第7話 蓬莱の島々・弍

...ザザザザッ...ザザザザッ...


波の音が聞こえる...あれ?私、どうしたんだっけ... ?


あぁ、先輩のタイムマシンで...


「 ...おい ! おい ! あんた大丈夫かい ! おい ! 」


なにいってるの ? 私は...


「 ちょいと ! 佐吉、医者呼んできなさい ! 」


お医者さん... ?


「 わ、わかった母ちゃん ! で、でもよぉ〜、こ、この女、海から来たし変な服装してるくないか... ? 」


海から来た ? 変な服装 ? なんのことだろ 。


「 いいからっ ! さっさとおし ! 」


「 お、おう ! 」


......私の意識はまた遠のいて行った...



「 ...ん...んんんっ... 。 」


「 おや ? ようやく目が覚めたかね ? あんた、真冬だってのに浜辺で倒れてたんだよ ? 」


私は浜辺で倒れてたの ? そしてこの女の人に助けられたってことなのかな ?


「 ...あ、あの...先ぱ...もう一人男の人はいませんでしたか ? 」


「 おいおい、あんた先に母さんに礼の一つでも言うもんじゃねーのかい ? 」


確かにそうだと思う 。 私はまだこの状況がよくわからなかった 。


「 いぃんだ、佐吉 。 このお嬢さんは多分まだよく解ってないんだよ 。 何がなんだか 。 」


この女の人は40前後かな? 佐吉と呼ばれてる男の子は10歳位に見えるけど 。


「 その...ありがとうございました... 。 唐突で申し訳ないのですが今年は暦では何年ですか ? 」


私はタイムマシンで過去、戦国時代に飛んだとおもうんだけど...。 ここで何年か聞いとくのは良いんじゃないかな ?


「 はははっ ! 面白い事を聞く子だねぇ 。 今は正親町天皇の永禄10年だよ 。 ちょっと前に織田の殿様が美濃の国を手に入れたそうだよ 。 」


ということは1567年あたりってことなんだよね ?


「 あの...ここは何処の国ですか ? 」


今自分の居る場所を把握しておいた方がいいと私はその時とっさに判断した 。


「 ここかね ? ここは蝦夷地の徳山館... 。 蠣崎李広様が収める天皇様の国の最北端だよ 。 」


蠣崎李広っていえば... 確か戦国時代に東北の大名さん達に娘をお嫁さんにたくさんしたって言う... ?


「 李広様はとても良い方なんだぜ ! 俺、この前 『 コンフェイト 』 っていう甘い物貰ったんだぜ ! これがうまいのなんの ! 」


確かコンフェイトとは金平糖のことだったはずだけど... 。 だけど、蠣崎氏にこの時南蛮の物がそう簡単に... ?


「 コンフェイトは南蛮の物ですよね... ? 」


すると二人は少し驚いたようで


「 そんなことは当たり前じゃないかい。あんた、南蛮の物、初めてかい ? 」


違う、初めてなんかじゃないよ 。ここに南蛮の物が有るのが不思議なの 。


「 ...いえ 。ここは南蛮の物がそんなに出回っているのですか ? 」


すると佐吉は笑いながら


「 あったりめぇじゃねーか ! ここは南蛮貿易の最大拠点なのよっ ! まぁ、密貿易なんだけどなっ ! 」


蝦夷が南蛮貿易 ? 私的に佐吉君が知ってるなら密貿易でもないような...


...ドンドンドンッ... !


おーい ! 雅殿 ! 居られるかね ?


そう言って初老男性のような声が聞こえてきた 。


「 これはこれは... 。 李広様、よぉおいでくださいました... 。 」


「 わぁ ! 李広様だっ ! 」


この男性が蠣崎李広... !


「 いやぁ乳母どの、浜辺に航客が流れてきたと言うから慌てて見に来たぞ ! もしやこの娘が航客か ? 」


航客 ? 私のことなのだろうか ?


