第1048話 VS. 4
「む、もしかしてあれはアリム達がやったのか?」
「はい、そですよ」
そばにいた国王様が殺人鬼の方を指差してそういった。殺人鬼は痛みでいまだに絶叫を続けている。
「すばすばすばすばすばらしいっ!! ほんものののほんものの痛み、痛みというのは久しぶりですですですですですです!」
前言撤回、嬉しそうにしている。対峙していたラハンドさんも困惑してるようだ。なんで相手が嬉しそうにしているかはわからないけど、それ以外のことに関してはメッセージ使って状況説明しなきゃ。
【ラハンドさん、一応こっちから特殊な攻撃仕掛けてみたんですけど、お邪魔でしたか?】
【ああ、そうだったのか。突然弾けちまったからビックリしたぜ。……効いてはいたようだが、無意味だったみてぇだぜ?】
ラハンドさんのいう通り、アムリタがかかって破裂した殺人鬼の身体はなぜかだんだん回復していく。これじゃあ本当に封印するしか倒す方法ないじゃないか。
「アリム達、あの敵がどんなスキルを持っているかはすでに知っているだろうが、あんな狂った口調をしておきながら実は中々のキレ者なのだ。回復魔法をかけられるのが自身の弱点だと把握している。故にタイミングよくスキルのオンオフを切り替えられるのだ」
「でも不意打ちですから、ボク達の攻撃は成功したってことになりますよね? なんでまた回復してるんでしょうか」
「わかったよに……姉ちゃん。あいつ、体が破裂した痛みを反転して回復に利用してるんだ」
「うへぇ……」
いや、たしかにスキルは使いこなしてナンボだけどさ。敵が使いこなしてても嬉しいことは何もないよ。ラハンドさんに加勢した方がいいのかな。光夫さんとヘレルさんも動きを止めてから数十秒経ったんだけど……。
「みてアリム、あの二人に動きがあったよ」
「ほんと!?」
ミカのいう通りゆーっくり動いてる。アムリタがかかってから項垂れていた頭を上げようとしている感じだ。とくに光夫さんもといメフィストファレスの方はいつも笑ってるのに今は笑っていない。
二人とも顔を上げ切ると、やっと普通のスピードで首や肩を鳴らすように回し始めた。
「はぁぁ……いい感じに回復しましたねぇ、ヘレルさぁん」
「……ああ。そうだな」
「なに、俺たち負傷した箇所なんてないのに回復薬投与されるなんて思ってもみませんでしたよぉ」
げげ、向こうも洗脳解けてないみたい。今の一連の行動は全部無駄だったってわけか。強いて言うなら今まで喋ってなかったヘレルさんが喋るようになったくらいしか成果がないぞ。
「作戦失敗かぁ」
「どうする? もう直接ヘレルさんと光夫さん倒しにいく?」
「……もうそうするしかないんじゃないかな」
せめて他の人たちとの対峙を邪魔しないようにしなきゃ。よし、ここはヘレルさんはカナタに、光夫さんは俺で担当しよう。
「カナタ、ヘレルさんをお願い。俺は光夫さんをやるよ」
「え、私たち置いてくの?」
「時間停止は便利だからね、ミカとサクラちゃんはリルちゃんと合流して三人で全体を見張りながらタイマンしてる誰かが負けそうになったら手助けしてあげてよ」
「わかった」
「……アリムよ、私達セインフォースはどうすれば良い?」
「この隙にまたあの軍団が襲ってくるかもしれないので、見張りを! ファフニールだけはいつでもガバイナさんの援護をできるようにあのマジックルームの外で待機させてください」
「了解した。この調子なら……ラーマ国王も誘った方が良さそうだな」
二つの国の王様が見張りなんて、なんて豪勢なんでしょう。でもそれも立派な仕事だよね。……さてと。じゃあ俺は宣言した通り、ウルトさんやギルマーズさんと同じように光夫さんと一対一のタイマンをすることにしよう。タイマンなんて男らしい言葉、俺には似合わない気がするんだけど。
「よっと……やい、メフィストファレス!」
「おやぁ、これはこれはアリム・ナリウェイさんではありませんかぁ」
「……周りを見てわかる通り、今、一対一でやってきた敵と対峙してるんだ。だからメフィストファレスはボクと戦ってよ」
「直接のご指名、嬉しいですねぇ!」
「なんやかんやたくさん因縁があるからね」
「なるほど、良いでしょう」
さて、さっきヒュドルって人がウルトさんと戦う前に神様の力を得ているとかなんとか言ってたし、メフィストファレスに関してもそうだと考えた方がいい。サマイエイルを吸収した状態と同じくらいだって仮定した方がいいのかな。
……だとしたらステータスカンストした今の俺じゃ楽に勝てるのかも。いや、まてよ。あの時はサマイエイルを吸収したことによって身体自体を煙状態にすることができなくなっていたから、煙になることができる上でサマイエイル吸収状態と同じだとすると……ええい、難しいことを考えるのはやめよう。戦ってる最中に元の光夫さんに戻せればいいんだ。
「あの、アリムさん? なんか色々考えているようですが、準備はよろしいですか?」
「う、うん。いつでも来て!」
「では……」
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