第434話 みんな綺麗になーれ

 新たに加わったジジ様、ユゼおばあちゃん、侍女様方、それに銀髪さんの存在に、絡んできた男達も性犯罪者も目を丸くしている。


 男達をじろりと見た銀髪さんが、剣持ちさんに問いただした。


「それで、これはどういう状況なんだ? フェリファー」

「ご報告申し上げます。そこにいるならず者達がこちらに言いがかりを付けてきて、彼女を連れ去ろうとしたところ、後ろの御仁が止めに入ったところです」

「そうか。誰かは知らないが、連れの難儀を救ってもらい、感謝する」


 感謝と言いつつも、全身から出ているのは「早よ去れ」というオーラ。さすがは一国の王様やっていたって感じで、性犯罪者達はタジタジだ。


 いや、君達、そんな一緒に固まっていたら「実は僕達グルなんですー」って言ってるようなものなんだけど。いいの?


 ほら、周囲の人達の目も、「あれ? 何かおかしくね?」って感じになってるよ?


 そんな周囲の目にも気づかないくらいテンパってるのか、性犯罪者が胡散臭い笑顔を浮かべた。


「み、見たところこの辺りの人じゃないようだ。どうだろう? 今夜は我が家に逗留しては」

「折角だが辞退する」

「え……」

「行きましょう、お婆さま」

「そうね」


 ぽかんとする似非爽やかさん達を置いて、私達はその場を立ち去った。




「何なんだ? あれは」

「おそらく、金銭か何かが目当てのならず者でしょう。背後の男も一味のようですが、領主の息子とか言っていました」

「……この国にも、腐った領主がいるという事か」


 さっきまでいた、ちょっと大きめの街から出て船に戻ってから、銀髪さんと剣持ちさんが嫌そうな顔で言い合っている。


「じいちゃん、ちょっと」

「何じゃ?」


 とりあえず、検索先生から聞いた内容を、皆に教えるべきかどうか、じいちゃんに判断してもらおう。


 で、あの連中が何をしているかを教えたら、じいちゃんが考え込んじゃった。


「ううむ……今のあの二人にそれを話せば、相手の屋敷に乗り込みかねんな」

「やっぱり?」


 領主様がいれば押さえてくれるだろうけど、いないからなあ。ジジ様じゃあ、押さえるどころか火に油を注ぎそう。


 ちなみに、ユゼおばあちゃんならにっこり笑顔で「浄化、最強で」とか言い出しそうだし。


 あ、その手もあるっけ。


『今ならピンポイントでの浄化も可能です。ヤリますか?』


 検索先生、何か一部おかしな感じに聞こえたんですけど、気のせいですか?


 さっきまでは実力行使でコテンパンにしちゃえって思ってたけど、浄化なら少し離れたここからでも可能な訳だし、何より安全。


 いや、物理一辺倒の連中に負けるつもりはないけど。ジジ様達にも、鉄壁の結界を張っておくし。


 ただ、やっぱり女性陣に荒事を見せるのは良くないと思うんだ。私は慣れているから除外でいいや。


 そんな事を考えていたら、いつの間にか銀髪さんと剣持ちさんの話し合いにジジ様とユゼおばあちゃんが参加していていた。


「ここはやはり上に直接ねじ込むか?」

「伝手もないのに、どうやってやるつもりです? やはり、教会からかしら? ユゼ様」

「大陸が違うので、聖地の力がどこまで届くか、わかりませんね」

「では、実力行使をしますか?」


 やべ、剣持ちさんが私と同じ事考えてる。


「あれ、止めた方がいいよね?」

「そうじゃの。じゃが、具体的な解決案を出さねば止められんと思うぞい」

「大丈夫。策はある」


 検索先生が教えてくれたけどね。


「えー、ちょっといいですかー?」

「どうしたの? サーリ」

「さっきの連中、他にも悪さしていたようなので、対象限定して強めの浄化を使おうかと思うんですが」


 私の言葉に、その手があったかと全員が納得した。うん、皆も忘れてたね。私が神子で、強力な浄化が使えるって。


 まあ、私自身も忘れてたんだけど。


「でも、それでいいの?」


 ジジ様が、心配そうに聞いてくる。これは、神子だってバレるかもしれないって心配かな?


「大丈夫ですよ。こっちでバレても。追いかけ回される前に、ダガードに帰ればいいんですから」


 まあ、あっちでもバレたらこっちの大陸に逃げればいいやって思ってたしなー。こっちには、まだまだ隠れられそうな場所がたくさんあるし。


「そうじゃな。いざとなったら、ついこの間もらった山にでも籠もっていればええ」


 じいちゃんも加勢してくれた。皆も「ああ、それがあった」と納得してるし。


 まだ住める建物は作ってないけど、あの山脈なら人が入れないようにしてあるし、何よりここからだと結構な距離があるもんね。


 んじゃ、浄化による自白コース、いってみよう!




 浄化後の彼等の様子は、検索先生に教えてもらった。というか、護くん経由で見せてもらった。


『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』

『俺達は多くの女性を辱めましたああああ!』

『追い剥ぎのような事もしてました!!』

『父上、この不甲斐ない息子を断罪してください! 弟に罪を着せ、やりたい放題にしていた、罪深き息子を!』


 うん、ちゃんと自白してるね。しかも大通りのど真ん中で。周囲の人達も唖然としてるよ。


 後はちゃんと罪を償うとこまでいけばいいけど。検索先生に言われて、彼等の父親にも浄化を使ったんだよなあ。


 って事は、そういう事だよね。でも、浄化が効けば、大丈夫か。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る