第36話 ドラゴンなんて怖くない

 さて、これからどうする?

 こちらは、子供たちを護りながらドラゴンを倒さなければいけない。

 攻撃手段のある戦力は、ソラのみ。

 俺は、ひたすら盾にならなければいけない。

 子供たちは、およそ20人。

 敵の増援の可能性あり。

 そして、ソラひとりでドラゴンを倒せる可能性は低い。

 どうする?考えるんだ。考えろ俺!

 俺は、試しに石を投げてみる。

 メテオ並みに威力を出したあの時の魔力を信じて……

 しかし、ドラゴンには効かなかった。


「く……

 やっぱりダメか」


 俺が、もっと強ければ…‥

 俺が、絶望に浸っているとドラゴンの背中の影から今の俺と同じ年くらいの赤い髪の少年が現れる。

 そして、首輪をつけた四つん這いになったロングヘアーのサキュバスが一緒に現れる。


「カイ!」


 ソラが、ロングヘアーのサキュバスに向かって声を出す。


「ってことは、あの人がソラのお姉さん?」


「……うん」


 ソラの表情が、曇っている。


「どうしたの?」


「カイの体が、傷だらけ……です」


「カイ?この女のことか?」


 赤い髪の少年が、俺たちの方を見てケラケラと笑う。


「貴方!カイに何をしたの?」


「何って、逃亡犯は死罪だろう?

 殺さずに奴隷に落ちた……ただそれだけだろう?」


 赤い髪の少年は、そう言ってカイの頭にかかと落としをした。


「やめろ!

 その子は、女の子だろ?」


 俺は、そう言って赤い髪の少年に向かって石を投げる。

 石は少年に命中した。

 すると少年は俺の方を睨む。


「何をする?

 お前の命は助けてやろうと思ったのだが……?」


「いいから、ソラの姉さんを離せ!」


 俺は、再び赤い髪の少年に石を投げる。

 石を片手で受け止める。

 すると少年は小さく笑うと石を俺の方に投げ返した。

 俺は、その石を避けた。

 すると石が地面にめり込んだ。


「凄い……」


「何が凄いんだ?」


 赤い髪の少年は、そう言ってゆっくりとドラゴンの背中から地面へと飛び降りた。


「リクを離して!」


 ソラが、そう言って雷の魔法を赤い髪の少年に放つ。


「遅いな……」


 赤い髪の少年は、そう言ってソラに向かって剣の刃を向けた。

 そして、俺の方を見て言葉を続ける。


「なぁ、アンタ。

 取引きをしないか?」


「取引き?」


「ああ。

 この女をこっちに引き渡してくれるのならお前の命とそこのガキどもの命は助けてやる。

 だが、断るのならお前もそこのガキたちも殺す。

 まぁ、ドラゴンの飯くらいにはなるだろう」


「ソラをどうするつもりだ!」


「まぁ、兵士たちの奴隷だな。

 女の奴隷ってどうなるかわかるか?

 兵士たちの慰み者になることもある。

 慰み者ってわかるか?兵士たちにセッ――」


 赤い髪の少年が、そこまで言い切った時、俺はそいつに石を投げた。


「うるさい黙れ!」


 俺の怒りが頂点に達した。


「ドラゴンが怖くないのか?」


 石にあたった赤い髪の少年の顔は怒りに満ちていた。


「ドラゴンなんて怖くないさ!」


 俺は、そう言ってドラゴンと赤い髪の少年を睨み返した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る