「ダンス・ベルガードが怪我した理由まで出てしまった!

これでは拳銃の存在が……人殺しの武器の存在が明るみに出てしまう!」

「使いたくなくて隠したというのに、なんて最悪の形で出てしまったんだ!

どう責任をとるつもりだ、コッコ国王秘書!」

「……」


厳格な顔つきの老人、コッコ秘書は静かに大臣達の話を聞いていたが、やがて静かに語り始める。


「先ず始めに、此度の騒動が起きる原因は私の始末の甘さにあった。

それは詫びよう、本当に申し訳ありません」

「……」


深々と頭を下げるコッコを見て、あれだけ騒いでいた大臣が静まり返った。


「次に、この状況を打破する為軍隊を出撃させ、全力でこの事態を解決に導く事にする」

「ぐ、軍隊?

おいおいちょっと待て、相手はたかが子ども二人だぞ?

わざわざそんな物騒な事しなくても……」


目を丸くしながら異議を申し立てる大臣。

だが秘書は頭を横に振った。


「大臣よ、悪魔を舐めてはいけません。彼等は狡猾にして残忍。

されどその姿は甘く誘惑しやすい姿であるのです。

だからこそ、放送局という施設はあっさり占拠されてしまったのですよ。

大臣よ、もう一度言う!

悪魔を許してはいけない!」


コッコは厳格な表情に僅かな狂暴性を潜ませながら叫ぶ。

大臣は思わず怯むが、コッコは構わず言葉を続ける。


「彼等は狡猾にして残忍!危険にして凶悪!

悪魔など、いいや科学以外の存在など、この世にあってはならないのだ!」

「あ、ああ……」


大臣は迫力に押され思わず頷いてしまった。

だから何故コッコがこんなに悪魔を忌み嫌うのか、聞く事が出来なかった。


続くか?続かないか?

答えは騒ぎ出した雄鶏だけが知っている。

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