果たされる契約
第四部 一章 ー瞑想・迷走ー
ロカを出立して私達は一度コラルへと戻っていた。ロカから報告書を流すよりも、コラルの港から直接送った方が配達の手間や遅延を防ぎやすい。
再び感じる磯の香りと潮風は、つい先日の事だったのに妙に冷たく感じられた。少し、季節が変わり始めているのかも。
宿屋に入るとまずは入浴を済ませて一息。焦らない旅だとは言っても、こんなにゆっくりしていて良いのかな。少し後ろめたい気もする。
「むーん……」
「うーん……」
引け目を感じた私は宿の部屋でフジタカと唸っていた。私達二人を並べるとたちまち船酔いを連想するのは止めてほしい。まだ船には乗らないのだから。……まだ、ね。
「上半分!」
フジタカがアルコイリスを赤玉に変えて振るう。この前の戦闘で欠けて捨てようとしていた小瓶にナイフが触れると、瓶は部屋の中から消えてしまった。
「……くそう!」
「やっぱ下手だな、お前」
フジタカが狼の顔を歪ませながらアルコイリスを元の灰色に戻す。チコはそんな彼を見て笑った。
「……雷よ、レブを捉えよ!」
その二人の横で私が唸るのを止めて叫ぶ。床にぺたんとついた手から魔法陣が広がり、部屋の入り口に立っていたレブへ向かって光が一瞬だけ走る。
「ふん」
紫の竜人は鼻で笑うと微動だにせず私の放った魔法を受ける。ほんの数秒、レブに紫に光る電気が糸の様に絡まったけど消えてしまった。特に彼に異変は無い。
「そんな電撃では雷も効かぬ私は倒せぬぞ」
「雷効かないなら最初から無意味だろ、それ……」
レブが天井へ向けて笑い、フジタカが呆れる。四人で集まっていた私達は魔法の練習をしていた。特に、私とフジタカで。
「ザナ……本当に魔法使いになっちまったんだな」
「えへへ……まぁね」
一旦練習を中断するとチコが私を見て短く息を吐いた。驚くチコに私は笑顔を作って見せる。
「出すのは形になってきたな。だが、持続性が足りぬ」
「うん……分かってる」
笑っていたところにレブから指摘されて私は表情を引き締めた。自分の欠点は分かっている。
ようやく、こうして雷の魔法を確実に出せる様になってきた。問題は魔力線から自分の力を引き出すまでに掛かる時間と、レブの言っていた持続性。
まずは自分の中に手を入れて、魔力の泉から必要な分だけ掬い上げる。取りこぼさない様に力強く握り締め、それをそのまま外へと放出する。魔力を体外に解放した瞬間に広がるのが魔法陣。詠唱にぶつぶつ言うのは、握り締める際に使う手の大きさを想像し易くする為のものだ。しっかりと思い描くにはそれだけ大きな手を想像してやらないといけない。手だけ大きくても自分の中に存在する泉は限られているから、手の大きさも不必要に巨大化させる必要は無い。
私には掬い上げられる泉がそもそも大きくないらしい。なのに手だけ大きく描くから、魔法を使えはしても上手く発動しない。さっきもレブが痺れるまで電流を流し続ける気持ちでやった。結果は彼に届いてすぐに消える程度。現実と理想が違い過ぎる。
「俺の方は全然。何がダメなんだか……」
フジタカが大の字に倒れてナイフも手から溢す。私が手に取っても、取り返そうともしない。
「切り替え……上手くいかないね」
「そうなんだよ」
キリキリ、と音を鳴らしてアルコイリスの輝きを確かめる。傷の無い美しい宝石は各色とも鮮やかに輝きを放っている。
「赤が……」
「部分的に消す……つもりの時に使いたいやつ」
赤色に金属輪を合わせて呟くとフジタカが与えた役割を教えてくれた。灰色は通常用、赤色は自分の指定した部分だけ消す用。
フジタカは魔力の調節が苦手だから常に何でも消してしまう。だったらまずは気持ちを見た目から切り替えて、自身の魔力線も切り替えていければ無駄が減る。それがトロノの鍛冶屋、ポルさんの考え……なんだけど。
「できてないね」
「できてないよな」
「できぬのか」
「あぁ、そうだよ!」
私達三人から言われてフジタカが手足をくねくね動かしながら大声を上げる。……皆で言ったら悪かったかな。
切り替えたい、という気持ちを込めてフジタカも切っている。だけど気持ちと魔力線がちぐはぐと言うか、本人の中で連結させ切れていないんだ。これは私達が外から何か言っても伝わらない。本人の感覚でしか分からないものだから。
「もっとこう……自分の魔力がどこから来てるのか探るところから始めるのはどう?」
変に助言をして余計に混乱させるのではないかと思った。
「……やってみる」
フジタカも素直に聞いてくれるから周りも心配してしまう。あのナイフを使いこなしたいと考え始めた彼が、どこに行き着くのか。
「俺の……力……」
