第410話 姉と妹 (ミカ)

「こうやって一緒に寝るの、久し振りだね」

「うん、お姉ちゃん!」



 私と桜は同じベッドで寝てる。

 この屋敷、普通のベッドよりダブルベッドの方が多いよね?



「まずはその…先に死んじゃって、寂しい思いさせてごめんなさい」

「ん…」



 私はただ謝るの。

 桜は何も言わないで、ただ私を見つめるだけ。



「その…そっちはどうだった? お母さんとお父さんとか」

「そりゃあ…悲しんでた…なんて言葉じゃ足りないよ。…ね、一応訊きたいことがあるの」



 お母さん、お父さん。

 もう少しでまた会えるかもしれないから、待っててね。

 それにしても、何かしら。

 桜の面持ちが真面目を通り越して何度か恐い。



「自殺…じゃ、ないよね?」



 自殺。

 そうか…私は地球でそう思われてるのかな。

 そう考えられちゃうのも仕方ないかもしれない。だって、本当に有夢が死んじゃってから2週間の私は……酷い、なんてものじゃなかった。

 今、こうして冷静に考えられてるけど…あの頃の私はいつ自殺してもおかしくなかったもの。

 でも_____

 


「自殺じゃないよ。翔が説得してくれたもの。……生憎、すぐに車に轢かれちゃったけど」

「車に轢かれたことはわかってるんだ。…うん、警察の人も監視カメラを調べたら、自殺じゃないって言ってた」

「でしょ?」



 あれは私の不注意っていうか、思いつきで有夢に最後のメッセージを送ろうと歩きながらスマホを弄ってたのが悪い気がするの。

 歩きスマホはやっぱりダメね。



「あの…お姉ちゃん、良かったね! こっちの世界であゆ兄と会えて。その…婚約までできて」

「うん、とっても幸せ! えへへへ、肝心の有夢は本当に女の子になっちゃってるけど、それは男に戻れるし。今はこの世界と向こうの世界を行き来できるってわかったし! 最高だよ、本当に」



 これ以上の幸せってあるのかな?

 だって、だって、こんなの考えてもいなかった!

 良くても有夢が居る世界か、家族が居る世界か、どっちを選ぶかの2択だと思ってたのに!

 


「あ、あのお姉ちゃん」



 桜がモジモジしだした。

 


「ん?」

「その…お風呂でさ、あゆ兄と…エッチいことしたって言ってたじゃない? ど、どうだった?」

「なに、興味あるの?」



 そういうと桜は顔を真っ赤にして顔をブンブンと振る。

 我が妹ながら、こういう動作は狙ってやってるわけじゃないからすごいと思う。

 こういうので叶君は庇護欲がそそられるのかしら?



「そ、そういうわけじゃないの! でもほら、その…私と叶の関係も…その…このまま続けば、一生のうちでそういう時が来るかもって…。あ、ああ、でも叶が私以外の人を好きにならなきゃの話よ?」

「叶君が桜以外の女の子を好きになるとは思えないけどなー」



 側から見てても叶君の桜に対する想いっていうのはわかるからね。

 


「まあ、お風呂でも言ったけど、お姉ちゃんはそういうことは高校生になるまで認めません。……世間からしたら、私と有夢も十分に不純異性行為なのかもだけど」

「うん…そ、それでどうだったの?」

「…………知りたい? 教えない。我慢しなさい!」



 ていうか、口に出すのは恥ずかしいの。

 桜はしばらく私の目を訴えるように見つめていたけれど、諦めたみたい。


 

「…わかった」

「うん、わかればいいの。いくら妹でも、そんなにズカズカ、入り込んできたらだめだよ」



 そう、これ以上は私と有夢の秘密なんだもの。

 ……そうだ、私からも桜に質問してみようかな。



「ね、今度はお姉ちゃんから質問していい?」

「えっ…い、いいけど?」

「桜は叶君のことどう思ってるの? あんたっていわゆるツンデレに近いじゃない。デレの方が多いけど」



 桜はしばらく困ったように目を泳がせた後、口を開いた。



「す、好きよ?」

「ただ好きなだけなの? 私以外ここに居ないんだし、本音言いなさいよ」

「ああうう…」



 顔を赤くして身体をモジモジと動かす。

 でも普通の人がするとそれとは違うの。

 やっぱりこういうのって狙ってないのよね?



「だ…大好きだもん。で、でも私、叶から与えられてばっかりだから。その…私から叶に何かできないかって悩んでる状態かな? あの、ちょっと向こうの国にいた時に相談にのってくれた人が居たんだけど…その人はこの身体を使えって…。でも、叶、恥ずかしがるの」



 あ、そんなアドバイスした人が居るんだ。

 まあ、その人も叶と桜の関係をみてそう言ったのね。

 じゃあ私からも、アドバイス。



「そりゃあ、有夢と私も最初はキスした後、しばらくは顔を合わせられないくらいだったわ。でもだんだん大丈夫になってくるよ。桜の場合、その人のいうとおり、身体を使った方がいいかもねー」



 本日2回目。

 桜の豊満な胸を掴む。

 そのうち、コレを叶君が掴む日はくるのかしら。



「んにゃあっ!?」

「むぅ…。地球じゃ私の方がワンカップ上だったのに、今じゃ私の方がワンカップ下だもの。いやーこれを使わない手はないわよ。一緒にお風呂入るなりしなさい、早く!」

「や…できない! 恥ずかしい!」



 こんなんじゃ、いつになっても叶君との裸の付き合いなんてのは無理だねー。

 まあ、時間がなんとかしてくれるかな。

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