月刊intereviews 1月号 特別2万字インタビュー 柴里チャコ「揺らぐ」
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【月刊intereviews 1月号 特別2万字インタビュー 柴里チャコ「揺らぐ」】
今を時めく柴里チャコの新たな挑戦
小説「揺らぐ」と彼女の人生観についての特別インタビュー
「日常を守るためになにができるだろう」
柴里チャコ。もはや、彼女を知らない人などいないだろう。女優・コメンテーター・ラジオパーソナリティ・エッセイストとして活躍中の彼女が次に挑戦したのは、なんと小説家。今回、その彼女に処女作「揺らぐ」について、これまでの仕事を振り返りながら話をうかがった。
— 柴里さんはこれまで数多くのメディアでご活躍されていますが、今回はどういった経緯で小説を書こうとされたのですか?
実は小説を書きたいなんて、さらさらおもっていなかったんです。わたしは小学生のころから子役のお仕事をしていたんですけれども、お仕事で学校に行けなかったぶん、先生が宿題として日記を出してくれていたんです。それが日課になっていて、今でも続いているんです。そんな中、ふと、この小説の構想が浮かび上がり、日記の傍らで書き始めたのがきっかけですね。
ー 文章を書くのがお好きなんですね。
そんなに文章を書くのが好きだという実感はありませんが、文章を書くことが苦ではないですね。実際、「揺らぐ」を書きはじめたのが2年前だったのですが、気が付いたらひとつの物語ができていました。でも実は、文章ではなくて純粋に文字を書くのが好きだったのかもしれません。小学校入学したてのころは覚えたての文字を意味もなく並べて書くことが好きで、休み時間はノートにひたすら『あ』を敷き詰めていました。漢字を練習するときみたいに『ああああああああああ』って。でも、ただ書くだけで完結しなくて、その『あ』だらけのページの中から一つひとつ『あ』のフォルムや大小、バランスなんかを吟味して遊んでました。さらには、ベスト『あ』を選んで、それを再現できるようになるまで、さらに『あ』を書き尽くす。その繰り返し。今から思うと変な小学生ですね(笑)でも、そのおかげで子どもの頃からきれいな字を書けるようになって、いろんなかたから褒めていただきました。あと、本を読むのも好きでしたね。学校にいるときは、昼休みや放課後はもっぱら図書館にいました。言語表現が下手でも、文字を通してなにかを表現できるツールが手に入ってうれしかったんだと思います。
— パパなんて知らない。(注1) の頃には、天才子役としてご活躍されていましたが、それ以前から変わったお子さんだったんですね(笑)
物心ついたときから芝居の世界にいましたし、よく考えれば学校で友達がいなかったからひとり遊びばかりしていたんだとおもいます。でも、小学校も楽しかったですよ。毎日書きためた日記を登校日に先生に提出していたんですが、その下校時には先生のコメントで真っ赤になったノートが返ってくるんです。休み時間でさえ忙しかったはずなのに、わたしの文章をしっかり読んでくれていましたね。演技がうまくできなかったこととか家族のこととか、個人てきな相談事を書いても、丁寧にアドバイスを書いてくれたりもしました。なんでもわたしのことを理解してくれていたので、ひそかに先生のことを魔法使いだと思っていました(笑)先生とのやり取りが私の小学校生活のすべてだっとも言えますね。
パパなんて知らない。のころは、確か中学3年生だったかと思います。思春期真っただ中の高校生ナナコ役だったんですが、少しだけ年上の役作りに困りましたね。もちろん、化粧や恋愛に興味を持っていた時期ではあるんですが、父子家庭で、さらにナナコが反抗期という中でどのような演技をすればいいかは当時すごく悩みましたね。
― 当時、チャコさんの演技に日本中が心打たれましたよ。
お恥ずかしい限りですが、ありがとうございます。特にお父さん世代からは反響がすごくて、いまでもファンレターが届いたりしますね。ナナコ宛に(笑)それでも、私だけの力じゃなくて、パパ役の柳瀬俊郎さんや脚本家の濱中ユキさん、鈴木治監督などなど、パパなんて知らない。はいろんな人に支えられた作品だなあと今でも思います。その後も女優として、ナナコを越えた芝居をしようと常々思ってきたのですが、あれだけわたしと役がシンクロした作品は未だにありません。
― 柴里さんはエッセイストとしても活躍されていますが、ミステリー小説を書くときの違いとか何かありましたか?
実を言うと、そんなに違いはありませんでした。というのも、この「揺らぐ」自体がわたしの経験に基づいているからですね。もちろんフィクション部分もあるのですが、そこはこれまで女優として演じてきたお芝居や実際におこった社会問題を参考にしています。エッセイでも脚色していることもあるので、そういう意味でも違いはないかな。強いていうなら、エッセイとの違いはよりわたしの一部として消化吸収してから、わたしがそれらを見てきたように文字に起こすということですかね。お話の展開は構成できているのに、登場人物たちの人物像を踏まえて、行動や発言などひとつひとつを詰めていく作業はとても根気のいる作業でした。女優として読んできた芝居の台本ともちがって、視覚的表現を隙間なく文字を埋めるということもあり、文章書きとしてとても勉強になりました。
― 主人公のチャコは柴里さん自身がモデルだそうで。
そうなんです。よくご存知ですね(笑)。幼い頃から図書館が好きなところとか。子どもの頃をおもいだしながら、チャコの幼少期は書きました。
― そんなチャコはある日突然壮絶な事件
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