第31話 寝床の奪いあい

 夜になるとわたしはベッドで寝る。同じように猫もわたしのベッドで寝る。夜はベッドで寝るものだと思っているらしい。

 最近の夜は蒸し暑い。梅雨でじめじめしているせいだ。暑いので、掛け布団をお腹の上にだけ掛けて寝る。

 うとうとし始めると、猫がベッドへやってくる。猫はわたしの足の間に無理矢理入りこむ。暑い。それでなくとも暑いのに、足の間に毛皮が密着しているのだ。しかし猫も暑いはずだ。全身毛皮を纏っているのだから。猫の方が我慢できずに出ていくに違いない。わたしはそう思い我慢する。時間だけが過ぎていく。暑い。暑いよ。猫も我慢しているのだろうか。何故我慢比べをしながら寝なければいけないのか。しかし、ここで負けるのも悔しい。でも、早く寝たい。

 あぁ、もう限界だ。わたしは仕方なく寝返りを打つ。

 はー、涼しい。ホッとして、もう一度寝返りを打とうとする。しかしそれは猫によって阻まれる。猫パンチを喰らったのだ。よく見ると、猫がベッドの真ん中で伸びている。しかもベッドを横切るように寝ている。やはり猫も暑かったのだろう。しかし邪魔だ。寝返りが全く打てないではないか。わたしは、手で少し猫を押してみる。案の定、反撃に合う。猫パンチに足蹴りだ。ここは自分の場所だと言っているようだ。

 ベッドの三分の二を取られてしまった。でも大丈夫だ。ベッドの横に、ベッドと同じ高さの出窓がある。わたしは出窓へ足を出し、斜めになって寝る。仕方がない。家での序列は猫の方が上なのだ。

 こうして暑い日は、猫との寝床の奪いあいに敗北している。

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