起き上がって胸をそっと押さえ、目を閉じたフジタカにそっとナイフを握らせてやる。ポルさんが言うには消す気があるから消しているそうだ。でも、その意識が強すぎるから調整できない。極端な話、オリソンティ・エラを消したいと言ってもフジタカの分に合わないから地面に突き刺しても消えはしない。心のどこかで消えて欲しくないと制限をかけているからだ。そう言った制限を自分の中で細かく用意できればおのずと姿は変わる。
「ここだぁ!」
ブン、とナイフを振ってカルディナさんが書き損じた書類を切る。……先程と特に変わらない。紙は全て消えてしまった。
「気取った割に……」
「それ以上言うと、俺が傷付くぞ」
自分から宣言しないでよ。レブも言う気が失せたのか腕を組んで肩を下げる。
「やってるつもりなんだけど……実感が湧かないんだよな。前みたく適当に振ってるだけじゃないし」
消す時は消す、なんて意識してナイフを使っているらしい。本人も自分の中に魔力の様なもやもやを感じると言っていた。それを引き出すコツがまだ見出せていない。
その代わりにフジタカは順調に剣技も体術も磨いている。カラテは自力で習った事を反復、剣術に関しては夕方と早朝にトーロから指南を受けながらの旅だった。身体つきも、初めて会った時よりは逞しくなったかも。
そこに、コンコンと扉を叩く音がしてゆっくりと開かれる。
「そろそろ食事にしない?」
開いて中へと入ってきたのはカルディナさんだった。
「あれ、お一人ですか?」
「ニクス様とトーロは先に行ってます。あとは貴方達だけ」
「じゃあすぐに行きます」
私の返事にカルディナさんは待ってる、と言って扉を閉めた。
「ふう……。じゃあ、今回はここまでだな」
フジタカが床に手をついてナイフを服へ収納した。……思えば、入浴してるとか服を脱いでるとき以外はいつも身に着けてるよね。
「疲れた?」
「うーん、気を張ってからかなー。いつもは平気なのにこめかみがずーんと重い」
フジタカが耳の付け根辺りを押さえて目を閉じる。間に皺が刻まれ、私はつい指を入れてみた。
「あ、ふかふかのむにむに」
「やめれって」
何度か動かしてから指を離すとフジタカが目を開ける。疲れたとは言っても、魔力の消耗というよりはただの緊張みたいだ。……今までにない返答だったから少し判断も迷うけど。
「チコは?フジタカ、それなりに消してたよね」
「俺は問題無し」
チコの方は本当にケロッとしている。ロカでのスライムから特に何も召喚したり、フジタカに消させたりしていなかったからかな。素の魔力が高いからって気にもならないのかも。
「レブは?一応魔法浴びせちゃったけど」
一番元気そうなレブの顔を見る。
「見た目は派手になってきたが、まだまだだ。肩凝り解消くらいにまではなってもらわんとな」
初めて使った時はレブから制限が掛けられた。ロカの時だって、レブに対しては何の効果もない程度だったと思う。
「引き続き練習相手、お願い」
「任せておけ」
急場しのぎで使った魔法と違って今はゆっくりと詠唱する時間も貰えている。なのに、あの時と同じ出力まで上がっていないと感じていた。……私も、フジタカと同じ様に建物を壊さない様にって思ってるから必要分の魔法にもならないのかな。
「反省は後だ。食事にしよう」
レブからの提案に私達も同意。ニクス様達も待たせてるし。
「じゃあレブ、後で寝る前に肩を揉んであげようか?」
さっき肩凝りがどうとか言ってたし。魔法から日常までいつもお世話になっているせめてものお礼に。
「………」
だけどレブは珍しくしばらく返事をしてくれない。
「……揉みたいのなら揉みしだけ」
「いや、私はそういう趣味は……」
何か勘違いしてないかな、レブ……。私が触りたくて堪らないとでも思ったのかな。
「変な事言うなよデブ。ザナは年老いたお前を心配してんだろ」
「人を年寄り呼ばわりするな若造が……!」
フジタカはレブの言葉はだいたい正しく翻訳してくれる。だけど私の分かりにくい言葉を訳す時はちょっとズレてしまうみたい。レブも怒って腕をぶんぶん振ってるし。
「俺、先に行くぞ……」
チコがボソっと扉の前で言って部屋から出て行った。それを見逃す私とフジタカではない。
「私もお腹空いちゃったっと……」
「あぁ、待てよチコ!ザナも!」
「話は最後まで……ええい、置いて行くな!」
バタバタと騒いで他の部屋の宿泊客に迷惑じゃないかな……。少し心配になっても、廊下に出れば割と他の部屋も似た様なものだった。
少し噂話に耳を澄ませてみる。当然、ロカで召喚士選定試験が行われなかった事や近くの川で私達が戦っていた事を知っている人はいない。……だけど、人目が気になって仕方ない。皆の声を意識した途端に色々聞こえてくる。
