リリィとレインは満月を笑う

千のエーテル

お腹を空かせたケット・シー【opening】

たった一つ叶わなかった。


それだけで私の思考はこんなにも変化した。


マイルズは私に、残念な女の子でも見るような目を向けアナの経営するBARへ向かった。


今夜パーティーがあるらしい。

私の居ないパーティーだ。


私の片方だけの恋が終わった。


そんな結果が出ても明日は訪れる。


マイルズからすればきっとなんの変哲もない水曜日に違いない。


私の今日までの三年間はマイルズを見つめ

マイルズを想い。

マイルズに笑い。

マイルズと一緒になることだけを考えるためだけにあった。

五回断られて、六回目が断られる前にはもっと好きになっていた。


どうして私じゃないのか?


いっそ殺してしまおう。


そして死んでしまおう。


そんな言葉が頭をよぎる。

決して悲観的になっているわけではない。

来世でまた会えばいいだけの話だ。

来世で駄目なら次の来世。それも駄目ならその次の来世。

そうだ。

そうしよう。


愛が哀へと変わってしまう前に。

決めてしまえばなんだかとってもスッキリした。

不思議と怖くなかった。

私には来世でマイルズに逢える確信があった。


いっそ殺してしまおう。


そして死んでしまおう。


そう考えて私は笑う。

来世というスピリチュアリティーな言葉が自分から出たことと、そして自分が理解していた以上に私はマイルズのことが好きだったことに……


私はそこで本を閉じる。

本の最後にはそう書かれていた。

鼻の奥からせつなさがこみ上げてくる。

またいつものように泣いてしまったのだった。

隣りで推理小説を読んでいた親友がいつものように優しい顔で見つめていた。


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