その時まで待ってる
水城玖乃
小5編
1章 これから柚葉
プロローグ
私はバスに揺られながら隣の席の男の子をじっと見ていた。隣では、幼馴染みの
ゴールデンウィークの今日、私達二人はバスで一時間程かかる場所にある遊園地に向かっていた。
本当なら、私と悠輝、両親、兄で車に乗って行く予定だったけど、兄が学校の用事でお昼過ぎまで拘束されるため、向かうのがその後になるところだった。私は12時からのステージが見たかったから文句を言ったら、悠輝が先にバスで一緒に行ってくれると両親を説得してくれた。
だから、私達は二人でバスに乗っている。悠輝と二人で遊園地に行くなんて、デートみたいでドキドキした。
「退屈なら、これやるか?」
悠輝が今までプレイしていたゲームを私に差し出す。
「途中からだとやっても分からないよ」
「これ、ミニゲーム集的なのだから、大丈夫だって」
私が取ってしまったら、今度は悠輝が暇になってしまう、そう思って断ったが押しつけられてしまった。
「ありがとう」
受け取って、一つミニゲームを遊んでみる。昔から兄と一緒になってやっているので、この手のゲームは結構得意だったりする。
一度リバーシをプレイしてから、悠輝の方を見る。少し退屈そうに窓の外を見ていた。普段通らない山道を通るので景色としてもそこそこ面白いが、さすがに飽きてしまうだろう。
「水筒にお茶持ってきたんだ。飲む?」
「うん。飲む」
悠輝に尋ねるとすぐに返事がある。私はシートベルトを外して、席の上のスペースに上げたリュックサックを取ろうと立ち上がる。走行中にシートベルトを外すのは良くないけど、少しの間なら問題ないだろう。
一度リュックを降ろそうとしたが、思いの外重かった。もう一度戻す手間を考えて、少し背伸びになりながら、中身を漁る。すぐに水筒は見つかった。
「悠輝、ちょっと持ってて」
手に持ったままでは鞄のファスナーを閉めにくいので悠輝に水筒を差し出す。悠輝が水筒に手を伸ばしてくる。
「えっ?」
がんっと大きな音がしたかと思うと空間が傾いた。いや、バスが傾いている?
「
悠輝が伸ばした手で水筒ではなく。傾きで倒れそうになる私の腕を掴んで引っ張った。そのまま悠輝に抱きしめられる形になる。
その直後落下しているような感覚に襲われた。いや本当に落下しているのかもしれない。
「悠輝っ」
必死に抱きしめ返す。
いつも優しかった幼馴染みに、大好きな幼馴染みに、私はまだ気持ちを伝えていない。死を意識したからか、今までの思い出が私の中に溢れていた。思い出すのは悠輝の事ばかりだった。
悠輝が私を助けようとしているのを感じた。でも、私は悠輝に生きていて欲しい。そう強く思った。
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