それでも食堂へ着くと既にトーロとニクス様、そして呼びに来てくれたカルディナさんが席に着いていた。ほぼ満席状態でも特にニクス様は目立つからすぐに見付けられた。
「お待たせしました!」
「注文は適当に済ませてある。だいたい前と同じだがな」
「ありがとう」
トーロが献立表をひらひらと振って見せてくれた。あれだけの巨漢が適当に注文したと言っているんだ、量が少ないって事はないと思う。予算の都合で少ないとか、大丈夫かな。
「君達は集まって何をしていたの?」
注文が来るまでの時間にカルディナさんがチコに尋ねる。
「フジタカとザナの魔法の練習っすよ」
「へぇ。ザナさん、あの魔法をまた使ったの?」
チコが面倒臭そうに答えるとカルディナさんが眼鏡の奥を光らせてこちらを向いた。興味あるのかな。
「はい。でも……まだまだです」
さっきもレブに指導してもらったし。
「インヴィタドの魔法を自分で使う……。最初はインヴィタド経由で、使い続けていくうちに自力で使えるようになっていくのよね?」
「そうだ」
トーロもフジタカも、チコとカルディナさんもその感覚は分からない。……対となる相手と専属契約を結んでいないから。
「これって、やっぱり召喚術の鍛錬をもっとしっかりしないと使いこなせないと思うんですよね」
やっぱり、基礎が欠けている。参考書片手に独学には限界だと思った。あの自分の中の魔力線を直接使う感覚は先に慣れる必要がある。
……私は、未だにレブしか召喚した事が無いんだ。
「カルディナさん。私の魔力調整の先生になってくれませんか?」
「……私、あんまり先生ってガラじゃ……」
駄目で元々、とは思っていたけどすぐにカルディナさんは首を横に振る。
「やってやれば良い。時間はあるのだろう」
「トーロ……」
そこで間に入ってきたのは彼女のインヴィタドであるトーロだった。
「そもそも選定試験監督なんて役をやっているんだ。基礎なら教えられるぐらいには知っているだろう?」
「それは……まぁ……」
召喚士選定試験では試験監督の用意した召喚陣を儀礼として契約者に手渡されて始まる。その試験用召喚陣は暴走対策に様々な仕掛けが施されている……らしい。私もチコもその辺りまでは詳しく教えてもらっていないので、制限の掛け方は分からなかった。だけどトーロの言う事が合っているとは思う。
「俺はお前の召喚陣は綺麗だと思う」
「まるで私は綺麗ではないみたいね?」
「………」
そこ、黙っちゃダメ!だからって私達が入っても飛び火するだけだ。
「……お前もそれなりだ。……眉は薄いが」
「あ・り・が・と・う!」
「あぐぅ!」
礼と同時にトーロの肩が叩かれる。まだ傷が塞がったばかりで、庇いながらの旅だったのを知っていながらのその仕打ち。……カルディナさん、怖いです。トーロも悪いよ、今のは。周りの男性陣って一言多くて損してるよね。
「……俺だって、フジタカの剣術稽古には付き合っている。他も付き合いたいぐらいだがな」
「それは貴方の好みの問題でしょ」
剣術以外にもフジタカは危なっかしいってことかな。
「……一人前の召喚士にするまで教師となる。……トロノの所長との約束ではなかったか」
ずっと黙って聞いていたニクス様が静かに言うと流石にカルディナさんも頬を指で掻いて笑った。
「そ、そうは言いますが私もまだまだ若輩者です……。所長との話も受けましたが自信が……」
「ならば、共に模索し学べば良い。自分は必要ならばそうしてきた」
ニクス様からの提案にレブ以外が目を丸くした。そうだ、何も教えてもらうだけの関係に拘る理由はない。
「………」
カルディナさんがちら、と私の方を見る。
「先生は難しいかもしれません。だけど、私の知ってる事で役に立てる事が少しはある。だから……私にもザナさんも何に困っているか教えてくれない?」
「はい、是非!」
教師だからと教えてもらうだけではいけない。私からも発信していかないと。レブにはできていた事だ、他の人にもきっとできる。
「でも、魔法を自力で使うという点においてはトーロを先生にした方が良いんじゃない?」
「それもそうですね!」
魔法使いはレブだけではない、トーロも一緒だ。一人に聞くよりも二人、二人よりも三人。さっきフジタカを指摘していた私達と同じ様に聞けばいい。
「いいわよね?私に振るだけ振ったんだから、インヴィタドである貴方も一緒よ?」
「……抜かった」
トーロが頭を押さえて唸る。自分からフジタカに教えたい事がある様な話も出ていたし、丁度良いのかも。
「はーい、おまちどうさま!」
合わせてトーロが頼んでくれていた料理が運ばれてくる。できたてで温かな湯気香る料理に自然と私のお腹も鳴いた。……聞こえてないよね?
