ビッグデータ探偵

第73話 ボーン

「私には全て魔法みたいに見えるので」

高崎くんは僕らに言った。

今まで作ってきたものはもちろん一般の人から見れば全て難しいものだろう。

しかし、その中でももちろん難易度の差がある。

「そうだね。この難易度の差がわかれば研究者になれちゃうね」

僕は言う。

これこそが一番難しい技術でなかなか身につかない。

自分たちがどのぐらいのことができてどこまでならあたらしい事もできるのか。

孫子の彼を知り己を知れば百選あやうからずだ。何百年たってもこれが難しい。

「そうなんですね」

高崎くんがうなずく。

「そう、技術的にギリギリできるかわからない、できると大きな価値があるものを探すというのが仕事になるからね」

僕は説明する。

そういう技術が論文としても大きく評価される。

つねに僕らはそういうチャンスを伺っている。

「よし！全部吸い出せたんだよ！大和さんに送ったんだよ！」

ヒカルちゃんはタッターンとキーボードを叩きながら言った。

「うん、あとは大和くんの仕事をみてようか、参考になると思うよ」

僕は言う。

ここからは大和くんの仕事だ、研究的な要素が大きくなってくるからヒカルちゃんの参考になるはずだった。

そして彼女だったら何回か見れば彼女自身も同じことができるようになる。

「楽しみなんだよ！」

ヒカルちゃんのテンションが上がる。

「お恥ずかしいです！」

大和くんは謙遜しながら作業を進める。

彼はヒカルちゃんが作ったシステムから自分が必要なものを探し出す。

そして自分のシステムで読みこめるように準備する。

「ふふ！まじまじと見ちゃうんだもんね！」

ヒカルちゃんは大和くんの作業をじっと見ている。

「これが、ヒカルちゃんが抜き出してくれた人の歩行の画像」

大和くんが作業をしながら、見せる。

「うんうん」

ヒカルちゃんはうなずく。

「ここからボーンを取り出す」

大和くんが言う。

ここから僕らがやりたいのは人がどのように腕や足を動かして歩いているのか、そしてその少しの差から人物を特定しようとすることだ。

「ボーン？？」

高崎くんが質問する。

新しい専門用語が出てきた。

「骨という意味ですが、ここでは簡単に棒人間のようなエフェクトを作ってそれぞれの角度を算出しています」

大和くんが説明する。

人の動きを生成するCGなどでは当たり前のように使われてい言葉だ。

人の中に棒のようなものが生成されて、それぞれの角度がわかるような仕組みだ。

「え、すごい、すべての角度がわかっちゃうんですか？」

高崎くんがおどろく。

彼女は体を動かしながら理解する。

ここの角度ですか？と腕を動かしながら僕らに聞く。

「そうなんです」

大和くんが頷く。

リアルタイムで全ての可動部分の角度を読み取っている。

これを平面の画像だけから行なっている。

「すごい！これ格闘技の練習にも使えそうですね」

高崎くんが言う。

そう言いながらビシッと構えて笑った。

「それ面白いね」

僕は言った。

そう、こういうアイデアこそが別分野の人とのブレストの醍醐味だった。