「 はいそうでございますよ 。 」


雅さんが言うなら私はそうのかな ?


「 おぉ ! そちが航客か ! いやぁ、是非そちの国の話を...といかんいかん 。 騙されんぞ、乳母どの ! 航客ならなぜ話がつたわるのだ ! 」


話が伝わる伝わらないって...日本語じゃん...


ってあれ ? よく考えたら私の知ってるの日本語と、よく似ている...


「 いえ、間違いありませぬ 。 この服を見てくだされ 。 」


そう言って私の干していたであろう服を李広に見せてあげた。


「 まさしくこれよのぉ... 。 わしが10の頃見たのとよく似ておる... 。 そなた、名はなんと言う ? 」


私の名前 ? 昔にも未来人が来たのかしら ?


「 ...鈴下 雪乃と申します... 。 」


偉い人みたいだし礼儀正しくしておこうかな ?


「 ほう...姓名もちか... 。 ふむ 。 では雪乃、わしに仕えると良い ! 航客は国に利をもたらす 。 古来よりそう伝わっておるでな ! 」


航客が国に利益を ?


「 申し訳ありません、航客とはその... なんなのでしょうか ? 」


私がきくと、


「 悪い悪い、航客とはの 。 この蝦夷よりはるか北、世界の果てより来たる者の事じゃ 。 帝がもっておわす、天映球... それを使った反動で外界との道ができる...雪乃よ、そなたはこれに巻き込まれてしまったのじゃ 。 」


天映球... 世界の果て... 外界... 私にはよくわからないわね 。


「 とりあえず、館へ行こうではないか ! そなたには追って屋敷を与える ! 」


初対面の人間に気をゆるしすぎじゃないかな ? 私はちょっぴり不安になる 。



先輩、どうしてるかな...



「 では乳母どの、またな ! 佐吉も母様を困らせるんじゃないぞ ! 」


「 うんわかった ! 」


雅さんの家を出るとそこには馬が止まっていた 。


「 そなた、馬は乗った事あるかね ? 悪いがわしと相乗りだが...それっ ! 」


ぐいっと私の右手を掴んで軽々馬に私を乗せてしまった 。


「 では行くぞ ?それっ... ! 」


ムチの音を鳴らして馬が走り出した 。 漆黒の若い馬のように私は見えた 。



ヒューーーーーッ... ズズッ...



「 うっ... 。 」


李広さんが馬から落ちた !


「 大丈夫ですかっ !? 」


「 そなた、気をつけよ、賊が来る... ! 」


李広は右胸に矢が刺さっていた 。致命傷ではないものの、急がなければ危ない 。


「 頭、イキの良さそうな娘がいますぜぇ... 」


「 ぐははっ ! この殿様をいたぶったあと、ゆっくり可愛がってやるとするか... ! 」


山賊の様な男3人が李広に近づく 。


「 ていっ ! 」


私はとっさに空手で鍛えた突きをうっていた 。


「 ...ってぇな ! お前ら、男は後だ、縛っとけ ! まずはこのクソ娘からだっ ! 」


そう言って刀で切りかかってきた男を私は避けながら...


「 そこの者っ ! 動くな ! 父上から離れろっ ! 」


若い青年の声と数十の甲冑の音が聞こえてきた !


「 ...くそっ、ひけっ 。 」


山賊達は逃げて行った 。


「 父上っ ! 大丈夫ですか ! 遅れながら慶広、参りましたぞっ ! 」


青年が李広に走ってきた 。


「 ...うむ 。 大事ない 。 雪乃殿のおかげだ 。 」

「 おぉ ! そなたが航客の ! よくぞ... よくぞ父上を ! ...感謝致す 」


私はとっさに体が反応しただけなのに...


「 慶広さまぁ !た、大変でございまするっ ! 安東様が攻めてまいりました ! 」


安東家、確か蠣崎家とは主従関係じゃなかったかな ?

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