第11話 二つの交わり
両軍船隊の間に浮遊する光の球体は少しずつ大きくなり、光りもつよくなっていく 。
「 愛季様 ! こ、これは一体なんと... 。 」
安東側の兵士がざわついている 。
「 うーむ... 。 雪乃殿、安東側は混乱しておるようじゃが... 。 それは我らとて同じ... 。 あとあと火の玉はなんなのか ? 」
李広も状況がよく飲み込めていないようだ 。
「 ...リリヤ...天界がなぜ開いたの... ? 」
私は小声でリリヤにきいた 。
「 ...お姉ちゃん、それは僕にもわからない... 。 でも、アリスが開けたのは間違いないよ 。...でも嫌な気配がする 。 」
リリヤも小声で雪乃に返した 。
安東愛季もこの事については想定外だった様だ 。
そして慌てて家臣に
「 ...おいっ ! あのバケ犬はどこだ !? 早ぅ連れてまいれっ ! 」
愛季は家臣に怒鳴り散らしている 。
「 ...慶広よ... 。 わしは航客と言うのは帝の御技によって巻き込まれここに流されると聞いておったが... 。 わしも長く生きとるがここまで大きなものは初めてじゃ 。 」
李広は息子の慶広に話している 。
「 しかし父上 ! それならば安東がっ ! 安東が外界と通じて招き入れた可能性もでてくるではありませぬかっ ! 」
慶広は訴えた 。
「 しかしそれは帝の... 。 」
その時、低い唸り声が聞こえた 。
「 ...我を呼んだ者は何処ぞ ? 」
ケルベロスが対岸の崖の上から声を出した 。
「 わしが呼んだのだっ ! 早う変な光と李広の軍をけちらせぇい ! 」
愛季は大声で喚いた 。
「 汝ではない... 。 もっと大きな者が我を呼んでおる... 。 」
そう言うと光の方と李広の船を交互に睨み、
「 ...李広よ、汝の船に天使はおるか ? 」
李広を名前で呼んでケルベロスは聞いた 。
「 犬神よ ! この船に天使とやらはおそらくおらぬ ! それよりも、わしの領民を返して頂きたい ! 」
李広は領民の解放を求めた 。
「 ...ならばお主の楓月綠... 」
ケルベロスが言いかけた時、光の球体が炸裂した 。
「 ...ケルベロスっ ! これは一体なんだっ ! 」
愛季の声がして、
「 ...犬神よっ ! これも貴殿の仕業かっ ! 」
李広の声もそれに続く 。
「 お姉ちゃん、来たよ 。 」
リリヤは静かに私に告げた 。
球体のあった空間からは徐々に光が消えて行き、やがて3つの影を残すのみもなった 。
「 ...直也様っ ! 大丈夫ですか !? カツェさん ! 状況をお願いします ! 」
3つの影は話始めた 。
( ...直也先輩 !? )
私は俺がいる事に気が付き飛び出そうとした。
「 お姉ちゃん待って ! 」
リリヤは私の背中に手を回すと、羽根を出して飛び始めた 。
「 ... ! リリヤ、私を乗せたら運べなかったんじゃ ? 」
「 あの時、館に言ってたらお姉ちゃん殺されてたでしょ ? だから僕はウソを付いた 。 」
「 ...ミサっ ! 場所は海の真上 ! アリスの鏡の磁場が切れたら真っ逆さまだよっ ! ...ここは蓬莱かい ! 」
カツェはミサに報告した 。
「 カツェさん ! 直也様が起きません ! 治癒魔法は使えませんか ? 」
「 ミサ、残念だけど私には無理だ 。 私は下界の民... 。 天界とペリア以外で大きな魔法は使えんのだよ 。 本来なら少し使えるけど鏡を通った後だから... 。 」
カツェは残念そうに言った 。
そこに
「 ...おーい ! ガブリエルの家長さーーーん ! 」
その声にミサは頭をあげた 。
( ...この声... ! リリヤ様 ! )
「 先輩 ! 大丈夫ですか !? 今、雪乃が行きますからね ! 」
二人は揃って磁場の上に止まった 。
「 ...リリヤ様っ ! こんなところにおられたのですね !! もう会えないかと... 。 」
ミサはリリヤに膝をついて言った 。
「 ミサ、その者が勇者なのだな ? ...息をして居らんのか !? 」
リリヤは驚きの声を上げて、
「 お姉ちゃん ! 早く石を ! 今はお姉ちゃんしか治せないっ ! 」
( ...先輩は私が助ける... ! )
私は先輩に近づき、石をにぎった 。
意識を集中させると、石は紅い光をより強くした 。
「 ...ミハエルの天使とその半身よ、その男を我に渡せ... ! 」
いつの間にかケルベロスは5人の上空に浮遊していた 。
「 ...ケルベロスよ、残念だがそれは出来ないっ ! 」
リリヤは自らも羽根を羽ばたかせ浮遊した 。
「 ...その男を連れて帰れば... ! ハーデス様は解放されるのだ ! そこをどけっ ! 」
ケルベロスは牙を剥き出しにしてリリヤに飛びかかった 。
その時、リリヤは飛びかかって来るケルベロスの頭に向かって真っ直ぐ飛んだ 。
そしてケルベロスの額に手の平を当てた 。
「 ...ハーデス様... 。 」
ケルベロスは呟いた 。
そして、ゆっくり4人の居る磁場へと降りてきたのであった 。
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