第1067話 闘いの跡
「ハァハァ……ヒャハ……」
「いいですですですですですですねっ! もっと、もっともっも踊りませう! 踊りませう!」
ラハンドさんと殺人鬼の戦いは、ラハンドさんがなんとか食い下がってる状況だ。ゴッグさんとマーゴさんも途中から本格的に一緒に戦ってるけれどあまり戦況は変わらない。いや、その三人だけじゃなく他の冒険者も何人もすでに参加してるんだ。大臣さんとか騎士団長さんとかだって。なのにあの殺人鬼は倒れない。倒せない。とんでもない化け物だ。
かと言って俺とカナタと国王様は、アムリタをかけてから大人しくなった光夫さんとヘレルさんから目を離す訳にはいかない。それにそれぞれ別れていった、ショーやヘレルさんやギルマーズさんのことが気になる。あの能力が一番厄介だと言っても過言ではなかった邪竜の相手をしているガバイナさん、そのガバイナさんをどうしても助けに行くんだと突入していったローズ、あとあの邪竜に仕返しがしたいファフニールの三人もかなり心配だ。それだけ揃っても勝てるとは限らない相手だからなぁ……。
そう考えていたら、国王様が何かに反応を示した。誰か進展があったのだろうか。
「……! アリム、どうやら一人、戦いが終わったようだぞ。メッセージが届いた」
「ほんとですか!」
「ああ、ギルマーズだ。あのアリムによく似た魔物を封印したらしい。もう、この城の門の前まで来ていると……」
「ただいま~」
「今来たな」
おー、ギルマーズさんは無事だった! しかもあのイルメを相手にして大した怪我もしていないっぽい。あの人、どんな強さ持ってるかは知らないけど、とにかく強かったみたいだ。俺とカナタだけじゃ勝てるかどうかわからない相手だったのに。
……でも、今この城の玄関は殺人鬼とラハンド達による戦場と化してる。戦い終わったあとで疲れているであろうギルマーズさん、無事にそこを通り抜けてこれるかしらん。一応、俺はカナタにいつでもギルマーズさんを助けられるように言っておいた。
「おお、ラハンド! よくそいつ相手に持ちこたえてるなぁ。みんなも頑張ってる」
「ギルマーズさん! あのアリムの偽物に勝ったんすか!」
「ああ。まあまあ強かったよ」
「……イルメがめがめがめがやられたれた!? 武神……武神! 私が倒してあげあげあげ!」
「ん、なんだ。俺に標的を変えたのかこの狂人は」
殺人鬼がギルマーズさんに標的を定めた。しかしあの人は特にあわてる様子もなくその場に佇んでいる。殺人鬼は飛びかかった。ギルマーズさんは剣を抜き、俺の素早さでやっと捉えられるような速さでそれを振る。空中で一定時間静止した殺人鬼は、やがてその場で墜落した。
「……ぅご、うごうごううご、身体が、カラダが! 動かないナイナイナイナイッッ……!?」
「これでこいつ、倒したことになるんだよな?」
「なに、ナニをシッ……ナニをしたぶじぶじぶじ……」
「アンタの体質は有名だからな。ま、身体の一部を刺激して痛覚を感じさせなくなったあと、動けなくなるように関節やらなんやらを切り刻んだだけだぜ」
つまりツボを刺激して痛覚遮断。痛覚がなくなればあの人は回復がしにくくなるからそこで動けなくなるような箇所を斬る。それを一瞬でやってのけたのかあの人……。イルメの攻撃も回避したりしてたし、やっぱ俺なんかよりよっぽど強いんじゃ……。
「どれ、あと残ってるのは何人だ?」
「ここはあとガバイナの奴が……」
「あー、あの厄介なのと戦ってるのか。……ん、なんだ?」
急にお外が昼間のように明るくなった。みんなそっちの方向を向く。なんと、太陽が何十個にも増えてるじゃないか。それと同時にリルちゃんが嬉しそうに声を上げる。
「わふー、これ、ショーの魔法だよ!」
「ああ、ショーの。ってことはショー、大技を使わなきゃいけない状況になってるんじゃ……」
「……!? や、やっぱり助けにいくよ! カナタくん、お願い!」
リルちゃんがとても慌てた様子でカナタのもとに駆け寄ってそう言った。でも、それなら尚更リルちゃんを送ったら危ない気がする。そもそもあのショーの大技の巻き添えを食らっちゃうだろうし。勝つことを信じて連絡を待つのが最善じゃないかな……。俺だっていますぐ向かいたい気持ちだけど……。
みんなが外に注目してる中、ガチャリ、と、扉を開く音が響いた。どの扉かは一目瞭然。ガバイナさん達が入っていったマジックルームのものだった。中から出てきたのは、ガバイナさん、ローズ、ファフニール。全員無事だ。
「ガバイナ……! 勝ったんだナァ!?」
「ああ……ローズ達のおかげだ。なんとか勝てた」
「よくやったじゃねーかガバイナ」
「ギルマーズさん……。ありがとうございます」
すごい、本当にガバイナさんたちであのカオスブラックドラゴンを倒したんだ! ……となると、あとは本当に目の前のヘレルさんと光夫さん、ウルトさんが戦ってるヒュドルって人、ショーが戦ってる幻転丸ってお侍だけになるのか! これはとっても優勢に進んでる気がするよ!
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