「………」
「………」
フジタカとレブが私の目を見た。……残念ながら聞こえていたみたい。ニクス様とトーロは気にしていないのかこちらを見ないし、カルディナさんとチコは気付いてもいない様だった。
「……食おうぜ。いただきまーす」
「いただきます……」
フジタカが手を合わせてから食事を始める。私も続くと、他の皆も同じ様に食べ始める。何も言われないからって何も思われてない訳がない。はしたないとか思われてないかな……。
「……ザナ、これ食うか?」
「ありがとう」
言って、フジタカがそっと私の方に網籠を寄せてくれる。中に入っていたのは前に食べられなかった魚の揚げ物だった。
「はむ」
フォークを突き入れ一匹だけ口に入れた。途端に油が沁みてサクサクとした衣が口いっぱいに広がる。中から現れた魚の身も火がしっかりと通っており噛む毎に容易く崩れた。
「美味しい!」
お腹が空いていたってのもある。それにしてもやっぱり新鮮な魚を調理したからかな?トロノで食べた魚とは風味が違う。
「生では食べないのか」
「人種によっては腹を壊すらしいぞ。あと、海苔を分解できるのは俺達と一部の連中だけだし」
ノリ、ってなんだろう。とりあえずフジタカは生魚もノリも分解できる強靭なお腹を持ってるみたい。いつもおへそ出してるもんね……。
「レブも食べなよ。美味しいよ」
「ふむ」
器用にフォークを使って揚げ物をレブが頬張る。もちもちと口を動かし、ごっくん。レブが住んでた世界の食文化ってどんなものだったのかな。フォークもナイフも器用に使うから、そんなには変わらないのかも。
「どう?」
「魚だ」
そうじゃなくて……。でも、レブの事だから美味しいなんて言う訳がない。
「気に入った?」
「ここに来る事があれば、また食べなくもない」
うん、反応は悪くない。これ以上無理に言わせるのは止めておこう。本人も精一杯口にしているんだし。
前に飲んだスープも変わらない味だったけど、あの時はお腹の中でチクチクと痛みながら飲んでいた。絶好調に回復した今の私が飲んだスープはどんどん体に行き渡る。
「………」
そして食事を一通り楽しんだ後はお待ちかね、食後の果物をレブが味わう。……こうして思うと、今日だけとは言え豪勢な食事だよなぁ。
「食い過ぎると太るぞ、デブ」
「ブドウによって肥え太れるならば本望だとは思わないか」
共感を求めないでよ。と言うか、レブにそこまで言わせるブドウも凄いけど。
「はぁ。で……?次に目指すのがカンポの……カラバサ?」
「そうだ」
フジタカもブドウに夢中のレブを相手にしていられなかったのか、話題を変えてチコの方を見る。
「どんな場所なんだ?」
「俺はセルヴァとトロノ……あとはお前と同じとこしか知らねーぞ」
聞いてる相手にそんな言い方しなくても。でも、チコは選定試験を合格するまではセルヴァから出た事はほとんど無かった。買い出しでトロノへ大人達と馬車に乗って行く事が一年に一度あるかないか。
「カラバサは野菜農業で栄えた村だよ。昔から積極的に開墾して土地を広げてたんだって」
「ザナさん、詳しいのね?」
カルディナさんが身を乗り出して聞いてくれたからつい、鼻の頭を掻いてしまう。
「えへ……。前から地理とかの本が好きで、トロノでもたまに読んでいたんです。それで自然と覚えて」
最初は自分が住んでいるボルンタ大陸から。それから少しずつ海の向こうにどんな村や町があるのかどんどん気になった。
何故なら、いつか私は召喚士としてそこに派遣されるかもしれないから。……はい、そんな妄想を幼い頃から続けていた結果がこれです。
「勤勉なのだな」
「熱意はあったかな」
レブは私を過大評価してないかな。自分の趣味が続いていたから知っていただけなのに。……でも、どうせなら本当に自分の長所にできないかな。
「ニクス様やカルディナさんは行った事は……?」
「その辺りはもう、私達トロノ支所所属の召喚士は管轄外なの」
「契約も同じだ。ロカは自分が昔から行っていたから続けているが、それだけだ」
管轄の境目で合流しよう、って話なんだ。どうせならロカも担当を引き継げたら良いんじゃないかな……。ロカに行く為に海を毎回渡るのも大変だろうし。
「拘りや執着ではなく、続けていたからやっているだけ。非効率でも変わらない。契約者の妙な部分だ」
ニクス様……と言うよりもその向こう、もっと大きく契約者という括りでレブが苦言を呈した。それでも前よりは口調が柔らかい。前はもう少し本人に向けて話していたからかな。
