閑話 王子達のデート (sideルイン) 3
昼食を食べ終わったルインとリロはまた公園内をぶらぶらと歩いている。
「案外、カップル多いわね」
「まあ、この街の中の大きな公園はそれぞれ多いよね」
「……ね、ルイン」
一つのカップルに注目しながらリロは言う。
「みんな手を繋いでるわね」
「たしかにそうだね……」
ルインはリロの手を見た。そして次に顔と様子をみて、次に取るべき行動を、チャンスを逃さないように覚悟を決める。
「じゃあ、僕たちも繋ごうか」
「……うん」
ルインは指先でリロの手に触れる。リロはそれを掴み、指を絡めた。
「昔はこの程度のこと簡単にやってたのに」
「これが付き合うってことなんだよ」
「そうね、やっぱり全然違う」
手を繋ぐだけでここまで照れることに二人は困惑しながらも付き合うという実感を味わっている。
「さ、次はどこに行くのかしら?」
「うん、デートにうってつけのものがあるからね、この公園には……そ、あれだよ」
ルインが指を指した先には、ひとつの大きなテントが。
劇団の会場だった。
「たしかに彼氏のいるメイドさん達がデートといえばここがいいって立ち話してたの聞いたわ」
「僕もそう思ってね。入ろうか」
「そうね。評判も何も私は知らないけれど。さっきからたくさんカップルが入ってるし……浮いたりしないわよね?」
「大丈夫」
そうして二人は料金を支払い、劇団のテントの中に入る。料金はルインがリロの分まで払った。
「ありがとね、でも王子だからって奢ったりしなくても…昼食もお金出してもらったし」
「いやぁね、男側がお金払うの当たり前だなんて話をよく聞くものだからさ、初デートだし、悪くないかなって」
「そういうことね。たしかによく聞くわ……それなら甘えた方がいいわよね」
そんなことを言い合いながら二人は席へ着いた。
テントの中はどこをみてもカップルばかりで、一人でいている人など2、3人もいればいい方であった。
「どんな劇を見せてくれるんだっけ?」
「今期は貴族と貧民の男女の恋愛物語だね」
「ああ、恋愛物語だからこんなにカップルばかりなのね」
「…お、あと少しで始まるよ」
ドラを叩いたような音ともに、劇は開始された。
貴族らしき男と貧民らしきボロをきた女性がひょんな事で出会うシーンからだった。
二人は周りに迷惑にならない程度の声量で話し合う。
「あそこまでの貧民って街に居たかしら?」
「明日食べるものも困っているっていう民はこの国には居ないはずだよ。先代国王とお父様が全力で改善させたし、奴隷はウルトさんが、路地裏とかに蔓延っていた裏社会はアリムちゃんが自然消滅させたし」
「そうよね……他の国にってこともあるわね」
こういうことをつい政治的に考えてしまうのは本物の貴族、本物の王子だからこそ。
二人はそのまま劇を見続ける。
『どうして! どうしてあなたは私と違うの?」
『同じ空の下に生まれたと言うのに! 俺たちはどうして!』
中盤も終わりに差し掛かった頃、二人は目に涙を浮かべながら劇を見ていた。
「す、すごいね、こんなにも劇で感激できるなんて思わなかったよ」
「ど、どうなるのかしらね、これから」
劇はそのまま終盤へと突入。
途中で人目を忍んで二人で落ち合うシーン。
『こうやって君の手を握っていると_____なんだか安心するんだ』
そのセリフが出た途端、周りのカップル達は一斉に手を握り出し、彼女は彼氏の方に寄り添い出す。
「え、え、なにこれ?」
「これをするのがどうやら定番のようだね」
「そ、そうなんだ。じゃあ……」
リロは周りに合わせて、ルインの手を握り、身を寄せた。
(うっ……やわらか…)
幼馴染の柔らかいものが押し付けられ、ルインは少し困惑したが劇に集中することでことなきを得た、ような気がしている。
「えっと、いつまでこのままなのかなぁ?」
「周りが辞めたらでいいんじゃない?」
「ルイン、暑かったりしない?」
「僕は別に劇が終わるまでこのままでも大丈夫だよ」
「そうなの? へえ」
かくいうリロも割とこのままで大丈夫なようで、手を握ったまま身を寄せ続けている。
結局、この体制のままで40分が経過。
劇は大詰めへと。
『___! 君が何者でも構わない! 君のことが好きなんだ!』
『_____! 私もっ…!」
親などを大舞台上で説得し、晴れて二人が結ばれるシーンとなった。男優と女優は互いに抱きしめあい、キスをし始める。
それに合わせて周りのカップル達も相方を抱きしめ、キスをし始めた。
「えっ…キス…!?」
「は、ははは、まさかこんなことになるなんて」
「………ルイン、ルインはどうしたい?」
そうきかれて、ルインは一瞬戸惑った。
しかし気がつけば次にはリロの肩を掴み、見つめ合う形にしていた。
「いいかい?」
「うん、私、初めてだけど…キス…」
「僕もだよ」
「えへへ、知ってるわ! ……んっ」
「んっ」
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