第251話 るるる三者面談・・・その4

うーん。


なんと表現すればいいだろう。


さゆり先生はつまりわたしの『進学』の話ではなくって、将来の『進路』の話を真剣にしてくれている。


そしてお師匠もその話に真剣に耳を傾け、僧侶という師匠の立場と、わたしの父親という両方の立場で真摯に語り合ってくれている。


三者面談って、晒し者の血祭りに上げられるようなおどろおどろしいイメージが以前はあったけれども、わたしのことについてみんなでディスカッションしてくれるなんて、とても楽しい。


ただ、やはり問題はある。


先立つものは、


「お金ね」

「お金です」


はあー、とため息をつく2人。

お師匠は開き直ってしまっているようだけれども、担任教師に我が家の家計のことでため息をつかれるというのはやっぱりなかなかに恥ずかしいシチュエーションだ。


「ジョーダイさん。奨学金、真剣に考えてみて」

「先生。もよりは後どのぐらい頑張れば奨学金の資格が得られそうですか」

「そうですね。せめて学年で10番台になってもらわないと」

「ひえー」

「ひえー、じゃなかろう、もより」

「あ・・・じゃあ、お師匠は高校の時成績どうだった?」

「言っていいのか」

「是非とも」

「入学当初から卒業までずっと主席だった」

「え」

「ジョーダイさん、お父さんのおっしゃってるのは本当よ」

「え? 先生・・・?」

「ほら、この記事」


さゆり先生は古い新聞記事のコピーをぺらっとわたしの前に差し出す。


「え・・・『上代君、県知事賞を辞退。県内県立高校の学業優秀者に授与される県知事賞と副賞としての奨学金を今春高校を卒業する上代君は辞退した。理由は、学究の道ではなく生家の住職を継ぐため。彼の才能と気質を惜しむ知事は代わりに彼が後を継ぐ咲蓮寺に灯籠を一基、県知事としてではなく個人として奉納した』。え? ええっ?」

「先生、こんなものを・・・」

「お父さん。大変素晴らしいと私は思います。どうぞ、これからもジョーダイさんの『お師匠』として彼女を厳しく指導して上げてください」


わたしは全く立つ瀬がない。

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