閑話 ショーが冷静を努める話

 

もしかしたら年齢を制限した方がいいかもです。話ごとに年齢制限できるようになったら便利そうですよね。


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リルは昨日寝る前に、「もしかしたら明日来るかもしれない」と言っていた。その時はなんのことかわからなかったが、今朝になってやっとわかった。やってきたんだ、あの時期が。



「わふぇ、ショー……!」

「お、おう」

「わふわふわふ」



 いつも通りまるで飼われている仔犬のように甘えてくるリル。しかし格好がいつもと違った。下着しかつけていねーんだ。……全裸だとかよりはマシだが。

 リルは椅子に座っている状態の俺の前から覆いかぶさるように抱きついてきた。



「わふー」

「昨晩言ってたのってこのことだったんだな」

「そうだよ」

「普通の犬より時期が早くねーか? 一年に二回、六ヶ月から八ヶ月に一回が普通だって聞いたことあるぜ?」

「私は狼……はさておき、獣人って言ってもどちらかというと人間の方が近いしね。元の動物とはだいぶ違うんじゃないかな」

「まじか」

「それにね……」



 リルは抱きついたまま初めて聞く獣人の特性について話し始めた。基本的に獣人の発情期というのは抑えることができるが、後になって倍ぐらいになって皺寄せが来るらしい。本来なら今の叶君ぐらいの年齢が初めて発症するが、リルのその時期はまだ……色々あった頃だからそんな暇がなかった。つまりおよそ二年分が皺寄せしてきているわけだ。

 ……本当なのかどうかは置いておくぜ。



「それにしても、わふわふ、私には発散できる相手が居て良かったよ」

「まあな」

「ごめんね……今の年齢の倍ぐらいになるまでこれが続くんだよ。再来年あたりからはこんな頻繁じゃないけどね」

「俺なら幾らでも付き合ってやるぜ。満更でもないしな」

「わふふ、今の私はナイスバデーだからね!」



 桃色に染まった頬を気にすることなくリルはドヤ顔でそう言った。実際努力しているだけあって胸は大きく、身体は完璧と言わざるをえないほど引き締まっている。本当に頑張ってるからな、本人曰く俺のために。いやー、照れるぜ。

 今はこうして俺は冷静だが、このままなめまかしい視線を向けられ、布一枚しかない状態で抱かれ続ければ理性を失うのも時間の問題だろう。別に理性を失ったって問題はないんだが、実はひっそりとどこまで耐えられるか楽しんでいたりする。

 そうだ、冷静だからこそ気がついたが、ふつうに下着を着て抱きつくだけでとどめてる分だけ前回よりおとなしい気がする。なにかリルの中で変化でもあったんだろうか。



「なあ、リル」

「わふ! ショーも脱いでくれる気になったかい? 早くその芸術品みたいな筋肉が見たいよ!」

「あ、少し待ってろ……よし。でよ、リル、質問が……」

「わふわふわふはぁはぁはぁわふわふはぁはぁはぁ」

「おい、落ち着け……」



 しまったな、先に筋肉を見せるべきじゃなかったか。リルの身体的コミュニケーションがより激しくなった。俺もリルのお願いを聞いて上に着ていたもんは全て脱いじまったから一気に危ない状況になった。

 しかしまだ俺は平静を保っている。その理由は明確だ。リルの故郷に行った日から俺達は頻度を倍以上に増やしたからだ。なんのとは言わないが……そのせいだろう。とにかく数ヶ月前の俺だったらすでにアウトだ。



「わふ……わふ……」

「落ち着いたか?」

「無理だよ……わふわふわふわふ」

「そうか。ところでリル、なんか色々前回より大人しめな気がするんだが、なんかあったか?」

「わふぇ、今のこの私を見てそう言えるのかい? わふわふわふ」

「それでも酷い時よりはマシなんだぜ。下着着てる分だけ」

「はぁ……はぁ……たしかにそうかもね。たぶん、ショーが毎晩のように相手してくれるからだよ」



 つまり俺がこうしてクールにいられるのと同じ理由ってことか。慣れって大事だし凄いもんだな。そう考えると俺とリルの関係もワンステップ先に進んだと言えるかもしれない。より親密な関係になったというか。



「慣れ、わふー、慣れがあるから今日はショーがなかなか手出ししてくれないんだね……!」

「ああ、慣れがあるからリルも前より大人しめなんだろ。いいことじゃないか」

「私にとっては良くないよ。……脱げばいいんだね?」



 そう言ってリルは最後の砦も飛び越えた。

 流石の俺もそこから先は慣れとかは関係なかったようだ。



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「っていうことが昨日あったんだよ」

「相変わらずラブラブだね」

「お前らには言われたくねーがな」



 屋敷の廊下を歩いていたら、酷く疲れた顔をしていたらしく通りすがった有夢に心配されちまった。んで、こうして大体のことを話したわけだ。有夢も相方(ミカ)と同じようなことをしているからな、めちゃくちゃ理解してくれているみたいだぜ。



「じゃあリルちゃんも今日は疲れてる感じ?」

「それどころかまだなにも着ないで眠ってるな」

「体力がある二人にしては珍しいね」

「まあ、いました話は昨日の朝の七時くらいの話だからな」

「……それからずっといちゃついてたの?」

「ああ、深夜までな」

「ひぇ……」



 有夢が引いた。有夢が引くなんてめずらしいな。例え異常なことでも大抵はニコニコ笑って頷きながら話を聞いてくれるんだがな。それがモテる理由の一つでもあるんじゃねーかな。その上、自身にも該当することのはずだが……。



「あの、一つ言わせてよ」

「なんだ?」

「そんなんで、ショーのどこが冷静でクールだったのさ」

「……いやぁ、お前らも似たようなもんだろ」

「……まぁ……そうだけど」

「側から見たら俺もお前も同じだ」

「……そうだね!」



 お互い、これでいいのかはさて置いてな。




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リクエストでした!

リルは脱ぎ役(恒例)(いつもの)(定期)

……あれ、もしかしてリル主観でショーに甘える方でしたかね?

それならまたしばらくして閑話で書きましょうかね。

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