それを言うなら、妙なのは私達召喚士もだ。回る効率が悪くても契約者を止めない。彼らを基準に自分達の行動を合わせ続けているんだもの。我儘は多くないが、契約者の言う事を聞くのが当たり前になっている。
「じゃあ誰もカラバサには……」
「行った経験は無い。だが、平地だから馬車も頻繁にコラルから出ている」
トーロの言葉にフジタカがホッとしたのか椅子に身を預けた。
「じゃあ馬車旅?歩くよりは気楽かな」
「そうでもないぞ。盗賊やビアヘロから馬車を守りながら進むからな。気を抜いているだけというわけにはいかん」
一般人はやっぱり馬車旅での有事に備えて武装する事もある。傭兵を雇ったり、召喚士に付き添ってもらったり。今回は私達自身が召喚士と戦闘向きインヴィタドだから護衛はつかない、って事だよね。
「怖がらせないの。ロカの方が山賊もいそうな雰囲気だったじゃない。この地方は基本的に野盗の心配は無いと思うわ」
カルディナさんが笑って教えてくれる。その裏に、ただしビアヘロとフエンテについては分からないと言われた気がした。他の皆も気付いていると思う。
「車内で時間があれば魔法の疑問も答えてやる。気楽にくつろぐ時間にはならないぞ」
「……はーい」
早速トーロはフジタカに指導してやる気の様だった。私も期待してカルディナさんを見ると苦笑だけ返される。
「馬車の確保と買い出しは明日にしましょう。今日は早めに休む事」
考える事、議論すべき事はまだまだある。もやもやする気持ちは皆の中にあったけどそれは疲れによるものだ。そう思い込みながら私達はそれぞれ、数日振りに宿屋のベッドで眠りに落ちる。
翌日の買い出しで買い足す物はほとんどなかった。強いて言うなら、トーロ用に替えの包帯を補充したくらい。本人は至って元気だけど、また誰かが怪我をしても困るから。
コラルへ戻る道中、ブラス所長への報告書をまとめていたカルディナさんはほとんど書き上げていた書類をトロノ支所送りにするとすぐに馬車の手配も行ってくれた。手際の良さには慣れもあるだろうけど元々の要領も良いんだろうなぁ。
「えーと……」
「フジタカ、そこ違う」
「え?……あぁ、点を付けないといけないんだっけ」
こうしてお昼前には馬車の旅を始められたのもやっぱりカルディナさんのおかげだ。快適な馬車に六人が少し狭いながら座っていても次の村に着けるというのだから、やっぱりフジタカが言っていた様に楽だ。
馬車の中で私達は手持ち無沙汰で勉強していた。フジタカとレブはオリソンティ・エラの文字について。チコとトーロはフジタカに実際に書き取りをさせ、レブは露店で売っていた安い辞書を一人で読んでいる。
「………」
「レブ、読めるの……?」
「文法の規則は先程聞いただろう。あとは単語を見て記憶するだけだ」
一応読み方とか接続詞、修飾語についての説明は最初の一刻に済ませた。それを一度聞いただけでレブは理解したと言い張る。
異世界からの客人は召喚陣を通してやって来る際、発声言語に関してはオリソンティ・エラに合わせられるそうだ。本人は自分の世界で使っていた言葉を発しているつもりでも、私達には共通の言葉として聞こえる。だから会話での意思疎通は最初からできていた。
それを直接ではなく、手紙で伝聞したりされたりする文字となれば話は変わる。もちろん、人から聞いた話を元の世界で使っていた文字で書き記せば記録はできる。異世界の他人に通じる事もないから、彼らにとっては暗号にもなるだろう。
「どうして一回で理解できるんだよ……。書いてもいない癖に」
……でも、暗号だって読める人がいないと意味が無い。やっぱり私達の世界に来てもらった以上、話すだけで済まない場合もこれから出てくる。
報告書を作成するなんてのは私達の仕事であり、レブやフジタカが腕っぷしだけで事足りるなら勉強なんて必要ない。実際、今までは必要じゃなかったしね。
私もここでは魔法を練習できない。フジタカも素振りや魔力の特訓もできない。大人しく馬車に揺られているだけの私達がうとうとする以外に有意義な時間を過ごすには、今までしてこなかった勉強をする事だけだった。
「なぁ、過去進行形とか……やっぱあるんだよな」
レブがつまらなさそうに、しかし手や目を休める事なく辞書を捲る。その隣でフジタカの質問は止まない。
「過去に何かをしていた。表現としては日常でも使うでしょ?」
