第7話 ビンゾウ
ビンゾウはとてもイイ子であった。
ビンゾウはいろいろなものに興味を持った。
坂は全て登った。そして全て降りた。
ビンゾウはキサチと出会う前、とても目立たない子であった。
ビンゾウはキサチの独特の香りに興味を持っていた。それは好意でもあった。
「たぶんこのまま船を出すので」
他人行儀な挨拶を母親にすると、せいっ、と船を漕ぎ始めた。
ビンゾウはとてもイイ子であった。
ただその「イイ子」はビンゾウにとって「当たり前」であった。
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