閑話 頼まれごと (翔)

「お願いね」

「任せとけ!」



 有夢に収集され、ジャージや半裸じゃなくてまともな服に着替えてから俺とリルはあいつとミカの部屋に行った。有夢のおじさんとおばさんもいる。なんでもSSSランクの魔物の討伐をしてみたいと有夢に談判しに行ったらちょうどその魔物が現れたらしい。

 行くのは有夢達とおじさん達と俺達。叶君と桜ちゃんは瞬間移動などによるサポートをするみてーだな。



「準備はいいですよね?」

「もちろんだ」



 人里が近くない森の中に出現したっていう奴を任された。返事をすると叶君は俺とリルをその現場まで飛ばしてくれる。一瞬で家の中から森の中に景色が変わった。かなり暗い森だ。



「わーふぇ、相変わらずすごい能力」

「だな。下手したら有夢の奴より便利かもしれねーぜ」

「あゆちゃんのアイテム関連のスキルみたいに量産できればいいのに」



 たしかに全員が瞬間移動が使えためっちゃ便利だよな。ただ、あのスキルを使いこなせるのはどっちみち、叶君だけのような気がするんだよ。



「わふ、それよりまずは敵だよ。倒さないと」

「だな……探知にはうつってるな」

「わーふ、ショー……上だよ上」



 リルに促されるまま上を見た。対象がいた。

 めちゃくちゃでかい鳥、いや、鳥と言うよりは翼竜だな。プテラノドンとかそこら辺の類のものに見える。ただ大きさがマジで規格外。暗い森だと思っちまったのは、どうやらこいつの陰に居たからみたいだ。



「わっふっふ、あの時を思い出すね」

「あー、あの時な」

「今となってはあの時のフレスベルクって魔物に感謝してるんだよ」

「だな。俺もだ」



 鳥の魔物に崖から吹き飛ばされたからダンジョンでレベル上げができ、さらにリルと言う彼女ができたわけだ。あの頃は30分程度気絶していたとは言えリルから胸を押し付けられるだけでドキドキしたものだ。別に今でも興奮は覚えるが……今となっちゃ筋トレの最中できちんと服を着てくれていたなら、その筋トレに集中できるぐらいにはなったな。

 今日の兎跳びがいい例だ。およそ40分間、背中にリルの柔らかさを受けながら兎跳びをした。その上過激な動きだったため、リルの胸は背中に密接してるのにもかかわらずめっちゃ揺れた。そんな状況にもかかわらず筋トレを優先できたんだからな。

 おっと、それはともかくとりあえずは目の前の鳥をなんとかしなきゃな。



「一撃で倒すか」

「わふぇ? いいんじゃないかな」

「じゃあやるぜ。ラスト・サン」



 この魔法を唱えたのはいつぶりだろうか。あの愚かな王様に力を見せつけた時以来か? 

 俺が出現させたのは2つ目の太陽。真上にいる魔物の全身を覆うようなほどの大きさである烈火の球体だ。もうこれで決着はついた。あまりの火力で目がやられないうちに仕舞う。炎の実被害は周囲に出ないようにしたが、俺のこの魔法を直視したりするのは流石に身体にマズイからな。



「終わった」

「わーふぇ」



 超火力で消し飛ばしてやった。あの巨大はもうどこにもない。なにせ骨や羽の一本すら残さないように消しとばしたからな。 灰になることもなく、ただただ蒸発したんだ。

 ……うっ、灰でトラウマが。



「わふぇ、どうしたの?」

「いや……なんでも……」

「きゃんっ!」

「あっ」



 トラウマを回避するための行動なのかは知らんが、いつのまにか無意識にリルの胸をつかんでいた。下手したら兎跳びの件で我慢してた衝動が溜まっていたのかも……。すぐに手を離すが、リルは頬を赤く染め、すっかりその気になっている。



「し、仕方ないなー。後でやる施術にメニューを追加してあげるよ」

「そのメニューの内容ってのは……」

「い、言わなくてもわかるだろう?」

「……わかった」



 俺からやってしまった手前、今更そんなつもりはなかったとは言えない。



「ふふふ、とびきりの____」

「おっと、あぶね!」

「わふぇ?」



 リルの頭の上に塊が落ちてきたが、ぶつかる前にキャッチすることができた。その塊が何かはわかっていた。さっきの鳥の魔物の素材だ。うまい具合にクチバシの先端だけ残るように攻撃したからな。



「魔物の素材だね。こんな綺麗に先っぽだけ残ってるってことは、わざとだね」

「そうだ。素材が豊富な方が有夢は喜ぶからな」

「わふわふ、それなら早く戻ろう。お楽しみも待ってるさ」



 どうやら叶君がどこからから見ていてくれたようで、リルがそう言った後すぐに屋敷の部屋の中に戻ってこれた。そう、見ていてくれたんだ。まあ、他の2組も見てたから一部始終ってわけではないが。

 


「えーっと、すいません。監査してるといっておけばよかった」

「わ、わふぇ……」

「ま、まあ、気にすんな……な?」

「はい」



 桜ちゃんは有夢のおじさん達を見ていたようで大丈夫だったが、な。くっそ恥ずかしいぜこれは……。

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