第726話 親達の動向

 モニターはとりあえず三つに分けておいた。

 予想通り、6人は夫婦で3組つくり、バラバラで行動するっぽい。用意しておいてよかったよ。


 ちなみに一人ずつに渡したトズマホは、あまり周囲に見られないように使ってと言ってある。

 もともとこの世界にないものだし、いじってるとこ見られてそれがなんなのか聞かれたりしたら厄介だからね。

 魔法図鑑や魔物図鑑、鉱物図鑑とかもアプリとして入れてあるからね。ほんとは動物図鑑までしか渡す予定なかってけど、トズマホだし仕方ないよね。



「とと…おお、とりあえず全員が冒険者登録終わったみたいだね」

「む…お母さんとお父さんが男の人に絡まれてる……」

「仕方ないよ。俺達の親だもん」

「あ、桜の両親もだ。でもこっちはおじさんがちゃんと払いのけてるね」

「ミカのお父さんはうちのお父さんと違って、中性的…もとい女の子みたいな見た目じゃないもんね」



 お父さんが若くなってから、やっぱりあの人は俺達の親なんだと再確認できた。

 そのまんまカナタだ。若くなってすぐは気がつかなかったけど、カナタにそっくり。

 ただ、俺とカナタとお父さん、誰が一番女の子に近いかって言われたら俺かな。俺はだいぶお母さんよりになっちゃったみたいなんだよね。


 どうやらお父さんは得意の話術でその場切り抜けたようだ。それにしても親がラブラブしてるところ見るのってなんだか不思議な気分。

 いや、普段からあの2人は相当いちゃついてたか…。

 俺とミカも人のこと言えないしなぁ…。



「それにしても親父さんは全く絡まれなかったね」

「威圧がすごいもん。近寄りにくいよ」

「翔さんの顔から優しさを取り除いた感じだしね。良い人なんだけど」



 ちなみに3組とも全く違うギルドで冒険者登録を受けてる。ま、冒険者登録をする場所なんてどこでも良いしね。

 


「お、もう依頼受けるんだ」



 それぞれが、冒険者を経営してる側からの小手調べ、もとい薬草積みを受けた。

 俺も最初にやったっけ。たくさん持って帰ってきたなぁ。すでに懐かしいよ。


 冒険者登録をしたことによって、この国の住人として正式に登録された6人は、それぞれ一番近い出口から薬草詰みに出かけた。

 今のところ、一番余裕がありそうな表情をしてるのはお父さんだ。


 しばらくはそれぞれ、受付の人に言われた通りの道を進み、薬草を探してるだけ。特に面白いこともない。

 特に何事もなく3組とも薬草が群生しているところについてしまい、採取を始めた。

 まるで雑草でもとるかのようにナイフで刈り取ってる。



「……ん? 父さん何やってるんだ?」

「あれ……母さんにまかせて佇んでるね」

「お父さん、お母さんに大変なことやらせるくらいだったら自分がやるって主義のはずなのに」



 でもお父さんのことだから何か理由があるんでしょう。しばらくそんな様子を眺めてると、別のモニターで魔物との接触があった。



「あ、親父さんがワタッコ三匹と接触したね」

「おお、撃つのはやい。もう倒したか」



 魔核は大切だし、魔物の体は売れるって教えてあるのできっちりと回収してる。

 といつかこの世界のボウガンをすっかり使いこなしてるね。MP消費して弓を放つの。



「ちょっ、お父さんのほうみて! スライム5匹に囲まれてる!」

「んー? 大丈夫かな。危なそうだったら助けよう」



 草の束を持ったお母さんと、なにか瞑想みたいなことしていたお父さんがスライム達に囲まれた。

 お母さん、こわーいと言いながらお父さんに抱きつく。

 お父さんはお母さんをヨシヨシしながら、近づいてくるスライムに向けて杖を振り回した。

 

 まあ、Fランクは子供でも頑張れば倒せるからね。

 そのうちお母さんも協力して杖を振り回してるうちにスライムは全部倒せたみたいだ。



「なんの問題もなかったね。それより今のでレベルが1つ上がったみたい。ステータスの更新もしたようだね」



 ちなみに2人がどんなステータスにしたかは見ないよ。ある程度の強さになったら、許可を得てから見ることにしたの。その方が面白そうだし。



「ふぅ、初めての仕事は全員無事に終わったな」

「曲木夫妻が一番何もなかったね」



 ギルドに戻った6人は、それぞれで全く同じ行動をとった。そう、次は討伐タイプの依頼。

 だいたいワタッコを狩ってくるやつ。ワタッコは綿のかわりになるし、クッションとかにも詰められるから、いくらあっても困らないから初心者用依頼として指定されてるらしい。


 ショーの両親はさっき狩ってきたワタッコじゃ足りなかったようで、一旦それをギルドに売って身を軽くしてから、狩に出かけた。残り2組はそのまんま行った。


 1時間後くらい、狩りも特に何も大きなことはなく終わった。ミカのおじさんは剣にSKPを割り振ったのか素人じゃない動きをすでにしていた。

 うちの両親は相変わらず杖で殴るだけ。

 ショーの両親は主に拳で殴っていた。



「ま、これで一通りこの世界のことは把握してもらえたかな」

「そうだね」



 みんなが依頼を終わったのを確認し、特に大きなこともなかったのでホッとしていたその時、モニターの一つが赤色に点滅した。



「なにがあった!?」

「これ……」



 想定外のことが起こった時のサインだ。

 そのモニターはお母さんとお父さんのものだった。

 想定外の非常事態。それは高ランクの魔物との遭遇。


 ……ドンゴブリン。

 なんでこんなところにDランクの魔物がいるんだ。

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