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順番に並び中型フェリーに乗り込む。70人ぐらいしか乗れないので自分は次の便になるかもしれないと思っていたのだが、無事にこの便に乗ることが出来た。
見る見るうちに自分の住んでいる島が小さくなっていく。
雨のせいかガタンと船が何かにぶつかったような音が聞こえ大きく揺れた気がした。しかし船はまっすぐ進んでいるようだし、何より私以外に周囲を見たりしている人はいなかった。
しかし、もう一度ガタンと音がしたのだ。気のせいなんかではない。さっきの音よりも大きく私の耳に響いたのだ。
次の瞬間にフェリーは大きく揺れ始めた。
「何事だ―」とザワつき始める。
しかし、それでも何事もなかったように、みんな話を続けていたりしている。
それを見ていると、こちらまで何も起きていない大丈夫なんだと安心させられるようだ。
「蘭子ちゃん、今大きな音がしたわよねえ?」
「はい、二回目ですよ」
「そうなの?気が付かなかったけど、何かにぶつかったような音に聞こえたけど大丈夫かしらねぇ」
「大丈夫だと思いますけど……私見て来ますね」
外に出て、上から下を覗く。
しかし、ここからでは何も見えない。
船は前を進んでいるように見えるが……あの衝撃音が気になって仕方がない。
念の為に備えて、救命胴衣を探しに行くが、格納場所を探してそこを開けてみるが、救命胴衣などは一つも入っていない。
他の格納場所を探してみて行くが、どこにも救命胴衣は見当たらず、救命浮器すら見当たらない……。
まるで誰かがそこから排除してしまったかのように一つも置かれていないのだ。それはあまりにも不自然に見えた。
しかし、そうこうしているうちに、フェリーは完全に止まってしまったようだった。
島にも離島にも泳いですぐに渡れるような距離ではないというのに……。フェリーの中がザワザワとし始める。
「大変だ水が入り込み始めた。この船は沈むぞ――」
「ボートはないのか!船長はどうした?船長を連れてこい」
「ちょっと待って水が入って来たってどういう事よ?」
「ライフジャケット持って来い」
「それが今探してみたんですけど、ボートもライフジャケットも見当たらなかったんです」
私がそう言った次の瞬間に電気が消えたりついたりを繰り返し初めて、悲鳴が聞こえる中ついには真っ暗になってしまった。
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