メェーメェー缶

福蘭縁寿

始まり

 何年かに一回おばあちゃんからお土産が届く。それはお菓子だったり、文房具だったりするけれど何処のお土産かはいつも謎のまま。そしてまたそれは、流岡香織るおかかおる 宛てに届いた。開けてみると、中身は缶詰のようだ。缶詰といっても、どうやら振るとメェーメェーいうものみたいだ。早速振ってみる。メェーメェー。なるほど、こんなやつか。さて実は前回……と言っても一昨年に届いたのだけれど、それを未だ見ていない。この際今見てしまおうと思って開けてみると、あったのは缶詰である。しかもメェーメェーいう缶詰、二回連続同じものだったらしい。


「あれ、こっちは振っても何も音が鳴らない」

 

 壊れているみたいだ。それにしても中はどうなってるんだろう? どんな機械が入ってるんだろう? 開けてみようかな。よし、音が鳴るほうを開けてみよう。ツナ缶みたいにプルタブが付いているから開けやすい。開けてみる。


「え」


 開けて驚いた理由は、機械じゃなかったということと、中は草原になっていて羊が放牧されいているということだ。おおよそ直径八cmで高さ五cmという缶詰の中に、草原があって一cm程の羊が六匹いる。


「なにこれ? 生きてるのかな?」


 試しに缶を傾けてみると、羊が転がってメェーメェーいっている。今度は逆に傾ける。メェーメェー。原理はこれらしい。傾けるのをやめると、羊たちは目が回ったのかフラフラしながら立ち上がった。そして何事も無かったかのように草を食べ始めた。この草が食料なのか。それなら、なぜ一昨年のは鳴かないのだろう? 開けて確かめてみよう。

 開けてみると、草は枯れ果て羊はすべて横たわっていた。だから鳴かないわけだ。草が枯れ食べるものが無くなることによって羊も弱っていくみたいだ。当たり前のことではあるが。

 私はこの今回貰ったものを飼ってみることにした。飼うといっても草原に霧吹きで水をあげ枯らさないようにするのである。そうすれば羊は食べるものがあるわけだから、飢餓に苦しみ、そのまま餓死することもないだろう。成長するのだろうか。

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