オバサンですが、株物語
ジム・ジムニー
オバサンですが、何か?
「お大事にどうぞ」
最後の患者さんを送り出し、自動ドアを切る。
振り返るまでもなく、他のスタッフの動きが、音で伝わってくる。
掃除機を掛けるのは、事務長、安田幸一。
ゴミを集めている、新人?八年目の山本エリカ。
レジを閉めているのが、院長妹、佐藤藍子。
院内アルコール消毒中、同僚の相田みどり。
そして、処置室担当、私、原田優子。
地方の私鉄駅から徒歩十分。
微妙な位置にある、眼科スタッフは、総勢五人。
あとは、院長、佐藤勝利。
隣接するメガネ屋さんに、コンタクト屋さん。
院外処方の薬局。
それぞれ、佐藤一家が分業経営。
持つべきものは、医師の兄弟ってトコかしら。
考え事をしようとも、同じ仕事を20年も続ければ、体は勝手に動きます。
洗い上げに、磨きあげ。
明日の診察準備の湿綿にアルコール綿。
滅菌物のパック詰め。
オートクレーブってご存知ですかな。
高温高圧力の蒸気で滅菌する機械です。
これが無い時代のナースは大変だっただろうなぁ。
小さな頃に行っていた診療所。
待ち合いには火鉢にシクラメン。
ヤカンにお湯が沸いていて。
院内処方の粉薬を、オレンジジュースに溶かしていたのは、院長先生の奥さんだった。
診察室に入る前に、嫌でも目に入る、ぐらぐら煮えたぎる大きな鍋。
中には得体の知れない、金属の器具や、世にも恐ろしい、どぶとい注射器。
あぁ恐ろしい。
オートクレーブ量産万歳。
ええ。
煮沸消毒を目の当たりにしていた私は、四十を越えたオバサンですが、何か?
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