第655話 今年、この街最後の訪問
「ふふふー、どうだった?」
「手応えあり! …いや、そもそも」
「満点取れてる…でしょ? うん、私もそんな感じがすんだ」
やはり美花も手応えありか。
ぶっちゃけオーバーなほど勉強しすぎたかと反省するくらいにできてしまった。少なくとも今日受けた科目は全て満点取れてる可能性が大きい。
「で、今日行くよね? サーカス」
「うん、行こうね!」
実は少し躊躇してたんだけど、まあ最初のテストがアナズムでの勉強でここまで感覚があったのだから光夫さんの元を訪ねてもいいだろう。
「ね、どうする? 多分これで行くの最後になると思うけど、翔や叶とか誘う?」
「まあ返事次第ね。訊いてみよっか」
帰りのホームルームが終わったばかりで、まだ翔とリルちゃんはこの教室にいる。
俺と美花は二人の元へ駆けた。
「わふ、満点取れてる気がするんだよ!」
「リルもか? 俺もだ。…いや、アナズムでの勉強ってのはすげーな…」
「やあやあお二人さん!」
なんか俺たちと同じような話をしていたね。
やっぱり考えることは一緒か。
「お、有夢と美花。どうだった?」
「多分、満点よ。最悪でも90点以上はいってるかな、今日の全科目」
「おお、お前らもか」
相当良い感覚があったのか翔がニコニコしてる。
「リルちゃんに取っては実質初めてのテストでしょ? どうだった?」
「テストというのは『出来る』ってわかってても中々緊張するものだね。これがもしノー勉とかだったらガタガタのブルブルしてるか悟りを開いてるんじゃないかな?」
「そうね、まあ一切勉強しないで平均点以上とるような人も居るわけだけど……」
どっかの兄弟みたいに、と美花は小さく呟き、さらに俺を見た。……俺は確かにそうだけど、叶の場合はさらにそれでも学年トップレベルだから、あんな脳みそモンスターと一緒にしちゃダメだよね。
「ところで今日は私と有夢で光夫さんに確認したいことがあるしサーカスに行くつもりなんだけど、一緒に来る? 時期的にも行けるのは今日が最後よ」
「まあ…こんだけ余裕あんなら、いくかな」
「わふ、魔神のことについてだね? いくよいくよ」
「じゃあ決まりね」
よし、翔とリルちゃんは行くのが決まったね。
次は叶と桜ちゃんに訊いてみよう。あの二人はもうテストと帰りのホームルームが終わって20分は経って居るはずだから連絡しても大丈夫かはず。
《叶、今大丈夫?》
《お兄ちゃん、なに? 桜と帰ってるだけだから全然大丈夫だよ》
《そっか。今日さ、光夫さんへの色々な事の確認と、サーカスが別の街に移動しちゃうってこともあるから、行こうと思うんだけどどうする?》
《そういうことなら俺もいくよ。今きいたら桜も行くってさ》
《りょーかい! じゃあ一旦家に帰ったら家に集合って桜ちゃんに伝えといてね》
《わかった》
よしよし、叶と桜ちゃんも来ることが決まったか。
「二人とも来るって!」
「そっか!」
「じゃあ一旦みんな帰ったら俺の家に集まろ」
「わふ、わかったよ!」
俺たちはそのあと教室を出た。
久しぶりか……もはや初めてなんじゃないか、俺と翔と美花とリルちゃんの4人で帰路につき帰ってきたの。
途中で二人と別れ、家の前で美花と別れ、自分の部屋で着替え始めた最中に叶がノックした後に部屋に入ってきた。
「ごめんよー。にいちゃん、訊くのはやっぱり俺で良いの?」
「ああ、うん。いいよー!」
「ところでにいちゃん、報告し忘れてたことがあるんだけど」
「ん? なぁに?」
叶がそう言うだなんて珍しい。
なんだろうか。
「100ポイント払って、俺はもうステータス使えるようにしてるから」
「ふえ!?」
そう言いながら叶は手にバスケットボールくらいの水の球を出現させた。ウォーターボールだね。
「い、いつのまに」
「んーまあ、試しに俺だけ。もし体に負担がかかるとかみたいなことあったら大変だからさきに体験しておこうと思って」
「そ、そんな危ないこと、にいちゃんがやるよぉ?」
「いいんだよ別に、なにも害がないことはすでにわかってるんだし。昨日は1回だけアフリカまで飛んで象を見てきたよ、こっそりと。はいこれ、写真」
「ええ……」
スマホで象とのツーショットを見せてくれた。合成写真ってことはないっぽいし、やっぱり本当に行ってきたんだろう。てか本当に瞬間移動で外国に行けたんだ。
どこにでも行き放題じゃん、すげー。
「まあ、さすがに街中とかには行かなかったよ。密入国扱いは大変だからね」
「扱い、じゃなくてそのものだけどね…なるほど、本当に作用するんだ」
「うん、試しに攻撃力のステータスだけ解放して見た結果ね、石を握りつぶしたら綺麗に粉々になったよ。これもきちんと作用するみたい。小指一本で人2~3人分ぐらいの太さの木を押し倒しすことも出来たし」
「はえ…」
俺がテストが終わったら試してみようと思ったこともうほとんどやられちゃってる。魔法はさっき見たしね。
「だからま、今回も何かあっても大丈夫だよ」
「は、はは、うんそうだね」
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