第26話 純喫茶アラン その15

 3人でご本尊の前に座り、お茶を頂く。

「エレカの息子さんですよね。お名前は?」

「市松です」

「市松さん、ですか」

「あの、僕の事覚えてらしたんですか」

「はい。私はエレカにはよく行きましたから。中学の制服を着たあなたを何回か見掛けましたよ」

「お師匠」

 話の流れをストレートにしようと思い、わたしは口を挟む。

「市松くんのこと”お待ちしてました”って、どういうこと?」

 お師匠はお茶を啜ってからわたしを見、市松くんを見る。

「エレカがお店を閉めた時、いつかあなたがここへ来る光景はなんとなく見えてました。それが今日だったんですね」

「来る理由も見えてたの?」

「見えてた」

 当たり前のように答える。理由が見える時って、どんな見え方をするんだろう。文章でも音声でもない何かを直感するんだろうか。

「市松くん。変だって思うかもしれないけど、ウチのお師匠は何か解決する方法が見えると思うから」

「ジョーダイさん。俺は解決したいんじゃないんだ。本当に解決しようと思ったら時を遡らないといけない。父親が伯父さんに買掛金を払ったことにしないといけない。エレカが店を閉めなかったことにしないといけない」

「・・・・・」

 二の句が継げなかった。自分の現実感の貧弱さに打ちひしがれいてると、またもやお師匠が予想を超えることを言う。

「事実は変えられませんが・・・・遡って心を救うことはできますよ」

「えっ!?」

「えっ!?」

 市松くんとわたしの声が重なる。

 気が合う、のかも知れない。





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