第950話 事態の氾濫
お屋敷に帰ってきた。俺が帰ってきたことを察知したのか、ミカがお出迎えしてくれている。どうやら魔神への質問もある程度は済んだみたいだ。
「何があったの?」
「なんかウルトさんが英雄って呼ばれるきっかけになった元SSSランカーの犯罪者が脱獄したって」
「ええっ……うわぁ」
ミカの口から漏れたその言葉は、驚きというよりめんどくさいって感じだった。気持ちはすごくわかる。
「絶対に不可能な状況から今日いきなり出てきて、しかも脱獄してからすぐに一瞬でどこかに消えたんだってさ」
「それってどう考えても……」
「うん、サムライも瞬間移動したし確実に神さまが関わってるよね」
ここまでくると、アナザレベルって神さまは何かを目的として戦うメンバーを集めてると考えたほうがいい。それもサムライがショーや俺を狙って攻撃してきたことから標的は俺たちだ。まあ、俺たちを狙って攻撃してくるのは今に始まったことじゃないけど。
「じゃあそのうち戦うことになるかもしれないってこと?」
「もしかしたらね。だからSSSランクの魔物を発見してくれるあの装置に、SSSランクの人間の情報もうつるように後でするつもり」
「そうね、どこで出てくるかわかんないんだもんね。それもこのアナズム中の」
こうなったら気が気でないよ。SSSランクの魔物より人の方がよっぽど始末が悪い。
「そうだ、あのサムライの持ってるスキルだとか教えなきゃね」
「うん、教えて」
ミカはメモを見せてくれた。あのサムライは剣と槍と弓と体術は神奥義まで育てているらしく、それに加えショーに向かって言っていた通りスキルなしでの鍛錬もし続けたため同様のスキルを所持してる人より圧倒的に強い。
さらに賢者だからカナタやショーと同じ称号を持っており、レベルもステータスもかなり高い。『抜刀』に関するスキルを持っているらしく、そのスキルで自分よりステータスが上のショーの腕を切りとったっていうのがサマイエイルの見解らしい。またシヴァ曰く、一通りの魔法もちゃんと使えるみたい。特に火属性と風属性は補正がかかる星五つのスキルを所持してる可能性が高いんだって。
「うー、強そう……」
「そうね、強そうね」
「特に自己鍛錬っていうのが気になるよ。そんなの、ステータスなしで達人の域に達してる項目があるのなんて、この屋敷内じゃショーとそのご両親だけじゃないか」
つまり下手したらあのサムライはショーか親父さんくらいしか相手できないんじゃないかな。わからないけどね、カナタが瞬間起動使って一瞬で制圧しちゃうかもしれないし。とりあえず俺が物作ったり魔法撃ったりしてるだけじゃ勝てなさそうだ。
……レベルを上げれば無敵ってわけじゃないゲームもたくさんあるけれど、それが現実だとここまで怖いとは。どれだけ強くなっても心が休まらないっていうのはかなりの苦痛だよ。
「はぁ……」
「ね、なんだか本当に大変なことなっちゃったね」
「ミカの勘のお陰で心の準備だけはできてたからね、それだけがほんと救いだよ。前情報がなかったら今頃もっとあたふたしてた」
「褒めてもいいのよ?」
「よしよし」
でもこれは冗談じゃなくて本当のことだ。もし心の準備ができてなかったら次々と出てくる厄介ごとに、今頃バテてたかもしれない。重傷を負うのだってカナタやショーだけじゃ済まなかったと思う。
「でももっと大変なのはこれからよね」
「……うん」
「今日はこれで終わりっだって保証すらないし。一息ついてからその新機能を追加しよ」
ミカの言う通り、ちょっと一息ついてから新たな対策をとることにした。
ちなみにミカから聞いた話ではお父さん達も各々で何か考えておいてくれるらしい。科学者兼発明家であるお父さんや商売がダントツでうまいミカのおじさんはいいことを思いついてくれることを期待してる。あと、俺ばっかりが背負いこんでる風になってしまってるのも謝ってたとのこと。このアナズムに呼んだのは俺だから、本来ならお父さん達は悩んだらしなくていいのにね。申し訳なくなってくるよ。
そうこうして作業をしているうちに、何事もなく夜になってしまった。どうやら凶悪犯の脱獄までが起こるべく大きな出来事だったみたいだ。夜になったらなんとなく安心できる。いままでのSSSランクの魔物も現れたのは昼間だったしね。気休めでしかないけど。
「あゆむ、疲れたでしょ?」
「うん」
「だって地球で負うような悩みとは段違いだものね。受験や試験なんかが可愛く見える」
「ほんとそうだよ!」
そもそも、俺がアナズムにやってきてから行動してきたことって正しかったのだろうか。なにか、俺が原因でアナザレベルって神様が動き出したとかそう言う理由があるような気がしてならない。いや、根拠はないし全くもって悪いことをしたような覚えはないけどね。
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これ、1000話で終わると思います? なんか終わらない気がしてきました。ま、いつものことですね。
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