悪意のTA
山本正純
赤い落書き
現代の赤い落書き
それは、残忍な殺人事件だった。七月の夜明け前という時間帯にも関わらず、その日の東都公園は騒がしい。公園の林で覆われた一角には非常線が貼られていた。
その現場に、二人の刑事が駆け付けた。一人は黒いスーツを着こなし、清潔感溢れる短髪の刑事、
遅れて臨場した二人の刑事は、先に到着していた刑事たちの人だかりに合流しようとしたが、一人の刑事に呼び止められた。その男は大柄な体型が特徴的な
「木原と神津。遅いじゃないか。現場はあのブルーシートの中だ。もちろんブルーシートは我々が架けた物だ。雨が降りそうな雲行きだから。」
そう言い合田は空を見上げた。空に浮かぶ灰色の雲は、朝日に照らされた綺麗な青空を隠そうとしていた。
木原巡査部長と神津警部補は、ブルーシートを潜り、合田と共に遺体を見ることにした。
そこにあった遺体を見た木原は、思わず瞳を閉じた。そこにあったのは、大木の枝に吊るされた黒いスーツを来た男性の遺体。遺体のシャツは赤く染まっている。
男性の遺体の前では、同じく黒いスーツを着た黒縁眼鏡の男が座り込んでいた。その男は、検視官と鑑識という二つの顔を持つ
「北条。遺体の様子を説明しろ」
合田に促され、北条は右の頬に大きなシミが残る男性の遺体を見上げる。
「はい。死亡したのは
「赤い落書き?」
それを聞き、合田は壁を見た。そこには赤色のスプレーで『オワリノハジマリ』と書かれている。その瞬間、合田の脳裏に七年前の事件が浮かんだ。
木に吊るされた射殺体。その正面の壁に赤い落書き。それは七年前の連続殺人事件と同じ構図だった。
嫌な予感を抱いた合田は、目の前で吊るされた男性の遺体を睨み付ける。
刑事たちは知らなかった。この事件が前代未聞な劇場型犯罪に発展するとは。
それから三十分後、刑事たちは警視庁に戻り捜査会議を開こうとした。会議の準備が整おうとした時に、あの男が現れるまでは。
サングラスが似合いそうな風貌の男、
「合田警部。捜査から外れてもらう」
突然の通告に木原が反論を口にする。
「監理官。合田警部は何もしていません」
その直後、月影は刑事達を睨み付け、合田へ尋ねた。
「覚えているか? 七年前の殺人事件を。今回の事件で三人目だな。あの事件の捜査関係者が死ぬのは」
「覚えている。俺はあの事件を忘れたことがないからな」
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