光が飛翔し終えた時

飛竜

第1話 出会い

人々の「時」を操り苦しめ、魂を奪い取る悪魔。通称、時魔。この物語は、その時魔が存在する世界の話である。


 あたしこと山鳥アスカは今年高校に入学した現役女子高生。家から近くて、落ち着いた雰囲気のあるこの学校にあたしは大満足している。ただし、納得できないことがひとつだけある。それは必ず部活に入らなくてはいけないこと。あたしは特に趣味も特技もなく、中学でも帰宅部だった。それなのに高校では絶対に部活に入らなければならないというのは納得できない、というより面倒くさい。しかしどれだけ愚痴を言ったところでその規則が変わるわけでもなく、入部しなくてはならない。あたしの高校にはとにかく部活の種類が豊富にあるが、あたしが選んだのは、星座研究部。天文ではなく星座に限定されていることがマイナーさを醸し出していて、この部活だったら部員がいないに違いなく、サボれるのでは、と思ったからだ。


甘かった。星座研究部には三人もの部員がた。全員一年生で、しかも幼馴染同士だったのだ。なんてアウェイな。しかしこの星座研究部以外に、マイナーで活動日が少ない部活はない。しかたがない。あたしは週に何度も部活に出れるほど暇ではないのだ。

「ところで、この部活って何するの?」

そう聞いたのは、笠原アヤメ。「カサメ」と呼ばれていて、端正な顔立ちに、リボンで結わいたポニーテールが良く似合う女の子だ。傘を持った途端に身体的に強くなるという、不思議な能力の持ち主である。

「星座について研究するんでしょ。」

適当に答えたのは、二ノ原コウキ。いつもニコニコしているから「ニコ」と呼ばれている。顔は良いがお調子者なのが玉にキズで、ふざけてはカサメに怒られるのが日課だ。

「カサメが聞いているのはそういうことじゃないと思うのだが。」

小奇麗な星座の本を読みながら的確に指摘したのは、空島ヒカル。黒縁眼鏡がいやに似合う頭の切れるやつで、星座の本を読みながら指摘したり皮肉を言ったりしては、皆に冷たい目線を向けられる。指なし手袋を身につけているのは彼流のファッションなのだろうか。

「顧問は、文集を作って文化祭に出せばいいって言ってたよ。」

なぜか部長になったあたしが、きちんと答える。

「文集かぁ・・・。」

カサメが面倒くさがるのはよくわかる。けれど、文集を作らないと顧問に怒られて、最悪の場合は廃部になり、あたしたちは別の部活に入らなくなるのだ。それは、避けたい。

「じゃあ、どんな内容にするか決めようか。」

 こうしてあたしの金曜の放課後はゆるやかに過ぎていく。

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