ジェル

り(PN)

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 最初は夢を見ているのかと思う。

 右手が手首の先からポチャリと水になり、研究室の床に落ちたからだ。

 吃驚して確認すると手は元の位置に戻っている。

 床に水溜まりはない。

「疲れているのだろうか?」

 そのときは、そう思うしかない。

 次に今度は左手が落ちる。

 気づいたときには、またすぐ元に戻っているが、その指先がジェルのようにプルプルと揺れる。

 けれども脳がそう認識した途端、正常に戻る。

 その次は右足の膝から先で、そのときにはさすがにバランスを崩して転ぶ。

 その次は左足の腿から先だ。

「気のせいなんかじゃない!」

 最後の体験の後、確信する。

 起こっていたのは理解不能で、かつまた常識的にはありえない症状(現象?)だが、夢の中にいる朦朧感はない。

 それとも、これが世に云う明晰夢なのだろうか?

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