第34話 影流
メガネはマリアの<鬼神十字斬>を紙一重でかわしたが、左手を持っていかれた。
だが、同時に右手の<水龍剣>の抜刀術でマリアの左腕を下から切り上げて両断した。
マリアの十字剣の煌めきから、メガネが助かった理由は明智光秀こと天海の秘剣<影流>だった。
秘剣<影流>は自分の本体と影を入れ替える空間転移の術だが、メガネはそれを真似て高速移動する術を会得していた。
メガネは秘密結社<
改心した明智光秀は天海と名を改め、信長と共に本能寺の変の本当の黒幕、イエズス会の魔女ベアトリスと戦うことになった。
信長や天海と戦国時代の死線を潜り抜けた経験がメガネを成長させていた。
メガネの本名は服部信三郎であり、元々忍びの血筋を引いていたし、そもそも新陰流の源流である<影流>は忍びの武術である。
伊賀、甲賀、雑賀、根来、影流から派生した新陰流の柳生も忍びの里であり、元々、メガネは素質があったことが幸いして、会得できたのかもしれなかった。
だが、マリアの<ボトムストライカー>には飛行機能があったが、メガネ機はノーマルだし飛鳥も同様であり、二人は仲良く地面に向けて落下していった。
「メガネ、飛鳥、今から<ねじまき姫>の飛行ユニットを送る。オートパイロットに切りかえろ!」
それは≪飛鳥≫同盟の影丸からの通信だった。
「はい、了解です」
メガネは急速落下しながら、何とかスイッチをオートパイロットにした。
自動で飛行ユニットと合体して体勢を立て直した。
「影丸、サンキュー。後で来いよ」
飛鳥も機体を立て直すと、影丸に軽く手を振って、手傷を負って逃げ去るマリア機を追撃する。
<白虎砦>の上から飛鳥たちを見上げながら、影丸も手を振り返していた。
左右二枚のエックス型の翼を持つ飛行ユニットはグライダータイプのものではなく、ジェットエンジン仕様の本格的なものだった。
元々、飛行機能を持っていたマリア機には追いつけなかったが、あと十分ほどすれば、激戦のスカイパレス上空に到達するだろう。
「メガネ君、あれは凄かったなあ。何という技だ?」
「<影流>です。明智光秀というか、天海さんに教わりました」
「天海? それは何かの冗談かな」
飛鳥は笑いながら訊いたが、メガネの態度から真実だと察しているように見えた。
「まあ、夢の中で教わったのかも知れません」
「また、後で話を聞かせてくれ」
飛鳥は半信半疑ながら、メガネの話を信じてくれているようだった。
しばらく飛行したら、次第に戦場の光景が見えてきた。
≪八頭龍≫は文字通り、八つの頭をもつ巨大な<ボトムウォリアー>であった。
ダークバイオレットの禍々しい機体カラーで天空を埋め尽くすように君臨する様は、それ自体、敵の真の本拠地であり、スカイパレスに匹敵する巨大さであった。
まさにラスボスに相応しい偉容に、飛行ユニットを装備した<ねじまき姫>と夜桜、ハネケをはじめ、鬼虎隊が挑んでいた。
時折、龍の口から吐かれるプレスの攻撃で毎回、数十機が削られ、300機あった兵力の残存は150機あまりになっていた。
「<ねじまき姫>、戦況はどうなってる?」
飛鳥が通信で話しかけた。
「戦力半減でじり貧よ。最初に鬼虎隊300機による<攻城刀技>による一斉攻撃仕掛けたんだけど、攻撃力約15億
「姫は奥の手はまだ出してない?」
「夜桜も私も<攻城刀技>の分割使用で回復させてるわ。ハネケは全回復は無理としても半分ぐらいの威力なら大丈夫よ」
「俺の光風剣、メガネ君の水龍剣……十二聖刀使いを合わせて攻撃力は約4億5700万
「力を溜めてる間は、防御を≪悪役令嬢≫同盟の舞さんに頼むしかないわ」
「確かに。
飛鳥の指令で≪悪役令嬢≫同盟150機と盟主の神楽舞のダークピンクの<ボトムドール>がスカイパレスから出撃してきた。
「舞さん、少しの間、頼みます。約10分ぐらい持たせてくれ」
「了解、それ以上はもたないわ」
神楽舞は厳しい表情で飛鳥を見返した。
マルチモニターでメガネもそれを見つめていた。
≪悪役令嬢≫同盟の<ボトムドール>150機は全機、盾を構えて銀色に輝くエネルギーフィールドを展開した。
鬼虎隊残存150機が前線から退いて、<ねじまき姫>と飛鳥たちに合流してエネルギーフィールドの裏に隠れていく。
≪八頭龍≫は咆哮を放って、エネルギーフィールドにブレス攻撃を浴びせる。
エネルギーフィールドの銀色の光が波打って七色の光を放つ。
守備力に特化した≪悪役令嬢≫同盟の
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