第34話 ワイバーンと戦闘みたいです

俺が放ったファイヤーボールは、狙いを過たずワイバーンに飛んでいった。そして、ワイバーンに直撃するかと思われた…次の瞬間、ワイバーンの姿が一瞬にして消えた。


「チッ、どこに行った!?」


そう言いつつ俺は気配察知を発動する。すると、ワイバーンは俺のすぐ上に移動して、炎の魔力を口に集めてブレスらしき攻撃の準備段階に入っていた。


まじかよ…アイツの攻撃を食らったら即死かも知れないな。…だったら、科学の力を思い知らせてやるぜ!


「『ファイヤーボール』!!」


俺は全力のファイヤーボールを空に向かって・・・・・・放った。

それを見たワイバーンは俺が焦って攻撃を外したのだと思い、勝利を確信したようで、グゲゲゲッっと笑いながらブレスを放ってきた。


「うおっ、あぶねぇ!!『ウォーターウォール』!!」


俺が魔法名を唱えると、俺の前に分厚い水の壁が出現した。

このウォーターウォールという魔法は最近取得した魔法で、自分の好きな場所に水の壁を作ることができるという便利な魔法だ。

因みにこの壁の強度はかなりのもので、神獣であるルーフでも破壊することが出来なかった程強力な壁だ。さらに、任意でこの水の壁を氷の壁にすることもできるようだ。

そんな水の壁をルーフよりも弱いワイバーンにできるはずもなく、ワイバーンが放ったブレスは温度差によって水蒸気爆発を起こしたようだ。だが、俺は爆発の瞬間に水を氷に変換して爆発に耐えた。


水蒸気が少しずつ晴れてきて、視界が多少よくなったところで、俺は行動を開始した。


とりあえず気配察知で相手の場所を探すと、まださっきの場所で周りをキョロキョロしているようだ。…何気にかわいいところがあるじゃないか。

まぁそんなことはどうでもいい。まずは時間稼ぎをしなくちゃいけないな


そう思った俺は、とりあえず自分の周りの土をファイヤーライフルでそこら辺の木を倒してからワイバーンに向けてウィンドライフルを放った。すると、グギャァという悲鳴が響き、そのすぐ後に弾丸のような速さで怒り狂ったワイバーンが俺に向かって突っ込んできた。


「おらっ、こっちだぞ鈍間!」


ワイバーンを挑発して凸凹になった地面すれすれに誘導した。すると、地面に大量の木が倒れていることを知らないワイバーンはそのまま木の幹に足をひっかけて転倒した。


「よしっ!計算通りだぜ!!」


そして、俺は倒れているワイバーンに向かって全力でウィンドライフルを放った。

これでワイバーンも倒せるはずだ…俺はそう思っていた。

だが、ウィンドライフルをくらったはずのワイバーンは何故か無傷だった。


「は?さっきは苦しそうに悲鳴を上げていたはずだが…。まさか…だまされたのか」


俺がそういった次の瞬間、ワイバーンが突然尻尾で俺の脇腹を殴ってきた。


「グフッ」


ワイバーンに尻尾で殴られた俺は、そのまま5メートルほど吹っ飛ばされ、木を数本折ってようやく止まった。


「おいおい、やってくれるじゃねぇか!上等だァ、俺のとっておきを喰らわせてやるぜ!!」


俺は自分はかなり強いと思っていたので、いきなり自分より強い奴が沢山出てきたことにイライラしていた。だから俺は本気で自分よりも強いワイバーンに勝ちたかった。


「さぁてと、そろそろ雷雲が出来たころかな?」


そう、俺が最初の方で何のために空に向かって全力のファイヤーボールを放ったのかと言うと、急激に大気の温度を上昇させて雷雲を作るためだ。

そうして出来た雷雲は、かなりの大きさになる。そしてその雲に雷が溜まった頃を見計らって、俺は雷の魔力を纏わせた盗賊の刀をワイバーンの腹に突き刺した。


悲鳴を上げて暴れるワイバーンだが、その後すぐに雷雲から雷が落ちてきた。

「グ…グガ」と声を出してワイバーンは息絶えた。


「ふぅ、これで一件落着かな。…おおっと、スキルを奪うのを忘れてた!」


そして俺はワイバーンの死体に触ってスキルを一つずつ奪っていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ワイバーンを倒した俺は、死体をアイテムボックスに収納して村長の家に戻ってきた。


「オッス、倒してきたぞ!!」

「…ツバサ、ちゃんと帰って来た」

「ツ、ツバサ!…グスッ、ちゃんと帰って来たのね!!」


どうやら俺の嫁たちは心配してくれていたようだ。これは後でお詫びをしないといけないな…


「あぁ、約束通り帰って来たぞ!ただいま!!」

「「おかえり!」」

「そういえば、村長は?」

「…村長なら奥の部屋にいる」

「そうか、ちょっといってくるな」

「…ん」


俺は奥の部屋に行って扉をノックしたが、返事がなかった。


「おーい、村長さーん!いないのか?」


不思議に思った俺は、とりあえず部屋のドアノブを捻ってみた。すると、すんなりとドアが開いた。


「あれ?ドアが開いてるぞ…なんて不用心なんだ」


そう言って俺は部屋の中の確認をした。だが、やはり誰もいなかった。


「村長は一体どこに行ったんだ?」


不思議に思ったが、とりあえず俺は一旦アイラたちの元へ戻ることにした。



そして、俺がアイラたちがいた部屋に戻って村長が部屋に居なかったことを話してみた。


「…おかしい、確かに村長は部屋に入ってから、出てきてない」

「そうよね、私も村長が部屋に入った後一度も見かけてないわ」


やはり村長は部屋にいるようだ…まさか、幽霊の仕業!?なにそれこわい

ま、まさかね…ははははっ


「一度部屋をちゃんと調べてみるか…」

「…私も、行く」

「わ、私も行くわ!」

「よし、三人で行こう!」

「ツバサが怖いみたいだから仕方なくよ!べ、別に怖くなんてないから!」

「誰もイズナが怖がっているなんて言っていないんだが…」

「と、とにかく!いくわよ!!」

「了解」

「…ん」


こうして俺たちの村長探しは始まった。


「ここが村長の部屋の中だ。あんまり変なところに触るなよ?」

「分かってるわよ!」

「…ん」


『ガチャ』

そう言っているそばからイズナが何かのスイッチを押したようだ。


「…おい、変なところに触るなって言ったはずだが…」

「仕方ないじゃない!間違って触っちゃったのよ!」

「…二人とも、何が音がする。」


『ゴゴゴゴゴゴ』と音を立てて床の一部が開いた。その中にはどこまでも続いていそうな暗闇があった。


「とりあえず入ってみるか…」

「え?こ、こんなところに入るの?」

「どうした?怖いのか?」

「べ、別に怖くなんてないわよ!!さぁ、さっさと行くわよ!」

「…イズナ、足が震えてる」

「これはあれよ!武者震いよ!!」


半泣きでそんなことを言われても説得力がないが、可愛いから黙っておくことにしよう…


「じゃあ、入るか」

「…ん」

「ちゃっちゃと村長を見つけ出すわよ!!」


そう言って俺たちは地下室らしき場所へ入っていった。

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