お嬢様の初体験Ⅳ

17 ☆☆☆☆

「くっそ~~ 自己嫌悪~~

 本っ当に、俺、ナニやってるんだろ」


 JRから君去津を通る私鉄に乗り換えると、そこはさっきと打って代わって空いていた。


 ラッシュのさなか、さすがに座席には座れないけど。


 扉のすぐ隣にある手すりは、わたし達二人だけでゆっくり占領できるのに。


 宗樹は隅の手すりに近寄りもせず、今閉まったばかりの扉に手をついて、がっくりとうなだれてた。


 さっき、わたしのおしりを触って宗樹に手首を掴まれたあの『フトドキモノ』の正体を知ってから。


『世界の終わり』を明日に控えました~~みたいなため息を何度もついていた。


「よもや、この俺が小学生(ガキ)相手に全力で怒った、なんて。

 大人げねぇ~~」


 そうなんだ。


 わたしのおしりを触ってた手を人ごみから引っ張り出してみれば、そこには、ど~~見ても小学生。


 しかも、低学年ぐらいの男の子が、いた。


 どうやら、ラッシュの電車に乗ったのは良いけど、今日は、特別混んでたみたい。


 いつも捕まるはずの手すりに届かず、人ごみに流され。最初に流れついた先が、わたしの真後ろだった。


 前を塞ぐ、わたしのおしりが邪魔だなぁ、と押してみたり。


 人ごみに流されそうになって、思わずつかんだスカートを引っ張った結果が、痴漢騒ぎコレだったってことだった。


「ごっ……ごめんなさいっ!」


 も~~イヤ。


 わたしってば自意識過剰すぎ……


 おしりを触られた時とはまた別の恥ずかしさで、なんだかじたばたしたい気分だ。


 助けてくれた宗樹に、本当に申し訳なくて!


 頭を下げたら、宗樹はひらひらと手を振った。


「あんたは別に『痴漢だ』とは騒がなかったろう?

 俺が勝手に勘違いしただけだ。

 つかんだ手もだいぶ小さいって、すぐ判ったはずなのに。

 そんなことにも気がつかなかった」


「……でも」


 騒がなかったのは、ただ声が出なかっただけで……!


 そう、言おうとしたわたしに、宗樹は手のひらを向けた。


「ストーーップ。もういいぜ。

 思い返すだけでも、俺が恥ずかしい。

 ……とりあえず、本物の痴漢に出会わなくて良かった。

 それで、良いじゃねぇか」


「う……うん」


 わたしが曖昧にうなづくと、宗樹は自分の頭をガシガシと掻く。


「……本っ当に、ナニやってるんだろうな、俺。

 今から、西園寺に関わる気なんざ、これっぽっちもなかったはずなのに。

 お嬢さをんガッコの駅まで連れてゆく気になって。

 痴漢に会ったかも、と思ったらこんなにすげー腹立つなんて」


 

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