第901話 答えを出したい
「うーーん……」
「悩み事は今たくさんあると思うけど、今はとりあえず何で悩んでるの?」
「いやね、ヘレルさんの勘って今のことだったんだよな、やっぱりって思い返してた」
「ああ、あれね。その可能性が高いわよね」
あの頃は本当に平和だったから気楽に考えてたけど、たった数ヶ月でこんなに悩む状態になるなんて思わなかった。
それに一昨日、別の神様があと二柱、あるいはどちらも同じ存在で一柱……なんにせよ何かがこの世界にいるという考えが思い浮かんだ。いや、思い浮かんだというより思い出したというべきか。
何だかそれがすごく引っかかる。
「ねぇ、ミカ」
「なぁに?」
「この異変って魔神じゃないよね、多分」
「うん」
「俺の中では答えがでかかってるんだけど……」
「わかるよ、だいたい何考えてるか」
さすがは2歳からの付き合いだ。鋭い勘もあって何か言わなくてもわかってくれる。だったらもう迷うべきじゃない。
実際、俺は前にシヴァにこれ以上この世界について探るなと注意されている。となるとシヴァが何か知ってるって可能性は高いから聞くしかない。
また止められるかもしれないけど、どうにもシヴァが俺に知られたくないことと今の現象が結びつく気がする。というか手がかりがそれしかない。
だからむしろ、結びつけるしかないんだ。
「よし、シヴァに色々今から聞きに行こう。俺の考えてあることがあってるかも答え合わせしたい」
「待って」
まだ俺が歩き出してもいないのにミカが手を掴んで俺を引き止める。何か勘が働いたのかもしれない。首を横に振っている。
「すごく嫌な予感がするの。今日じゃなくてせめて……あと6日間は考えてみない?」
「どのくらい嫌な予感?」
「有夢が死んじゃった時と同じくらい」
本気で言ってる。
ミカもそうだけど、前回のシヴァも合わせてここまで俺を何かが引き止めるのか。
そうなるともう、俺の考えが答えだと誰かが言ってるようなものなんじゃないかと思えてくる。引き止めてくるのかもしれないけれど……これから突っ込んでいかないと今の現象に埒があかない。
かと言って今はダメだと言われてるのに、わざわざシヴァに会いに行くのも自殺行為。まだ被害は慌てるレベルじゃないしミカの言う通り6日間待とう。
「わかった。この6日間の間にしっかり準備をしよう。せめてここの住人全員には今わかっていることを伝えたりさ」
「そうね、そうするしかないかも」
そうと決まれば仕事は今日中に全てキャンセルにしておこう。SSSランクが頻出していて討伐に忙しいから、活動はしばらく休むとでも言っておけばいいか。言い訳に使えるくらい脅威だもんね。
よし、準備の目星がついてきたぞ。
「じゃあとりあえずは6日間を有意義に過ごそう。今日はまだ正午ですらない。やらなきゃいけないことはやれるね。じゃあまず……」
「じゃあまずは今日の仕事含めて全部断らなきゃね」
あ、ミカも最初はそれにするのか。うん、たしかにお仕事関係は早めにしたほうがいいからね。
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「みんなすんなり納得してくれたね」
「前払いの報酬と準備してくれた材料費の弁償はしたし、SSSランクの魔物が怖いしで受け入れやすいんでしょ」
むしろ弁償代は払わなくていいとどこのお店も言ってれた。それでも半ば押し付けるように渡してきたけどね。
「あとは夕方にみんな集めて説明会ね」
説明会って言っても、今説明できることはごくごく少数ですぐに終わると思う。なんにせよまだ勘と想像の範疇を出ることのできない考察ばかりなわけだし。
「はぁ……どうなっちゃうんだろ」
「わかんないなー。でも、何かあっても必ずミカのことは守るからね!」
「ダメ」
「え?」
「必ず一緒じゃないとダメ。有夢が私のこと守るなら、私は有夢のこと守る」
「そうか……」
男としてはカッコつけて言いたかったけどミカには良くなかったか。そもそも花瓶にあたってアナズムきちゃうような男か女かよくわかんない俺がカッコよさ求めてもダメだけど。
……まてよ、普通あんな都合よく頭に花瓶あたる? ミカの死因である交通事故も犯人がわからずじまいだし……まさかね。でも一応、脳内謎なことリストに入れておこう。
「さ……てと、集まる時間までイチャイチャしようか有夢」
「ええ、この流れで!?」
「ダメかな?」
「もちろんいいに決まってる」
そうだ、何か悪い予感があるとしてもその間にやりたいことをたくさんやってしまえ! 俺とミカの場合はいつも通りラブラブエッチだから平常運転だけど。それでも、うじゃうじゃ考えるより思いっきり欲をぶつけたほうがいい!
「あ、エッチする前にひとつだけ」
「あ、エッチまでするんだ。それでなに?」
「なにかあっても中心に立って頑張りすぎないでね」
「うん……わかった」
「そのわかった、信じるからね。無理は禁物よ?」
大丈夫、無理はしてない。休まなきゃいけない時は休むことにすから、今みたいに。
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