第214話 永遠の夏休み・・・その1
「もよちゃん、久しぶり」
「おー、ちづちゃーん。元気だった?」
わたしはちづちゃんと、大都の隣にあるカフェで落ちあった。
よくよく考えると、ちづちゃんと2人だけで会うのなんて初めてかもしれない。いつも必ず男子3人が一緒にいたので。
もちろん、全員集合でわいわいやるのもとても楽しいんだけれども、こんな風にちづちゃんとの友情を確かめ合うのもいいものだ。
けれども、それとは別のことをわたしは考えていた。
今年の夏休みは、長すぎないだろうか。
今までなかったようなことが起こっているのは、もっと別の理由があるのではないだろうかと。
「ねえ、ちづちゃん。こんな話、知ってる?」
「え? なに?」
「ずっと前に見た映画なんだけど、文化祭の前日を繰り返すって話」
「へえ・・・どんなの?」
「ある高校で文化祭の模擬店なんかの改装準備をやってるんだけどね。なんだかデジャブの感覚をみんなが持ち始めて。やってることがとてもワンパターンになってくるのね。で、ある時誰かが気づくの『毎日同じことを繰り返してるような気がするのって、ほんとに同じ日をぐるぐる繰り返してて、世界の時間が進んでないんじゃないだろうか』って」
「へえ。おもしろそう」
「それで、その核心に迫ろうとした人が次々に消えていく、っていうすとーりーなんだけどね。ちづちゃん」
「はい」
「なんだか、夏休み長いよね」
「うーん。わたしは長い方がありがたいけど。こうやってもよちゃんとも2人きりで会えたし」
「そこだよ、ちづちゃん」
「え?」
「夏休みの最初に横山に登ったよね。あれ、すごい昔の話のような気がするんだけど」
「確かにそうだね。わたしもなんだか随分前のような気がする」
「でしょ? それ以外にも今年の夏はイベント満載だったよね」
奈月さんと東京に行ったことはちづちゃんには内緒にしておく。
「うーん。そう、だね・・・」
「わたしもお盆の忙しいのがこの間終わったけど、まだまだ夏が続くっていう感覚が強いよ」
「なんでかな」
「ちづちゃん。本当に同じ日を、毎日繰り返してるとしたら・・・」
話していて自分自身が本物の自分だろうか、ということすらわたしは感じ始めていた。
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