第100話 クリスマス・フィードバック・ブディズム その11

「わたしは、無力な人間です」

 ゆくり、ゆっくりと、1人1人の目を見ながら、会場の全員を見遣る。

 目を反らす人もいるけれども、それはその人のせいじゃない。

 わたしの人徳の無さのせいだ。

「わたしは、この会で皆さんに説法をするつもりでした。でも、それは間違いだ、って、今皆さんの切実な思い、切羽詰まった状況を知って、そう気付きました。これから皆さんに、わたしがいかに弱い人間か、凡夫か、って言う話をします」

 しん、としてる。

 緊張は高まるけれども、不思議だ。このぎりぎりの、奈落が目の前に深々と底堕ちしているような感覚は嫌じゃない。

 デパートの佐原さんが貸してくれたこのスーツが、ぴったり似合う状況だ。

「わたしの兄が死んだ日のお話です」


 

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