第1101話 生きていくために

 それから2時間くらい、美花と相談を重ねてSSランクのスキルを一つ、星五つのスキルを一つ作り上げた。SSランクの方は「厄災の超重力」という。美花の勘を頼りに念術から重力魔法なるものを完成させ、それを基準にして作った魔法。重力魔法使いだなんて、大臣さんみたいだね。主に相手を拘束するのに使おうと思う。

 次に念術を基本にして作ったスキルを、何個も何個も、残りの魔核とスキルポイントを失くすつもりで何十回も合成させて作成した星五つの「念力の仙神」。いわゆる翔の「炎神」とか俺が持ってた「雷の鬼神」のような属性超強化スキルだね。

 スキルポイントや魔核を使い切るつもりで作っただけ合って、本当にどちらもすっからかんになってしまった。



「……さて、と。じゃあこれから転生でもしようかな」

「もう転生するの? あの日みたいに、魔物を瀕死にして私に倒させてレベル上げて……からの方がいいんじゃない?」

「相手がSSSランクの魔物だからそんな手加減できないんだよね。だから先に俺が転生を繰り返して、ステータス安定させちゃった方がいいんだよ」

「なるほどねー! じゃあその通りにしよ!」

「てな訳で、転生してから魔物探しにしゅっぱーつ!」



 俺は久しぶりに転生をした。体の力が一気に抜ける。たしかにちゃんとステータスが安定するまでは転生するたびに力抜けてたっけ。

 最初に倒す魔物は、一番はじめに出会ったあの、虹帝犬の最終進化したやつにしようと思う。大体の縄張りの場所がわかってるから遭遇しやすい。道中、見つけた薬草や色の強い植物は全部拾っておいた。あとで使うからね。

 しばらく歩いてさっそくあの犬さんの近くまで来る。まあ、ここまでだいぶ歩いたけど、いつか一瞬で移動できるようになるんだ。しばらく我慢しようね。

 こちらが大探知で犬の場所が判明させた瞬間、相手もこちらを捉えたようで急接近してきた。透明になってるらしいから目には見えないけどね。俺は目をつぶって探知で位置を確認しながらここぞってタイミングで『厄災の超重力』を使った。……犬の動きがゆっくりになる。ちょっと賭けだったけど、うまくいった。

 でも相手は動きが鈍くなったからといって諦める気はないらしく、魔法を使って反撃しようとしているみたい。魔力の放出が増えたからわかる。それならさっさと倒さなくちゃね。

 この犬の魔物はたしか、色神犬と言うんだっけ。本か何かで見かけたからちょっとだけ覚えてる。たしか前段階のSSランク、透皇犬の能力のおかげで透明になることができる。ただ、実態はあるためこちらが透視を使えば、内臓などだけ浮かしてみることができるんだよね。現に今、俺はそれを利用したんだ。

 色神犬の内臓や血管だけが透けてみえる。そして重力で動きをゆっくりにしてあげたまま……脳みそを念術でこねくり回してあげた。発動しようとしていた魔法が撃たれる前に、色神犬が倒れ、姿があらわになる。魔核も一個、お腹あたりから出てきた。これで本日、二匹目のSSSランク討伐だ。体がまたまたあつくなる。



「ふぃー、終わったー」

「さすが有夢!」

「えへへ……って、うわぁ!?」

「……?」



 つい、透視を使ったまま美花の方を振り向いてしまった。布が透けるなんて上手いことあるわけなく、犬と同じように脳みそと血管がみえる。グロい。すぐに解除した。美花はかわいい。

 それからSSSランクの魔核を回収し、ステータスだけ割り振ることにした。今回は素早さと魔力に半分ずつ割り当てた。これで行き来が今後楽になるはずだ。

 んでもって、美花をおんぶし、空気圧にやられないよう念術の膜で保護しながら高速で拠点へと戻った。



「すごいね、どんどん便利になってくね! あの苦労した二週間はなんだったんだろ。まだゴブリン倒してから4~5時間な訳でしょ?」

「まあまあ、あの苦労したサバイバル生活も、もう少し時間が過ぎればいい思い出になりそうじゃない?」

「ふふん! たしかに!」



 つぎのスキルポイントと魔核の使い道は決まっている。

 まず、俺はそこらへんにある太い木を一本、魔法の剣を使って切り、それをそのまま創作王の感覚に任せて加工していく。魔法の剣の切れ味がいいのも手伝って、ものの数分でA4サイズの板数枚、ペンのような細い棒、すり鉢、すりこぎ等々が出来上がる。

 準備ができたら本番だ。薬草をすり鉢とすりこぎでスリスリし、ポーションのもとを作る。出来たポーションのもとを、作った濾し器で濾してから木の器に注ぐとポーションが完成。それと同時に「調薬」のスキルを手に入れた。

 その次にポーションを作ってる間に美花が別のすり鉢をつかって作ってくれた色素が強い植物による天然のインクと、A4サイズの板、ペンを使ってお絵かきをする。とりあえず美花をモデルに描いてみた。……うーーん、下手じゃないけど本人の方が百億倍は可愛い。そんなことを板5枚分繰り返すと、ついに「美術」のスキルも入手できた。

 「調薬」と「美術」をそれぞれ「真・調薬」「真・美術」にし、採取王、創作王、鑑定王、真・料理、真・建築と特殊合成。そして出来上がったのが……俺の相棒とも言えるスキル。「アイテムマスター」だ。おかえり、アイテムマスター。

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