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「ウソ! Cards soldierを知らないで入学し《はいっ》て来たの!?

 あたしは、彼らがここの生徒だから選んだのに!」


「へ……へぇ」


「悔しいわよね!? 十二月の事故!!

 あれでスペード・エースさえ抜けなければ、今頃とっくにメジャーデビューして、テレビにだってどんどん出てたはずなのに~~!」


 わたしがCards soldierを知らないって言ったこと、このヒト覚えてるかな?


 彼女は、知らないバンドのことを一人で勝手にぺらぺらしゃべってる。


 正直、彼女の話にはげんなりしてたけど……引っかかる情報を見つけて目を見開いた。


 十二月に、Cards soldierのスペード・エースって言う人が、事故を起こしたって?


  それで、本人は歌えなくなっちゃったって、あの金髪の彼からきいたけど!?


「そ、それでスペード・エースってヒトどうなったんですか!?

 まさか、亡くなったとか……言いませんよね?」


 最悪な状態を想い浮かべたくなくて。


 恐る恐る聞いたら、そのコはふるふると首を振った。


「死んだ、なんてそんな縁起の悪いこと言わないでよ!

 生きてるわよ、もちろん!

 ただ、治っても、声を出すのに特別なリハビリが必要で……今……えっと、専門の治療施設に通うために……だったかな?

 とにかく実家から出てるのよ。

 君去津高からも、一時的に転校してるし。

 Cards soldierのメンバーが在校しているうちに、帰って来られるか、どうか……だって」


「……それは、とても……心配、だね」


「うん。

 だけど、今回はスペード・エース本人の希望もあって、新メンバーを入れるべく、代わりを探すんだって!

 今は、みんなその話で盛り上がってる」


「そっか……」


 せっかく自分のために歌を書いてくれたのに、スペード・エースは歌えなくなったんだ、って。


 そして、代わりに新しい人が来る……のか。


 まるで、今にも泣き出しそうに笑う、金髪の彼の顔が浮かんで、目を閉じた時だった。


 彼女が、わたしの制服の袖をぐいぐい引っ張った。


「あっ……! ほら、すごい!

 Cards soldier(カーズソルジャー)がすぐ近くを通るよ!」


 みてみてみて見ぃ~て~~ぇ!


 なんて、叫ぶ彼女に押し切られ。


 ほろっと涙が出そうな思いを心に押し込めて、目を開けた……そのとたん。


 ウチらのすぐ側を通るヒトビトを見て、わたしの時間は止まった。


「……!」


 ……っていうか、視覚以外の全機能が停止した。


 息さえするのを忘れたわたしに気がつかず、クラスメートの彼女は、テンション高く騒いでた。


「ほら、メンバーのダイヤモンド・キングは生徒会会長で、クローバー・ジャックは副会長じゃん?

 これから、入学式があるんで、まだステージ衣装着てないけど、メークの下地は済んでるんだね!

 きゃーーっ! カッコイイ!! 素敵!!!

 まだメーク半分だけなのに、絵本に出てくる、本物の王さまと王子さまみたい!!

 ねぇねぇ、手を振って気づいてくれたら、振り返してくれるかな……」


 そこまで言った彼女の言葉を、わたしが手を振ってさえぎっちゃった。




 だって! 窓の外にいたCards soldierって!


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