第1113話 お地蔵様と愛

「いやーできちゃったよ」

「やってみるものね」

「……しかも聞いてよ、レベルメーカーのおかげかそれとも他のスキルのおかげかわかんないけど、スキルの掛け合わせ効果でザ・クリエイトでも神具級が作れるっぽい」

「つまりもう有夢は何かを手作りする必要ないのね……」

「愛を込めたい時は手作りするよー」



 まあ、でも美花の言う通り、いちいち伝説級の素材を作り出してそれを組み合わせて神具級にするっていう手間は要らなくなった。 

 あ、そういえばザ・クリエイトの効果に自分が欲しいって思い浮かべたものをほぼ忠実にアイテムで再現してくれるというものもあるね。神具級のアイテムで自分の理想を現実にするなんてことができちゃうんだ。まさに神様の領域だね。いまなら銀河系だって自力で、一日で作れる気がする。



「それでどうするの? もうあのお地蔵さん作っちゃえばここから出られるわよね?」

「うん、でられるね、確実に」

「ところで今更なんだけど、なんであの装置って幻転地蔵の姿してるのかしら? あれってがむしゃらに作ったらああなったんでしょ?」

「ああー、たぶん無我夢中で、しかも手作りで作ったから擬似的にザ・クリエイトみたいなことができたんじゃないかな? そんでもってアナザレベルは俺たちに自分が幻転地蔵だって、最初はそう自己紹介したわけだから、幻転地蔵イコール異世界へ移動するっていうイメージが俺の中に刷り込まれてたんだと思う」

「なるほどねー、私もその説を推すわ」

「てなわけで、あのお地蔵様作っちゃおうね」



 イメージはあのお地蔵様。オーダーはこの世界とアナズム、地球をつなぐこと。それぞれイメージをしてザ・クリエイトに神具級のアイテムを作らせる。

 出てきたのはもちろん、幻転地蔵のようなワープ装置。見た目で違うところは、地球のにもアナズムのにもあまりない。でも、その内蔵されている効果は結構違う。



「思えば長かったわね、二ヶ月。ふふふ、大変なことたくさんあったけど、思えば、ここに居た時間の八割は有夢とイチャイチャラブラブしてたよね」

「アナズムでもしなかったプレイとかたくさんしたねー」

「……ちょっと名残惜しくなってきた。最後に盛大にシてから帰る?」

「大丈夫、実は全部の世界に行き来できるように作ったから。またいつでもここに来れるよ」



 プライベートルームならず、プライベートワールド。結果的に俺たちが自由に使えるようにしちゃったんだから、これから好き勝手してもいいよね? ……なんか、ここにいるとシヴァにも覗かれない気がするし。いくら相手が神様とはいえ、覗かれてるかも……なんて考えながら美花とイチャつくのは結構ストレスが溜まってたんだよねー。かと言って美花とイチャつくのやめられないし、止まらないし。



「それなら焦らなくてもいっか。……ここは実質私たちの世界だから、私たちが名前つけちゃおうよ、アユミカの愛の世界とかっ!」

「いや、SSSランクの魔物がたくさん居てダンジョン以上にレベル上げができて……そう、まるでレベルを自分って作ってるかのような感覚になったから、あのスキルにちなんでLevelmakerの世界にしよう!」

「むぅ、有夢がそういうのならそれでいいよ。じゃあ、この世界は今日からLevelmakerで。ゲームも大好きだもんね」

「まあ、美花の方が上だけど。アユミカの世界よりはいいかなって……」

「私のこと好きで居てくれるなら問題ないの!」



 美花はそう言ってにっこり笑いながら俺をぎゅっと抱きしめた。 

 ……この二ヶ月、ほんと、ずっと一緒に苦労を重ねてきた。まさかサバイバルを二人でするなんて思っても見なかったからね。

 元はと言えば、愛を形にした指輪と赤い糸を美花に渡さなければ、美花もこの世界に来ることはなかったんだ。そしてあのゴブリンに性的に嬲られそうになることもなかった。

 美花は文句なんて一言も言わずに、ずっと俺を支えてくれた。一緒に家を作ったり、道具を作ったり、裸になって真水で身体を洗いあったり、必死に手分けして食べ物を探したり、死んだり、死なれたり、そのことを嘆いたり……。美花がいなかったら、俺は今頃、あのアナザレベルの思惑通り廃人になってしまったと思う。

 俺は美花を強く抱きしめ返した。



「わわ、そんな力込めて……どしたの?」

「美花ぁ……大好きっ……!」

「もー、そんなに甘えて! 私も大好きだよ!」

「ありがとう。美花が居なかったら俺……俺、ダメだったかもしんない……。そしてごめんね、巻き込んで」

「今更だよ。私と有夢は一心同体! そうでしょ? むしろ有夢のこと大好きな私からしてみれば、一人でどこか行かれるより、一緒の方がよっぽど良かった」

「えへ、えへへ……えへへへー」

「えへへー」



 俺らしからぬ精神的に弱った姿を見せた。でも美花だからいいの。それで。俺は美花に手を握るようにねだり、恋人つなぎをしてもらった。そしてそのまま、やっと、お地蔵様の頭に触れる。

 もしかしたら移動するのにタイムラグが発生するかもしれない。まあでもそれはアナズムと地球でも一緒。俺が地球に帰ってこれるようになったら地球の過去が変わってたわけだし。そんな感じのやつが。

 ともかく、お地蔵様は俺が設定した通りの動きをみせ、そして、俺たちは目の前が真っ白になった。









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ついにLevelmakerの世界脱出!

それはそうと、私の最新作、『題名のない魔王』是非ご覧くださいね! いま毎日投稿してるので!

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