カルディナさんに教わりたい事は私にもあったけど今はまず自力で反復練習。魔法はそれで済んだけど、フジタカはそうもいかない。
「再帰代名詞とか男性名詞とかもあるんすよね……」
「……フジタカ、貴方はまず今の気持ち、状態を書けるようになってから考えない?」
「うん……。先は長いよ、フジタカ」
物事には順序がある。私やチコだって召喚学を飛ばしてしまっている部分もあるから強くは言えない。ただし語学に関しては書いて覚えるしかなかった。
「せめてこう……耳で勉強できれば……」
話している言葉は本人からすれば前と変わっていないらしい。私達が知らない表現もあり、フジタカは召喚陣でこの世界にアジャストされたから話せるんだろ?なんて自分で納得している。あじゃすと……調整とかって言われると分からないでもない。
それが仇となっている。発音の練習も不要な代わりに、自分の耳で聴いて覚えられないそうなのだ。挨拶の一つも聞いて、書き取れと言っても咄嗟にできない。トーロもオリソンティ・エラに来た当初は苦労したそうだ。
そうなると、もうひたすらに書いて覚えるしかない。馬車に揺られて字を震わせながらフジタカはまず簡単な現在形の短い文章を書いていた。
「………」
一方、レブはただ眺めているだけ。もしそれで記憶できているとしたら本当に大したものだと思う。私だってたまに表現で悩むのに。
「字、書いてみないの?」
「見ていれば覚える」
簡単に言い切るけど、ブドウや召喚士と言った自分の身の周りにある単語だけでも百や二百では済まない。最初の頁から一つ一つ見ているけど本当に覚えられているのかな……。
無理強いもできないし、何かあれば聞いてくるだろう。その時教えてあげればいいかな、と私は魔法の練習に集中した。本当に出すわけではないから、自分の中にある引き出しをすぐに見付けられる様にするだけ。
そうして馬車で三日の旅はビアヘロに遭遇する事も無く、比較的穏やかに進んだ。途中で挟まれるカルディナさんやトーロからの簡単な確認問題にフジタカは辟易しながらも解答する。前に少し聞いたが、日常的に学力の試験は行われていたらしいから、口では嫌がりながらもこなしてしまうのかな。
レブはレブで少なくとも、フジタカ以上には同じ問題を解けていた。本人の気まぐれで二回に一度くらいでしか参加していなかったけど、それでも読むだけで定着させていたから私もチコも解答を見て目を丸くしてしまう。
「なんでー!?カンニングか!」
「不正は無い。語彙を増やすには単語に触れれば良いだけだ」
覚えたいから書く、が基本だと思うのにレブは本当に見るだけで記憶してしまったそうだ。数日後も同じかは分からない。瞬間的に覚えるのが得意な人もいるし。……でも、この数日を見ていてレブが付け焼刃で終わっているとは思えない。
「まぁまぁ。フジタカだって随分書ける様になったよ」
特段、フジタカの成績が悪かったわけじゃない。寧ろカルディナ先生の出題も熱が上がり、途中からは私も間違えそうな難問も幾つか出されていた。間違う部分もあったけど、習った部分はきちんと押さえてあった。……どうしてレブが解けたの、と聞きたいのは何もフジタカだけではない。
「そりゃあ三日間、起きてる間の集中講義だったからな……。嫌でも覚えるさ」
なんだかんだ言ってフジタカって勉強も好きなのかな。やり遂げた良い顔をしてる。
「一度俺に教えただけあって、慣れたものだな」
「あら。それどころか、二人ともトーロよりも優秀だったわよ?」
「………」
トーロから話題に加わったのに気まずそうに窓の外を見る。私も釣られて目線を移すと、遠くに何かが映った。
「あれって……」
「あぁ。夕方には着くでしょうね」
見えたのは赤茶けた色を屋根が幾つか。建物だと分かるとカルディナさんも少し身を乗り出して外を見る。
「あれがカラバサか。……なんか、田舎だな」
「私達が田舎呼ばわりしていいの?」
チコも端か数秒だけ見たけどすぐに座り直す。トロノよりはもちろん質素だけど、セルヴァ出身の私達が余所を田舎なんて言ったら悪いよ。
「別の契約者は着いているのか」
「私達がロカ経由で訪問する事を見込んだ上での計画だから……たぶん。あと三日経っても私達が現れなければ、去る様に伝えていたわ」
ニクス様にもしもの事があった際を考えて……。私達には今のところは何もなかった。危険が有るとしたら向こうの方かもしれない。
