第945話 サムライ (翔)
おかしい。そろそろ叶君が連絡してきて瞬間移動で屋敷まで帰してくれてもいい時間なんだが。手こずってるのか? いや、俺と有夢と叶君の三人の中じゃ俺が一番スキルは弱いし、それはないとは思うんだがな。 一応リルにでもメッセージを送って現状を確認してみるか。
【おい、リル】
【わ……わふぇ!?】
メッセージ越しで驚いたような声が聞こえる。俺の様子を見てりゃ、帰れなくて困ってるのはわかるはずだが、別のことに集中してたのか? とりあえず聞くこときいちまおうか。
【今、叶君の方で何が起こってる?】
【わふぇ……大苦戦してるよ。あゆちゃんの方に現れた魔物が何故かカナタ君の方にも現れて……あああっ!?】
【どうした!?】
リルにしては珍しい愕然としたような反応だ。つまりほぼ確実に叶君に何かがあったことは間違いない。そもそも有夢の方に現れた魔物が叶君のところに現れる時点でやばいだろ。確か今日の有夢と叶君の戦っている場所は相当離れていたはずだ。
【わ、わふぇ……か、か、か、カナタ君がぁ……】
【どうかしたのか!?】
【し、死ん……】
【嘘だろッ!?】
試しに叶君に俺からメッセージを送ろうとしたが、反応がないどころか送ることすらできない。どうやらリルの言う通りみてーだ。……叶君が殺された? いや、あの子のIQは222もある。天才な上に瞬間移動なんて強力なスキルをもった叶君が負けるだなんて有り得るか? 魔神に取り憑かれてた俺に対して一人で戦って有夢が援軍に来るまでなんともなかったんだぞ?
いや、でも確か不意打ちには弱いんだったな。まさかその弱点を突かれたのか? ……地球とは違うんだ、俺たちには有夢のアムリタがある。死んだこと自体は大きな問題にならねーと思うが、桜ちゃんは相当取り乱すだろうな。
叶君がやられるくらいなんだ、すぐに駆けつけるだろう有夢も苦戦するに違いない。俺は有夢みたいにアイテムでガッチガチにドーピングしてるわけじゃねーから素早く現場に到着はできねーと思うが、援助しに行くか。
俺はトズマホで叶君の場所を確認しながら、ステータスと炎のスキルをフル活用してあの子が戦っていた場所まで急いだ。距離が現場まであと半分ぐらいのところでリルから連絡が入る。
【わふぇ、ショー、あゆちゃんが叶君を助け出したよ! これから生き返らせるんだ】
【そっか、良かった……。じゃあ有夢がその魔物を倒したのか?】
【わふん……ううん、どうやらあの魔物はカナタ君のスキルを真似して瞬間移動でどっか行っちゃったみたいなんだ】
スキルを真似するだと? そうか、それならある程度納得はいく。まず有夢と相対してアイテムマスターを真似すれば移動も自由自在だろうし、不意打ちだってやり放題だ。透明になったりできるからな。ステータス関係なくダメージを与えられるアイテムだってあるだろうし。
しかし、叶君の瞬間移動スキルに有夢のアイテムマスターを兼ね備えた魔物か……。とんでもない強敵だ。やっぱ、SSSランクの中でも別格のやつは半端ないな。
とりあえず、叶君が生き返るなら本当に良かった。俺はひとまずこの森の中で待機して帰してもらえるのを待とう。そのあとで有夢のアイテムやらでその魔物を見つけ出して仇討ちだな。野放しには絶対にできねー。
「お主、少々良いでござるか?」
そこらへんの木に腰をかけたところで、突然声をかけられた。ござる……だなんて口調はアナズムでは初めてきいたな。いや、地球でもほとんどねーよ、そんなの。イケザンの奴ぐらいだ、そんなこと言うの。
俺はその声がして方を振り向いた。そこにはゾンビみたいな青白い顔をした口調通りのサムライがその場に立っていた。年齢は20代後半から30と言ったところか。存在自体がおかしいとしか言いようがないぜこりゃー。
「は、はぁ、なんですか?」
「いや、何。人と道を尋ねたいのでござるが」
「もしかして迷ったとか」
「そう、そんなところでござるよ」
姿や口調もおかしいが、こんな森の中に人がいること自体おかしい。なんだろうか、注意した方がいい、そんな気がする。
「どこに行って誰に会いたいんですか?」
「ああ、メフィラド王国のメフィラド城、城下町というところでござるよ。そこでとんでもない美貌を誇るというアリムという少女を一目見たいのでござる」
サムライは腰にぶら下げている刀に手をかけた。眼光は俺のことを鋭く捉えている。……凄まじい殺気だ。
「……それは、俺がアリムの関係者だと知って声をかけたのか?」
「無論でござろう」
「そうか」
俺は腰をあげる。何者かは知らねーけどやろうってならやってやろうじゃねーか。この状況……どう考えても敵だろうしな。
「あいにくだが、俺はあいつの大親友でな。不審者を合わせるわけにはいかねーんだよ」
「そうでござろうな。拙者が同じ立場でもお主と同じことを言ったでござろう。……しかし、それとは別にお主を亡き者にせよと拙者の思考が巡るのでござる」
「……ッ!!」
「切り捨て御免」
いつ刀を抜いたのか、むしろ今は刀を鞘にしまう動作を謎のサムライは行なっていた。身体のバランスが崩れる。赤い血しぶきが見えたことにより、やっと、俺は自分の左腕が肩から切り離されていることに気がついた。
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本作の書籍化本の予約受付開始して1ヶ月経ったでござる!
実際に予約していただいた報告なども多数寄せられており、感謝する他にないのでござる!
実際に出版されるまであと1ヶ月半ほど。予約された方、あるいは書店などで購入予定の方はお楽しみに! いやぁ、イラストがもう可愛くて可愛くて仕方なくてですね、著者である私は発売前に口絵や挿絵を確認できるのですが、もう見るたびにニヤけてばかりなんでござるよ。
もちろんイラストだけでなく本文も力を入れてるでござるよ!
└( 'ω')┘ムキッ
なにせ、1〜80話を1から書き直して、その上に短編も付け加えましたし、本作の弱点とも言えた誤字脱字・序盤による中終盤への矛盾点は校正していただいたことにより解消されていますからな!
(ΦωΦ)フフフ…メチャクチャガンバッタヨ
発売日近くなったらまた騒ぎ出すと思うでござるから、その時はまたよろしくたのむでござる。
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