DTガール!
カシータ
DT in ガール!?
1話「とある魔法少女の夜」
土で造られた刃は月光を反射すること無く、闇に踊る。
魔力で極限まで鍛えあげられたその刀身は鋭く、強靭で、目の前の男が持った鈍らごとその腕を断ち切った。
男が叫びを上げる前に再度、刃が滑る。
男の体は倒れ伏し、首が何処かへと転がっていった。
別の男がこちらへ向かって雄叫びを上げ、武器を振りかざしながら突っ込んでくる。
少し距離が離れているが、魔力で身体が強化されている今の状態なら一足飛びだ。
刀を構え、地を蹴った。
男に一瞬で近づき、斬撃を置いてすれ違う。
男の体は綺麗に二分割され、地面にその血を染み込ませた。
何人、倒しただろうか。
残っていた数人が悲鳴を上げながら武器を捨て、背を向け、闇雲に駆け出す。
だが、受けた依頼は山賊の全滅だ。
一人も逃すわけにはいかない。
魔力を操作して無数の見えない触手を自分の体から伸ばす。
人間の足では到底敵わない速度で山賊達に追い縋り、腕を、脚を、身体を、首を。
逃げた山賊達を一人残らず絡めとった。
そして一気に締め上げ―――
鈍い音を木霊させながら山賊達は絶命した。
暗い山の中に訪れた静寂を破った、可愛らしい少女の声が木々の間に吸い込まれていく。
『もういねぇかな。』
その言葉は、この剣と魔法の異世界には似つかわしくない『日本語』である。
俺はある理由でこの異世界へ転生してきた【転生者】だ。
今日は独りで寂しく冒険者ギルドのお仕事。
普段はちゃんとこっちの世界の「共通語」で会話しているが、一人の時はついつい日本語で独り言を言ってしまうのだ。
地面に手をつき、魔力を流し込んで大きなゴーレムを造る。
ゴーレムがその巨体を動かすと、その場に大きな穴が出来上がった。
ゴーレムを操り、その穴に山賊たちの死体を投げ込ませる。
その動作で巨体が動くたびに山の中に軋む音が響き渡った。
穴が死体で埋まったのを確認して最大火力で火をかける。
死体の山はいくらもしない内に消し炭になり、最後はゴーレムを潰して穴を埋めた。
山賊たちのアジトだった場所に入り、銅貨、銀貨、装飾品、宝飾品、金になりそうな物を集めていく。
お金が無いわけではないが、あって困るものでもないし、何より宝箱とかタンスとかツボとか、あったら調べたいでしょ?
目ぼしい物をかき集めてアジトから出る。
空を眺めればまだ夜明けは遠そうだ。星の光は衰えそうにない。
『とりあえずここで朝まで、だな。』
アジトにあった薪で火を付け、アジトから拝借してきた干し肉を炙って固いパンに挟んで齧る。
中々良い肉を置いていたな。パンはダメだが。
ワインも置いてあったが、どう見ても不味そうだったのでパスだ。
全てを腹に収めて、傍らに置いてある空のカップを手に取る。
カップの上に魔力を集め、水へと変換させ、更に一部を氷に変えた。
そのまま自由落下させるとカップに収まり、氷がカランと音を立てる。
カップの水を一気に煽った。
『さて、寝床を作るか。』
地面に魔力を流すと、俺を中心に土のドームが覆っていく。
空気穴だけいくつか残して簡易テントの完成だ。
『よいしょっ・・・と。』
ドームの中に一緒に作った長方形の小さなベッドへ手探りで寝転ぶ。
だが身体に装着された鎧がベッドに当たり、カチリと音を立てた。
『脱ぐの忘れてたな。』
もう一度立ち上がる。
「”
その言葉に反応して魔法陣が宙に現れた。
身体に装着されていた鎧が自動で外れ、現れた魔法陣の中に飛び込んでいく。
残念ながら裸になったりはしない。現実は非情である。
全てのパーツを飲み込んだ魔法陣はその役目を終えて消滅した。
鋼の身体を持ち、大地から武器を生み出し、触手を操る魔法少女。
それが今の俺だ。
今度こそベッドに寝転ぶ。
こういう時だけはスペースを取らない自分の小さな体が便利だ。
そういえば、何で魔法少女になったんだっけ、俺?
まぁ、いっか。
俺はそのまま目を閉じた―――
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