第665話 応援!チアガール(ボーイ)

【やはり、有夢は女の子だよな】

【う、うるさいやい!】



 やっぱりシヴァを連れてくるのは失敗だったかな。

 こいつが一番俺たちに色目使ってる気がするの。



「でもにいちゃん、すごく似合ってるよ」

「俺が似合ってるってことはお前も似合うってことだぞ」

「……そ、それはどうだろうね」



 女装は俺自身わりと好き…いや、慣れている。

 でもそれに関しておちょくられるのは嫌いだよ。



「でもやっぱり、かわいいね」

「美花の方がね」

「そんなことないわよ」



 実際美花はものすごくかわいい。さっきからチラチラと見えるおヘソが良い。いやぁ…普段から見てるとはいえチラリズムというのは実に…コホン。

 ともかく俺以外の人にこれを見せるのは惜しい。

 ぐぬぬ。

 翔だ、そう、翔とその仲間達だから特別なのさ!



「さ、行こっ」

「うん!」



 俺と美花は柔道部員達の前に飛び出した。

 俺も…いや、ボクもスイッチを入れなきゃね。ふふふ。



「えー、こほん。星野君、二山君、中川君、剛田君…そして翔! 全国大会本番になりましたね!」

「うん、全力で頑張って欲しいから、私達も頑張って応援します!」



 用意しておいたボンボンを取り出し、ちょっと練習した通りに振り回す。応援の言葉をつぶやき続けながら。



「お、おおお!」

「翔….お前の幼馴染達、やっぱ…」

「惚れるなよ? 一方男、一方彼氏持ちだからな」

「んな殺生な…」



 うーん、これで本当に応援になってるのかしらん。

 


「わふ! 私も参加するよ!」

「な、なに!?」

「あー、リルちゃんもやる? 用意してあるよ」



 いつの間に…。

 リルちゃんはこっちによってきて美花からチアの服を受け取るとトイレに駆け込み、すぐさまそこから出てきた。

 うん、とても可愛くて似合う。

 翔を見てみるとどうやらリルちゃんを見つめてるようだった。好きだねぇ…。



「うおおお! きたああああ!」

「うちの学校三大美少女のチア姿…!」

「ごぼ、ごぼぼぼぼ!」



 興奮しすぎて一部なにいってるかわからないし、鼻血を出す人が結構いるのはさすがに予想外だよぉ…。



「リルちゃん、打ち合わせわね……」

「うんうん、なるほど、二人に合わせれば良いんだね!」

「大丈夫?」

「できるよ、任せて!」


 

 リルちゃんが美花から簡単に内容を教えてもらい、本格的に参加してきた。もうしらん、とりあえず踊って鼓舞しよう! 頑張って欲しいのは本心だからね!



「翔、リルちゃんだけじゃなくおれ…ボクと美花も見てよね!」

「ち、ちゃんと見てるから! それよりいきなりこんなことやりだしてびっくりしてるんだぞ!?」



 そっかそっか、ちゃんと見てるならよしとしよう。ここまで頑張ってるんだからしっかりと見てほしいんだよね。



________

_____

__



「「「ありがとーございました!」」」



 やっと終わった。ふふふ、やりきったぜ!

 最後にうちの出場選手一人一人に激励と握手をしておしまい!

 なんか鼻の下伸ばしてる人がほとんどだけどね。これでもうしまい。さっさとトイレで着替えて普通に時間を待とうね。



「う、うわぁ!?」

「ここ男子トイレですよ? 間違えてますよ!?」



 着替えをするためにトイレに入ったらそう言われてしまった。仕方ないね。



「あ、俺男なので…」

「えっ…ええ…!?」

「あれ…もしかしてネットで見た…あの…」



 なんかいいかけてるけど半ば無視して俺はトイレに篭り、着替えた。このチアの服はもう着ることはないでしょう。でも帰ったら美花には着てもらおう、もう少しじっくり見たいんだ。

 着替えをし終わり、柔道部員達のもとに戻る。

 まーだ骨が抜かれた状態みたいだね。美花とリルちゃんが可愛すぎるからね、仕方ないね。

 

 

「はぁ…」

「あ、翔!」



 椅子に座って水を飲んでる親友発見!

 早速感想を聞こうね。



「どうだった?」

「ああ、有夢…可愛かったぞ…3人とも」

「えへへ、ありがとー! で、周りの感想はどうだった?」

「……えっと、『臍がエロい』『可愛すぎて死にそう』だとよ。まあ、他にもいくらか感想はあるが。あれ、うちのチア部の衣装だろ?」

「うんうん、なかなか可愛いからね、うちのチア部の衣装は…」



 やっぱりそんな感想を抱かれてしまうか。しかし、一般的に見たらわりと普通の衣装なんだよ。

 そう……着た人物が美人すぎるからエロく見えるんだ。

 不思議だね。



「なんか…幼馴染と彼女が他の男どもの目の保養になってるって考えると気分が沈むぜ…」

「ご、ごめん…応援したつもりだったんだけど…逆効果だったかな?」

「いや、応援にはなった。ありがとよっ」



 そう言って翔ははにかみながら俺の頭をポンポンと撫でてきた。翔にとって応援になるならそれでいいからね。俺にとっては。



「ショー! どうだった?」



 お、リルちゃんと美花も着替え終わったみたいだね。



「おうリル…。やっぱお前、人前でブンブン跳ね飛び回るなよな、あんまり。揺れるぞ…! 何がとは言わないし…美花もだが」

「わふ、何が? 地面? 私って痩せてる気がするんだけど…地面揺れる?」

「いや地面ではねーが………なんでもない。気にすんな。それよりリルと美花もありがとな、応援」



 そういいながら翔はリルちゃんと美花の頭も撫でる。



「ふふん、まあ、あなたがいなきゃこんなことしないよ。幼馴染サービスってやつね!」

「おう、これで何倍でも頑張れそうだぜ」



 翔ってやっぱかっこいいよね…いや、同性だけどそう思う。ハーレム大魔王ってアダ名、やっぱりしっくりくると思うの。

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