簡単なお仕事ですよ、たぶん。

しらら

第1話

銀狼星の隣の小さな星。そこが貴女の職場になります。

ええ、滅び星の銀狼星で間違いないですねぇ。何か問題でも?

ありませんよね?はい。

こちらが誓約書です。一応国の機関ですので必要なんですよ。

そちらとそちらの書類はあちらの担当者にお渡し下さいね。

こちらが控えです、必ず失くさずに保管しておいて下さい。

あと注意事項がもう一点。

職場で何か起きましても当方では一切責任を負いませんので。

はい。こちらで本惑星でご紹介できる最後のお仕事となります。

今回こそは本当の本当に頑張ってくださいね。

今度こそ、今度こそ長く続けて下さいませ。

わかってます?本当の本当にわかっていただけてますか?

だったらよろしいのですが・・・



でーんと聳える不気味で大きな門に思わず回想を始めてしまったけれど、

現実を直視せねば。

現状確認大事。とっても大事。

一昨日離職、昨日就活、今日就職(仮)

早いです三日です。最短記録です。

この五年ほど色んな職を盥回・・・いえ、

体験して参りましたが、こんなに早く次の仕事が見つかるなんて。

対応して下さったお姉さんの言っていた通り、ここが最後、だけど。

だからこそのスピード(仮)採用なんだけど。

今回のお仕事が長く続くことをあらゆる神様に願いたい所存です。

もちろん努力も致しますが、今までそれでもポイされてきましたのでもう神頼みしかないのです。

ちなみに、ここが断られると他の惑星に飛ばされるそうです。

今のところ他惑星には過酷な仕事しかありません。

全て開拓地ですので、楽な仕事なんてあるはずがない。ははははは。


で、ですね。

この、無駄に威圧する門は何なのでしょう。

禍々しい感じの蔦?っぽいものが絡みついていて、

門柱の天辺にはガーゴイルが鎮座しており赤い液体が垂らされて固まっています。

今にも垂れてきそうなリアリティは必要なのでしょうか。

資料によると「職員通用門」のはずなのです。

決してお化け屋敷の入口ではないはず。たぶんきっと。

悪戯・・・のつもりなのでしたら良いんですが。

(良くないわっ!と故郷の母からのツッコミが聞こえた気がしますがスルーです)

就職先が決まってすぐ、次の職場について母に電話したところ、ここの主が母のかつての同僚だと言うではありませんか。世間狭っ。

詳しく話を聞かせて下さいとお願いしたら、怨嗟がとめどなく電話口から溢れ出しました。切るに切れなくてそのままにして寝たのは秘密です。

あちらからの通話でしたので私に損害ゼロですし。

で。

これが彼の人の趣味だとすると、なるほど、母とは相性が合わなかったのも頷けます。

いえ、この趣味を理解または許容できる方がこの世界にいらっしゃるのか、甚だ疑問です。お友だち・・・にもちょっと厳しい趣味嗜好そうですし。

私と致しましては、近くにいなければ問題ない、といったところでしょうか。

・・・上司っていうのは近くにいる括りに入れないのです。今決めました。


ああどうしたことでしょう。

足が動きません。中に入るのを躊躇う私の本音が足に伝わってしまったようです。

もちろん冗談ですよ?




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