閑話 魔法少女サクラ☆ 最終話前編

「いいのかホイホイここに来て。俺は四天王最強の男なんだぜ? 魔法少女、やらないかっ……ぐわああああ!」

「無慈悲チェリ」



 半裸の男のようなものは叶の手によって消し炭にされた。目の前にはダンジョンのボスの部屋手前のような大きな門が構えている。



「ここにきっと、黒幕がいるチェリ!」

「パッと終わらせてさっさと帰ろう」

「叶、この島に来てから不機嫌だし、四天王の3人目を倒してから私の手をずっと握ってくれてるけど、どうかしたの?」

「いいや、特に何も。とにかく入ろう」



 3人は中に入った。

 そこには玉座に座った巨大な影が一つ。



「むぅ? 何者だ?」

「ここはボクチンが答えるチェリ。こら魔王! 魔法少女が直接お前を倒しにきたチェリよ!」

「なに、直接だと!?」



 巨大た影がどんと晴れてゆき、そこには1体の凶悪な人間の顔と山羊の顔を合わせたような不思議な巨人が居た。

 


「そうかそうか……直接……か。今回は手間が省けたな」

「ど、どう言うことチェリか?」

「魔法少女という存在、それは私が作り出したのだ」

「な、な、な、なんだってっ!?」



 驚くランボー。

 アニメによくある内容だと考える叶。

 一回しか変身してないため、どこで驚いたらいいかわからない桜。3人はそれぞれ反応をした。



「私が生み出した幹部どもと戦わせ、魔法少女が私と直接対決する。しかし、絶対に勝てっこないのだ」

「なんで?」

「なんでってそりゃ吾輩が作ったからで……ん? なんでもう一人ここにいる?」



 やっと魔王は叶の存在に気がついたようだった。ランボーは魔王に説明をする。



「ふ、ふん! しかし今回は魔法少女なんかより強く、魔法少女とは関係を持たない存在を連れてきたチェリ! お前なんかに負けないチェリよ!」

「ほう、男か。…….吾輩の標的は魔法少女なのだ。ここから居なくなってはくれぬか?」

「えーっと、とりあえず貴方を倒したら居なくなるよ?」

「はぁ……男には興味は…おっと、よく見たら貴様、男の娘というやつではないか? 吾輩の守備範囲ではあるがやはり男を伴侶にはできないしな……」

「は、はんりょ? どういうことチェリか!」



 ガハハハハ、と魔王は笑った。

 そして気持ち悪く舌なめずりする。



「過去の魔法少女を、四天王を一気にぶつけて倒さなかったのは吾輩の伴侶とするため! 戦闘を経験させ、内なる魔力を成長させる。そして魔法少女が、魔法少女となる場合の願いごとをしていた場合………」



 山羊の魔王は桜を見てニヤリと笑った。桜の背中に寒気が走る。



「吾輩に無条件で洗脳、ひれ伏し、我が子を孕むのだ! 意識は保ち、愛する男の姿を魔法で見せながらな」

「そんな……ひどいっ!」

「外道・オブ・外道チェリ! よくも…よくもっ…通りでいままで魔法少女を導いた妖精はだらも戻ってこなかったんチェリね、本当は負けてたから!」

「お前らの伝承では、二人とも命を賭して使命を全うしたことになっているだろ? なはははははは!」



 山羊魔王は持っていた杖を桜に向けた。叶無言で庇うように前に出る。

 そこで、彼は何かに気がついたようだった。



「おかしい。なぜ二人ともふつうの人間の姿のままこの場に立って居られる?」

「ふつうの人間じゃないからだよ」

「……そうか、こりゃどうも二人とも手強い気がしてきたぞ。…….ならば手っ取り早く魔法少女を洗脳するのみ! 変身してなくても効果はあるぞ! はぁあああ!」



 魔王は洗脳用の怪光線を放った。しかし、桜には効果がなかった。



「な、貴様、願い事をしてないな!」

「……だって、桜の願い事はすでに俺が叶えてきてるし」

「えへへっ」

「はっはっは! チェリーチェリー! この娘は願い事を保留にしてるチェリよ! チェーッチェチェチェ!」

「なんと………リア充め、ここまでとは。……しかし」



 山羊はまだニヤリと笑っている。

 そして、ゆっくりと指を鳴らした。どこかで破裂音がする。



「なに!?」

「男の娘よ、お前の可愛い彼女を見てみると良い……」

「テメェ……なにをし……」



 叶は桜の方を振り向いた。そして完全に体を固めた。

 桜はきょとんとした顔をして叶を見つめ返すが、体が不自然に寒いのと、叶の視線を追い自分の体を見てみることで自分がどうなっているか気がついた。



「き、きゃああああ!!! みないで、みないでっ!」



 悲鳴とともに自分の見られたくない部分をとっさに隠そうとする桜だが、慌てすぎてうまくいかない。

 叶は目をつぶり、ダークマタークリエイトを発動した。



「ごごごごご、ごめんっ!! い、いま服着せたから……っ」

「とんでもないナイスバディだチェリ。とても中学生とは思えないチェリね」

「む、かなり良い身体だったが服をもう着せたのか、目で追えなかった。何という化け物だこの男の娘は。しかし…….これで吾輩の勝ちだ!」



 山羊魔王はもう一度指を鳴らす。

 その途端、叶になにやら電撃が走ったようなショックが起こった。



「か、かにゃた!?」

「言っただろう、吾輩は欲望を操れる。その男の一番の願望、それを叶えるための欲の強さを1万倍にしてやったわ! 女の裸をみた状況で、ふつうの男が募らせる欲望といえばただ一つ! はははは! 魔法少女を相手し始めたその隙に殺してくれるわ!」



 叶は動かない。

 桜は涙目になりながら、恐る恐る叶に触れた。



「か、かなた……? あ、あの、その……く、苦しいんだったら、や、約束の時とかより全然先だけど……どうしてもなら……嫌じゃないから、ね? ……その……でも、後にしよ……?」

「う……あ……」

「か……かなた?」



 叶はしばらく喋らず魂が抜けたようにそこに突っ立っていたが、山羊魔王の自分の能力の説明が終わると、自分の欲望を満たすため、行動に移った。

 桜の肩を掴む。

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