第5話 闇凪の剣
「どうも、この家が『
黒いショートカットの髪に、少し大きめの目が印象的である。
身体は痩せ型で、黒豹のような身のこなしで玄関の引き戸に手をかけた。
背中に背負ってる直刀の鞘には
祖父の
彼女の父の実家であるその神社には、かつてはスサノオがヤマタノオロチを退治した
だが、崇神天皇の時代に大和の
この石上布都魂神社には、未だに
風守カオルの右目には、いつも通りの玄関の光景がみえていたが、左目の霊眼には、薄黒い透明な液体状のものが居間の引き戸の奥からあふれてきてるのがはっきり見えていた。
幼い頃から、彼女の左目には
言い伝えによれば、吉備津神社に伝わる「
讃岐の「
皇子の方はヤマトタケルの母方の血筋へと繋がっていき、彼の過酷な旅には副官として常に、武勇に優れた
風守カオルはどうやらそんな先祖返りのひとりであったようで、祖父の立石巌がそのことに気づき、「常世封じの道術士」として特別な修業を施していた。
居間の引き戸を開けて中に入ると、直径1メートルぐらいの淡い光の柱が畳から天井まで立ち上っていた。
その光の柱の中から薄黒い透明な液体状のものが、泉のように湧き出ていた。
いわゆる「
まずい、手遅れかもしれないと風守カオルは思った。
おそらく、井戸の底にある封印の
カオルのジャージ上着の左ポケットに入ってる
天照大御神の御姿を型取ったといわれる
ゆえに霊力が高く、「常世封じの道術士」の七つ道具のひとつである。
カオルは光の柱を右手に持った
そのまま、ゆっくりと井戸の底に向けて沈んでいった。
本当なら井戸の水があるはずだが、すでにこの空間は常世と繋がった異空間に侵食されているようだった。
身体の周りには薄黒い透明な液体のようなものがまとわりついたが、気にしてるいとまはなかった。
すぐに井戸の底に達して、左のポケットから
その刹那、光の柱は消滅して、薄黒い透明な液体のようなものも大地に吸い込まれるように消えていった。
「ふう、何とか間に合ったみたいね」
カオルは安堵のため息をついた。
が、次の瞬間、カオルの身体は黒い蛇のようなものに巻かれて、井戸の底に引っ張られていた。
不意に地面が砂のように柔らかくなって、気づいた時には、彼女の下半身がのみこまれていた。
両手が黒い蛇に拘束されているので
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