閑話 翔が惚気るだけの話 (翔)
「わふぇ、ショー……!」
「どうしたんだ、リル」
やはりアナズムで過ごすのは普段は暇だ。だから150kgのハンドグリップをにぎにぎしていたらリルが後ろから抱きついてきた。
相変わらず、どこがとは言わないがいい弾力だ。甘えてくるのもいつも通りだしな。
「甘えたいよ!」
「よし、甘えてこい!」
「わっふん!」
今度は前から抱きついてくる。すごく可愛い。
耳も立っているし、尻尾もちぎれんばかりに振られている。こうして喜んでいるってありありとわかるのも、本当に可愛い。……よし、ここはひとつ。
「わーふぇっ!?」
「えっ」
「え、あ……ごめん、つい」
こっそりと、いつも揉んでいる場所を普段通りにしようとしたが、何故か避けられてしまった。毎日むしろ自分から誘ってくるのに何故だ?
いや……今、非常にリルが怯えた表情で俺の手を見ていることに気がついた。そして触ろうとした方じゃない手に持っているのは150kgのハンドグリップ。なるほど、これは怖い。
「ちゃんといつも力加減してるだろうに。とりあえず怖がらせて悪かった」
「私こそほんとにごめんね、反射でつい。……いいよ?」
リルは自分の腕で二つのものを持ち上げる。どうしてこうも魅力的なのだろうか。今日は比較的冷静なのか、衣類を脱がないみたいだが、それでも十分……。
ハンドグリップは机の上に置いておき、俺はそれに手を伸ばしていつものように優しく掴む。
ちなみに、もし全力を出そうものなら酷いことになるだろう。
「ショーがこまめにこうしてくれるから私の胸も育ってくるんだよー」
「これ以上大きくなってどうすんだよ、もうGだろ?」
「もう一段階くらいならいいかなって思ってる」
「まじか」
別に俺はどんなんでもいいけどな、しかしHかぁ……それもそれで悪くない気がするが。
本当はリルが甘えてきてるはずなんだが、逆に俺がひとしきり堪能してしまう。昔はこんなのじゃなかっな……頭に堪能する余裕なんてなかったし。
それはさておき、素早くリルはまた抱きついてくる。
「わーふぇ……」
「次は俺の番か」
「筋肉ぅ!」
いつもの順番だ。等価交換ってやつだな。リルが筋肉を催促してくるときは相変わらず俺は半裸にならなきゃならん。上に着ていたものは全部脱ぎ去り、ボディビルがよくやるポーズをとる。
「筋肉筋肉ぅ!」
「おう」
撫でたりさすったり、彼女の特権として……いや、犬の半人らしく舐めたりしてくる。これをされている時は毎日思うが……筋肉鍛えててよかったぜ、ほんと。いやむしろリルが筋肉フェチでよかったというべきか。
そろそろポーズを変えよう。
「わふぇーー!」
「はっはっは!」
_____
___
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今日もイチャイチャしてしまった。
と、付き合い始めていくらたった頃か忘れたが、とある日から会話などに変化はあるものの毎日アナズムでは繰り返されている。
毎日だが、満足だ。
昔はもっと気持ちの持ち方が違ったんだがな、特に俺があまり乗り気じゃなかったっていうか……。
「わふー、ショー、満ち足りた顔してるねー?」
「実際その通りだからな」
「そうなんだ! 彼女としてとても嬉しいよ」
そういや、この前にアナズム来たときは、昔のことを夢で思い出したとかで非常に甘えて来てくれた。
あの時のリルの満足そうな顔と言ったらもう……彼氏としてとても嬉しかった。しきりに結婚をせがまれたし。こうしてお互いで供給しあうのは理想の形だと思うぜ、うん。
「わふわふ、明日も多分同じようなことになるね」
「だな」
「幸せだけど同じことの繰り返しもなんだし、また旅行でも行こうか」
「いいけど、今外にでたらSSSランクの魔物に遭遇しそうだぜ」
「確かに。そういえばショー、あれから私とイチャイチャするのに抱いていた少しの抵抗も微塵もなくなったよね」
そうだな、リルとずっと過ごして来てだんだん抵抗は無くなって来てはいたが、一番ごっそりと残りの性の堕落に対する抵抗心も削っていったのは前の旅行だな。
あの旅行は毎日だったからな、毎日。胸を揉むとかそれどころじゃないやつを前日ずっと。流石の俺も抵抗なくなるし慣れるって。
むしろこれは堕落なんかじゃなく、彼女の欲求にしっかり向き合えるようになったって言うべきだと思っている。
「あれだ、残っていた気持ちの硬さも、どんどんリルに骨抜きにされていってるんだぜ」
「わーふぇ、私、犬じゃなくて狼だから、骨よりお肉の方が……」
「そういうことじゃない」
「わふふ、わかってて言ったんだよ。……それでその……私に骨抜きになったってことは、今日の夜を誘っても大丈夫なんだね?」
リルがもじもじしながらいう。
昔の俺だったら間違いなく、「おとといしたばかり」などと言っただろう。でもそれすら違う。
「いいぜ」
「わーふん!」
……こうやって有夢と美花も過度にいちゃつくようになったんだろうか。きっとそうなんだろうな。
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