更に走ってカラバサに到着した私はまず、馬車を降りて大きく背伸びをした。
「あぁ……うぃっと!」
ずっと座ってるのも大変だよね。揺れでお尻や腰も痛いし。他の皆もほとんどが同じ様に伸びをしていた。レブとニクス様に至っては飛ばずとも翼も広げている。
「ロカと同じだ。土の匂いが濃い」
「そうだね」
レブの感想に私も同意する。開けた風景は村の境目を失くし、平原から山までずっと続いている。南東に見える山……見えないけどあっちの方にロカだってある筈だ。畑の匂い、って言うのかな、木の新鮮な香りはここではほとんど感じられない。これはこれで未知の体験だなぁ。
「お待たせ」
無事に着いた事で路銀を業者に支払っていたカルディナさんがやって来る。あの馬車もカラバサで客を確保したらまたコラルに戻るみたい。
カラバサで採れた野菜は馬車で港まで運ばれてアーンクラや各港、そしてあちこちの町に出荷されている。まだ冬になる前だからしばらくは忙しいんじゃないかな。私達みたいに人を運ぶ仕事の方が少ないかも。
せっかくなら宿の前に連れて行ってもらえば良かった。でも聞いた話だと、業者さんが近所に知り合いが居て顔を出したかったそうだ。それなら、と村に着いてすぐに私達は歩いていた。村だから広くないだろう、と思っていたけど一軒と一軒の距離が大きい。簡単な地図も貰ったけど簡略化されていて、どれくらい離れてるかもよく分からなかった。
「広場の近くって書いてるよな?どこもかしこも広いんだよな……」
チコも荷物を背負って歩く。柵とかも無いけど、害獣対策はどうしてるのかな……。一応、鳥避けのカカシは幾つも立ってるけど。
「あ、人だ」
汗が少し滲むくらい歩いた頃、少し遠くに人の姿が見えた。何人か集まっている。
「あれって子ども……?」
「子ども二人と大人三人だな」
レブが目を細めて教えてくれる。こっちは人影が見えたくらいだったのに。
「村人かしら……」
「獣人が二人いる。子どもと大人が一人ずつ」
「ふーん……?」
言われてみれば、大人の片方は髪型が人間にしてはふさふさしてる。子どもの方も頭から耳らしき物が飛び出ている……かも。やっぱりよく見えない。
「あ」
目を凝らしていると、子ども……たぶん、獣人の子だ。こちらに気付いて手を振っている。私とフジタカも軽く手を上げて応じると、彼ら五人ともこちらへ向かってくる。
「歓迎されてるのかな?」
「目立つもんな」
フジタカがニクス様とレブの方を見て言った。……確かに、この二人は特に一発で人間ではないと分かる。
「こんにちは!」
「こんにちは」
「おっす!」
そうして一番にやって来たのは猫……ではない。頭からちょこんと色の違う鬣を生やした獣人の男の子。私よりも少しだけ背が高いが年下……かな。元気に挨拶して笑顔を見せてくれる。もしかして獅子獣人、かな。
「久し振り、ニクス!」
「うむ」
最初に私とフジタカに挨拶してくれた子が次に顔を向けたのはなんとニクス様だった。しかも、久し振りって。
「急にすまない」
「い、いえ……」
続いて彼と一緒に現れ私に話し掛けてきたのは、今度こそ間違いなく獅子の獣人。革鎧で筋骨隆々としたしなやかな身体を包み、大きな剣を腰に提げたいかにも戦士然とした男の人は静かに頭を下げた。
「俺はライネリオと言う。だいたいライと呼ばれる事が多い」
「ザナです。ザナ・セリャド」
私が名乗ると、獅子の男性……ライさんは立派な鬣を軽く掻き上げると私に手を差し出した。そっと握ると、ふかふかの毛皮にごつい大きな手が私の小さな手をすっぽり包み込む。レブの大きな手とはまた違う感触だ。最初に来た男の子を獅子だと思ったのはこの人の横にいたからというのが大きい。
「トロノから来た召喚士、か。思ったよりも若いな」
「この前召喚士になったばかりなんです」
力強そうな手に反して柔らかな握手を終えるとライさんは優しく微笑んだ。トーロと同じかそれ以上の体躯で武装しているけど、怖いという印象は受けない。
「それにしては……」
含みを持った表情で私の後ろにいる二人を見る。フジタカは軽く頭を下げ、レブは微動だにせず正面からライさんを見ている。
「……いや、すまない。ザナさん、でいいかな。君は優秀な召喚士なんだな」
「そうだ」
「レブ!」
いいえ、まだまだ未熟です。と、否定しようとしたらレブが先に答える。召喚された側が保証する様な事言わないでよ……!
