第9話 冥界の番犬



私はどうして ? と馬から降りてしまった 。


「 ...お姉ちゃんいっちゃダメっ ! 」


リリヤが慌てて止めようと馬から飛び降りたが、寸でのところで止められなかった 。


「 ... ! 何...これ 。 」


私の目の前先ほどまで私が看病してもらってた村があった 。 それは余りにも残酷に、そして徹底的に破壊され、皆殺されて見る影もない村があって... 。


「 ...お姉ちゃん...帰ろ ? 」


リリヤは雪乃に上目遣いで... 消え入りそうな声でいった 。 リリヤは人の気持ちが読めるから今の私の気持ちもわかるのかな 。


( ...どうして ? ...どうしてこうなるの ! ...先輩... 。 )


私が泣いて居ると別の方からも泣き声が聞こえてきた 。


「 お姉ちゃん... 。 誰か泣いてるみたいだよ... ? 死んだ人間を悲しむより、生きてる人を助けた方が良いんじゃないかな ? 」


雪乃はその言葉に半分魂が抜けた様に歩き出した 。


「 ...グスン...母ちゃん...母ちゃんっ ! 」


私が向かった先には佐吉が座って泣いていた 。


「 佐吉君っ ! 」


私は慌てて駆け寄った。


すると佐吉は


「...姉ちゃん...母ちゃんが...母ちゃんがっ 安東の殿様の...犬のバケモンに喰われちまったよ...っ ! 」


佐吉は雅さんの着物をギュと握って泣いて居る 。


「 ...佐吉君 ? ...もしかしてその犬頭が...3つなかった ? 」


リリヤがもしや ? と言う顔で聞いた 。


「 ...あったよ、あったよにいちゃん... ! 」


見た目の年齢は大して二人とも変わらない様に私には見えるけど、佐吉はリリヤの方が年上だと判断したみたい 。


リリヤは「 にいちゃん 」 と呼ばれたことに一瞬むっとしたみたいだけどすぐに戻って


「 ...お姉ちゃん、多分鏡の境界が崩れてる...おそらく奴はケルベロスだよ 」


ケルベロスって確か... 。


そうだ !先輩が前に


「 ギリシャ神話に登場する地獄の番犬... 。冥界の王ハーデスの忠実な配下である 。 」


って、カッコつけて言ってたっけ !


そしてリリヤは再び口を開けた 。


「 ...お姉ちゃん 。 おそらくケルベロスは不本意なんだと思う 。 あいつはこんなことしない 。 絶対に 。 ...僕の勝手な想像だけど...ハーデス達兄弟は閉じ込められてるんじゃないかな ? 」


リリヤはそれが当たり前の様に話している 。 しかし佐吉はもちろん私も


「 ... ? 」


脳内にクエスチョンマークがたくさん出ているのであった 。


「 わからないのも無理ないよ 。 お姉ちゃんも佐吉君も、とりあえずは李広を探した方が良いんじゃないかな ? 」


リリヤは少し嬉しそうに話した 。


「 ...にいちゃん ! なんで嬉しそうなんだよ ! 」


佐吉は怒ってリリヤに怒鳴った 。


( ...ここでなんで笑うの ? 私にはわからない... )


「 佐吉君もお姉ちゃんもわからないかなぁ ? ケルベロスがいるって事は、僕も向こうの世界に帰れるかもしれないんだよ ! これが嬉しくなくて何と言うんだい ? 」


リリヤはご機嫌である 。


「 ...コノヤロォっ ! 」


佐吉はついに殴りかかった 。


リリヤは


「 ...佐吉君 ...ごめんよ 。 僕が悪かった 。 でも本当に嬉しいんだ 。 」


リリヤは素直に謝った 。 佐吉はバツが悪そうにそっぽをむいた 。


「 ...でもよ... 。 何で母ちゃんが喰われるだよ... 。 」


「 いや、多分食べられてないよ 。 冥界から逃げる奴以外ケルベロスは喰い殺さない 。 ハーデスとの誓約に反するからね 。 」


佐吉は


「 って事は母ちゃんは生きてるっ !? 」


信じられない様に顔をあげた 。


「 多分ね 。 」


( ...雅さんが生きてる... 。 よかった )


私も心の重しが少し外れた気がした 。


「 ...おい 。 汝ら、何故この様な場所におるか ? 」


3人がようやく明るくなったと思うと、どこからかわからない、重く低い声が聞こえてきた 。


「 ...我が問いに答えぃ ! 汝ら、何故この様な場所におるか ? 」


同じ質問が2度繰り返された 。


「 ...この声 。...母ちゃんを襲った奴の声だ ! 」


佐吉が私に言った 。


「 ...ほう 。 我が人間如きを取り逃がしておったとわな 。 ならば、汝もこい 。 李広に汝らの命と引き換えに楓月綠神槍を頂いて帰る 。 」


そして佐吉を捕まえようとした 。


するとリリヤが


「 冥界の王、ハーデスの忠実なる部下よ... 。 何故、我らを襲うか ? ハーデスは冥界に来る者... 。 即ち、死んだ者しかお前達の世界でも危害を加えんでなかったか ? 」


いきなり大人びた感じでいった 。


「 ほう、汝、我がわかるのか ? 左様、我が主はこの様な事はせん 。 が、しかし、ご兄弟のゼウス殿、ネプチューン殿と共にオリュンポスの地下深くに幽閉されておるでの 。 わしは命令に逆らえんのだ 。 悪く思うな 。 」


ケルベロスは暴れる佐吉をくわえようした 。


「 ...では偽の主に伝えるが良い 。 ...天界のミハエルの生き残りがでたとな ! 」


ケルベロスは一瞬手を止め


「 ...汝は天使と申すか... 。 それも天界の王、ミハエルの残党とは... 。 我もこの様な事はしとうない 。 が、ハーデス様のため仕方ないのだ 。 」


そう言うと佐吉をくわえて走り去って行った 。


「 お姉ちゃんごめんね 。 助けられなかった 。 でも、すぐに助かるよ 。 お姉ちゃんの探してる人...大切な人が近づいてるきがするから 。 」


( ...私の大切な人... ? 先輩がっ !? )


私がそう思うとリリヤが


「 てやぁぁああっ ! 」


私のお腹めがけてダイブしてきた 。


「 ... !? 」


私はもちろんパニック 。


「 ...やっぱりお姉ちゃん、僕と比べておっぱいおっきいよ... このこのっ ! 」


リリヤは私の胸をつねったり揉んだり... 。 一体どうなっちゃうのかな...

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