第796話 ダンジョンの法則性

「それじゃあ、教えてください」

「わふん」



 レベル上げから帰ってきた翌日、俺はリルちゃんのお父さんにダンジョン発見の法則性を教えてもらおうとしていた。この人は素で頭がいい。俺には理解できない話があるかもしれないから、リルちゃんとカナタにも同行してもらってる。



「まず、ダンジョンというのは「喜」「怒」「哀」「楽」の4つのパターンがあります。それぞれがどういうダンジョンかはアリムちゃん、君の方が詳しいと思います」

「はい」

「そしてこれらは、一つ見つけたら残り全てを見つけることができます。これが私の発見した法則の一つです」



 な、なんと。リルちゃんの父さんが言っていることが本当ならダンジョンが一つできたら残り三つも生成されるってことじゃないか。



「ダンジョンにはそれぞれ地名が付きます。その地名の範囲内に必ず4つあるのです」

「じゃあ、昨日のトリアエリアル山も?」

「わふ、ほかに3つあるはずです」

「でもボク、あの山は諸事情で掘り返したりしてるんですよ。でもダンジョンなんか一つも見つからなくて……」

「わーふー、それは残り三つをだれかがクリアしていたか、アリムちゃんがあの山を掘り尽くした後に生成されたかのどちらかでしょう」



 まあ、それに掘り返したと言っても地中だし、多分広さ的に一部(トリアエリアル山はすごく広い)だったから、見つけられなくてもおかしくはないか。



「それで本題です、ダンジョンを探す際の計算なのですが____________」



______

____

__



「____________というわけです」

「わふん、なるほどね!」

「にいちゃん、わかりやすく言ってあげようか」

「お願いします」



 カナタが要約してくれた。

 つまりリルちゃんのお父さんが言っていたことは、ダンジョンは4つで1セットであり、そのダンジョンが現れた地形によって距離は変わるものの、正方形か長方形のどちらかの感覚で離れているということ。


 そしてそのダンジョン同士が離れている距離は出現した場所の広さによって変わる。だからその地形の広さが測定済みであれば計算できてしまうらしい。

 ただ、あまりにも広すぎると、真ん中らへんに固まったりするから3パターンは計算が必要らしいけど。



「つまりはこういうことですね」

「す、すごいですね、参考にしますよこれから!」

「……わふん。ただ一つ、気をつけて欲しいことがあります」

「え、パパ、なにかこれに気をつけるべことがあるのかい?」

「……この法則を発見したちょうど1ヶ月後なんだよリル、私たちが死んだのは。たしか……記憶が正しければ、計算し終えた日にち、時刻、共に一緒だったはず」



 え、それってつまりどういうことだろう。

 でも確かにかなり不気味だな……。



「普段は現れないような魔物の大群が現れたんだったね、パパ」

「うん。だが村が無事だったってことは、ダンジョンを見つけ同胞達に探検させ続けたのは正解だったってことだね。それは良かったんだけど……」

「ど?」

「なぜか私たちに、ダンジョンを活用してレベル上げをするという発想が湧き上がらないことといい、不可解なことばかりなんですね」



 確かにそう言われたらそうだ。……もしかしてリルちゃんのお父さんってかなり触れちゃいけないような場所まで近づいたりしたから何かに殺されたとかじゃないよね?



「普通のSSランカーなどは片っ端から仕事をしたりダンジョンをいくつもクリアしているんだっけ。……冒険者という歴史も、ダンジョンという歴史も長いらしい。だれか賢者や勇者など意外で気がついても良さそうだけどなぁ」

「わふん、だね。やっぱりなにか第三者できなものがいる気がして仕方ないよ」



 この考察ってこのまま進めていいのかしらん。タブーとかじゃないの? なんか怖い予感がするよ。

 でも俺だって気になるのは本当だ。

 だとしたら……聞くのにはちょうどいい奴らがこの屋敷にはいるじゃないか。特にそのうち一人は味方だし。



「ところで、実はうちってボクら14人以外に住んでるのがいるんですよ」

「え、そうなんですか? じゃあ挨拶しちゃわないと……でもなぜ今それを?」

「多分、今みんなが話していることに深く関わる奴だから……」



 リルちゃんとカナタは俺がだれの話をしているかわかったみたいだ。



「にいちゃん、それは……シヴァにマジで聞くの?」

「え、え、どんな方なんですか?」

「わふぇ……知ったら多分驚くよ」

「でも知りたいじゃないか。もし質問を拒否されたら本当やばいからそれ以上聞かなきゃいいんだ」

「確かにそうだけど」



 リルちゃんのお父さんを抜いた3人で話し合った結果、質問をしてみるだけしてみようという話になった。

 そして、リルちゃんのお父さんが村ごと魔物に襲われてしまったように何か起こるといけないから、ショー、サクラちゃん、ミカ、そしてついでにうちのお父さんも連れて行くことになった。

 頭がいい人は多いほうがいいからね。

 俺たちの質問に、魔神達はなんで答えるんだろう。

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