「はっはっは!そのインヴィタドとも良い関係を築いているのだな」
「どうだかな……」
そっちは何というか、関係がどっちの意味かに依るというか。ああほら、せっかく笑ってたライさんも困惑して私達を見てるし。認めたり否定したりじゃ忙しいよ……。
「トーロは知っているとして……狼男と……」
ライさんがフジタカとレブを見る。
「……美しい、爬虫類?」
惜しい!というか、初見でレブの見た目を褒めようとしてくれた人ってライさんが初めてかも。心意気に打たれたか、レブも珍しく何も言い返さない。……竜って、爬虫類の分類で良いのか疑問だけどね。
「俺はフジタカです」
「………」
「そこにいるのはレブです。えっと……竜人、なんです」
竜人と紹介してニクス様に話し掛けていた男の子が振り返ってこちらにやって来た。
「竜人……!?通りで鱗の発色が……」
「え!竜人!僕会うのって……」
インヴィタドの中でもやっぱり、普通に生きていて遭遇することがほとんどない竜人となれば興奮するみたい。……と、思ったらレブの姿を見た途端に男の子の表情が消えていく。
「えと……」
辺りを見て、チコと目が合う。
「………」
次に私と目が合った時だった。
「……お姉ちゃん、この人に何をしたの?」
その質問を受けて私は一気に寒気がした。この子、レブは私が召喚したと気付いたんだ。
「えっと……。私が選定試験で呼んだんだ。それで今もそのまま居てもらってるんだよ」
「そう……」
獅子の男の子はそのままレブをじっと見下ろしている。そこにライさんのゲンコツが飛び、生えかけの鬣を大きく凹ませた。
「いった~い!何すんのさ!」
「自己紹介が先だろ、ココ」
握り拳を再び掲げ、ライさんが脅せばココ、と呼ばれた男の子は頭を押さえて短く悲鳴を上げた。
「わ、分かったってば。知ってる人も多いけどね」
「まぁな」
トーロが返事をして、カルディナさんもうんうん頷く。この親子とは前から知り合いなんだ。
「僕はコレオ・コントラト。頭文字を取って、ココって呼んでよ」
短い自己紹介に聞き覚えのある単語が。コントラト……って。
「え、ライさん達……契約者なんですか?」
もしやと思って聞いてみた。コントラト、と言えばニクス様の性でもある。それをこの子が名乗ると言う事は……。
「俺は違う」
「あれ?」
しかし、ライさんは短く否定して首を横に振った。
「ライさん……ココ君、のお父さんじゃないんですか?」
「あ……!」
フジタカの声がした。振り返ると、大きく口を開けて首を横に振ってる。
「はぁぁぁぁ!?俺が、コイツの父親ぁ!?」
落ち着き払った紳士の様だったライさんが急に声を荒げる。顔も心なしか強張っている。
「ぷ、ぷくくく……ライが、僕の父親だって……!」
ココ君が笑いを堪え切れずに震えている。自分が何を言ったか分からないのに、あまり相応しくない事を言ったとは気付いた。
「ザナ、今のはお前とチコは姉弟ですよね?って質問と同じだぞ」
「でもフジタカ!私とチコは髪の色も違うし……!」
静かに指摘するフジタカにこちらも熱が入って言い返しそうになったが、途中で言わんとした部分を読み取った。
「……俺とコイツ、そんなに似ているかい?」
……似て、ないんだ。……同じ獅子の獣人だからって親子だと思い込んでた。
「すみませんでした」
素直に頭を下げると周りから笑い声が起きる。そんなにおかしい事を言ったかな、と思ってレブやトーロにも確認の意を込めて視線を送った。渋い反応からして、やっぱり私がまずかったみたい。
「面白い子だね!僕の事はココ、って呼び捨てでいいよ」
「じゃあ……契約者はココだけ?」
改めて質問するとココは頷いた。ライさんと、後ろにいた他の人達やニクス様も。
「俺はそこにいるウーゴのインヴィタドだ」
ライさんが親指で差した先に立っていた長身に黒いローブを羽織った人間の男の人と目が合う。
「ウーゴ・ムニティスです。ライと一緒にココ様の護衛をしております。そっちの二人はウレタさん。この村の宿の経営者親子です」
目尻に刻まれた皺から見た目は少し老いている。だけどウーゴさんの声は張りがあった。
「君達もライと僕とウーゴと同じ、ウレタの宿に泊まるんだよね?案内するよ!一緒に行こう!」
「うわっ……待てって!」
「ボルンタでの話、たくさん聞かせてよ!」
自己紹介を簡単済ませると、ココは落ち着きなくフジタカの手を掴んで宿の方へと無遠慮に歩き出す。彼は契約者と名乗ったけど、まさか子どもの契約者が現れるなんて思っていなかった。
それでも、私達は旅の疲れもあって彼の案内に従って宿へとまずは向かった。
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