第705話 お祭り案
なかなか長風呂だった女子たちが戻って来た。かなり親睦を深めたみたいなのは一目でわかる。
なんの話してたんだろ…恋話とかかな。
「短時間ですごく考えましたね…!」
「こういう仕事も結構多いから、それを流用したりしてるんだけどね」
マジックルームに籠もって1時間と10分だけど、部屋の中ではだいたい11時間半もたっていた。俺の持ち前の持続力の賜物だね。
正直、これ以上の案はもう出ないよ。
「へぇ…ふむふむ」
「この企画書を入れたら数枚の絵としておこしてくれる機械があるんだけど、それも使ってひとつひとつ見てみる?」
「まあ! じゃあお願いします!」
俺はさっき作ったその機械を取り出し、企画書を一枚放り込んだ。それもテキトーに放り込むんじゃなくて、他のを選ぶときの基準となるような基本的なものから。
「う、動いた!? この箱の中の絵が動いてますよ、アリムちゃん! これはアリムちゃん達の世界の技術ですか?」
「わふ、アニメだね」
「そうだよ。髪を放り込んだだけで映像を作るだなんて技術はまだ無いけれど、絵を連続させて動いてるように見せるのは」
「へぇ……!」
企画を見ているというより、このアニメーションの方が気になってるみたいだ。それも仕方ないね、異世界の技術だなんて珍しいもんね。
「とりあえずこれら全てを持ち帰り、お父様と大臣様にお見せてしてもよろしいですか?」
「もちろんだよ」
「ありがとうございます!」
カルアちゃんは俺が用意したもの全てをマジックバックに仕舞った。全てデータはとってあるし持っていかれても困らないの。
「あと、アリムちゃんとミカちゃんに一つ、お願いがあるのですが」
「ん、なあに?」
「年末近くのこのお祭りは、毎年必ずパレードをするんです。そして我が国は今年活躍した有名な冒険者や騎士を、護衛も兼ねて、国王であるお父様と私達王族の側に置くんですよ」
「ま、アリムちゃん以上の冒険者なんて既にどこにもいないよねっ!」
「思えば一年も経たずにアリムちゃんはこんなことに…すごいですね!!」
なるほど、パレードのときに国王様のそばでマスコットとして居ればいいのか。
ミカとデートしようと思ってたけど、それも悪くないかもしれない。
「それって私も?」
「当たり前じゃないですか!」
「どうする、アリム。わたしは別にいいけど」
「じゃあ俺も良いよ。パレードの日に乗ってあげる」
「ありがとうございます!」
「……というより、この2人がそういう扱いでなければ、民から苦情が来そうだな」
あ、確かにそうかもしれない。だいぶ落ち着いたとはいえ、『ジ・アースを愛でる会』は未だに会員が増え続けてるらしいし。
というかぶっちゃけ、アナズムにいる5割近くの人間はそれに加入していなくともファンではあるらしいし。
本屋さんがいくら俺の本を仕入れてもすぐ無くなるってうれしい悲鳴をあげてたっけ。
「そういえば去年は誰が?」
「去年と一昨年はラストマンとパラスナさんですよ。それより前は10年近くギルマーズさんみたいですね」
「へぇ…」
今は俺の時代だって言っても良いかもしれないけれど、奴隷解放の運動がある前まではこの国のSSSランカーはギルマーズさんと、裏世界で奴隷商の頭領をしていた人の2人だけらしいからね。
そして後者は民間人には嫌われ者だから10年ずっとギルマーズさんがパレードをやるだなんてことになったわけだ。
……あの人と戦ったことないけど、もしかしたら今の俺にも普通に対抗できたりしてね。あはは、いや、流石にないか。
「そういえば今って、SSSランクとそれと同等の強さの人ってどのくらいこの国に居るの?」
「えーっと、アリムちゃん、ミカちゃん、結婚したお二人にギルマーズさん、お父様にセインフォースの4人方、私とティールお兄様。それとこのお屋敷に住んでるリルちゃんやサクラちゃん含めた4人。そして地下に幽閉している元奴隷商……計15人ですね」
「そんなに居たんだ……」
もし他の国と戦うことになってもまず負けるだなんてことはないはずだ。普通の国はSSSランカーは2人くらい、引退した人とかも含めても4人だからね。俺がくるまでこの国もそうだったわけだし。
「ほとんどが今年からSSSランカーになった人ばかりですね」
「この国はそんなことになっていたのか……それもこのアリムが原因か?」
「ふふ、そうですね」
「改めて思うが、アリムは何者なんだ?」
「……さあ、なんでしょーね。ふっふっふ」
ただのゲーム好きな女みたいな男だよ。
忍耐と持続力が強かったからここまで来れたのさ。うーん、振り返ると今年一年はすごかったなぁ…。
ちゃんと振り返るのはまた年末にしようね。
「さ、お仕事も終わったし、みんな寝るまで遊ぼうよ」
「そうしましょう! 次は何にします?」
「あんまり運が絡まないゲームがいいな…」
そのあと、俺たちはめちゃくちゃ遊んだ。
すごく遊んだ。12時には寝たけどね。
いつも通り、カルアちゃんは俺のベッドに入って来て。
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