第27話 捕まえる

「捕まえましょう!!」

高崎くんが僕が聞くやいなやそう言った。

彼女は血気盛んな若者だった。


「いやー、捕まえるのは僕らの仕事じゃないでしょ」

僕が答える。我々の所属する特別犯罪研究室は逮捕することが目的では無い。特別な犯罪に最新技術が使われていないかを調査する係だ。


「あ、そうなの?佐鳥がバリバリの警察官になって銃撃戦とかするのかと思ったよ」

佐々木が大げさにそう言った。そうで無いことはもちろんわかっている彼なりのジョークなのだろう。昔からそんな感じだ。


「そんなわけないだろ。ただの研究員だ。銃なんか打てない」

僕は真面目に言い返す。戦ったら当然負けるし、やりたく無い。戦いは戦いのプロに任せるのが良いに決まっている。自分が得意じゃ無いところで勝負するのは得策では無い。


「高崎くんはある程度戦えるかもしれないけど」

僕は、補足して説明した。

そう彼女はちゃんとした警察官、僕とは鍛え方が違う。彼女は戦うのも得意だ。


「はい!戦えます!」

ビシッと姿勢を正して、僕の説明に相槌を入れる。


「え?そうなの?」

佐々木は驚く。もちろんそうだろう。彼女は一見ただの美少女だ。


「空手日本一らしいよ?」

僕は説明する。最初に紹介された時に、そう紹介されている。だから安心してください的なことを言われたような気がする。


「え、すごいね。高崎さん・・・?聞いたことあるかも・・・結構有名なんじゃないの」

佐々木が記憶を辿っている。彼はテレビに出たり色々な人に会うのでニュースやテレビをちゃんと見ているのだろう。大学の教授としては逆に珍しい。


「頭の良い美少女格闘家らしいよ」

僕が、ここに来る前に聞いた、彼女の言葉を思い出して佐々木にそう言った。日本で一番良い大学を出て、日本一強い空手美少女と言われたのを思い出した。


「あ、先生!それは先生向けの冗談ですよ!!他の人に言っちゃだめですよぅ!」

高崎くんが慌てながら僕に言う。これは本当に言ってはいけないことのようだった。次からは気をつけよう。


「ははは、うんうん。なるほど色々わかってきた。佐鳥には説明しないと美少女度が伝わらないからな。正しい」

佐々木はなんだかよくわからない納得をしていた。


「それはいいけど、高崎くんは幹部候補だから戦わせると上司に怒られるんだよ。戦闘禁止」

僕は佐々木に言った。戦えるからと言って戦ったらいけない、孫子だって戦って勝つのは二流だって言っている。戦わずして勝つのが一流。



「戦闘って比喩じゃなくて本当の戦闘だからおもしろいな」

佐々木が面白がっていう。確かに我々はかなり暴力とは無関係な場所にいるかもしれない。


「面白がってる場合じゃない、穏便に、機械学習が使われるような特別犯罪を調査するだけだ」

僕はそう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る