第348話 呼び出され (叶・桜)

 同刻。

 サクラとカナタはあまりにも暇であった。



「……昼食も食べたし、何する? すっごく暇なんだけど」

「そうだね。大きな連絡なんて全くないしね」



 ソファに隣同士で座りつつ、二人は暇そうに話をしている。

 その時、二人の頭の中に、デイスからメッセージが来た。



【賢者らとその仲間に告ぐのじゃ。今日はローキス様より重大な報告があるため、午後1時30分に城の玉座の間に集まるのじゃぞ】



 そのメッセージを受け、二人は顔を見合わせる。

 


「…なんだろ?」

「さあ、とうとう魔神でも復活するんじゃない? とりあえず、ショーさんとリルさんにも連絡が来たはずだから、相談してみよう」



 カナタはショーとリルにメッセージを送り始める。

 内容をサクラにも伝えるため、サクラにも繋いで。



【ショーさん、リルさん 今…】

【カナタ君! デイスさんから来たメッセージの事だろ? リルにも来たみてーだ】




 カナタはコクリと頷…こうとしたが、メッセージであることを思い出し、やめた。

 そのままメッセージで連絡を取り続ける。



【重要な報告って…ついに魔神が復活するんですかね?】

【さあ…な】



 ショーのそのメッセージがあまり元気が無いようだったが、きっと、リルさんと別れるのが寂しいのだと、カナタは解釈することに。



【とりあえず、1時20分になったら、そちらに伺ってから瞬間移動で城に移動しますので】

【おう、悪りぃーな。頼むわ】

【はい、では】



 カナタはショーとリルとのメッセージを切った。

 溜息を吐きながら、ソファに深く腰掛ける。



「じゃあ…1時間後、隣の部屋に行ってからお城に行こう」

「うん」



 サクラらカナタに合わせてソファに深く腰掛け、横目でチラリと顔を見つつ、話題を振る。

 


「……本当に帰れるのかな?」

「正直、ローキスさんは俺らをこの世界に呼び出したけれど、その逆のことができるかどうかはわからない。本人はできると言っているけれど、そもそもローキスさんを俺は全く信用していない」



 そう、カナタはきっぱりと言った。

 サクラもそれに賛同する。



「だよね、だよね! …もし、もしさ、帰れなかったらどうする?」



 サクラのその問いに、カナタは数秒だけ考えてから、それに答えた。



「まず、この国に居る必要が無いよね」

「うんうん」

「なら、俺と桜、翔さんとリルさんの4人で別の国に、俺の瞬間移動で行ってしまえばいいんだよ。リルさんが奴隷だとか言われないために…うん、メフィラド王国に行こう」



 サクラはその提案に頷く。



「そっか…そうだよね。メフィラド王国に移ったら何するの?」

「まあ、俺も翔さんも大金持ちだから…各々で家を買って暮らすでしょ。ニートでも全然余裕なくらいお金あるんだから。暇にならない程度に、たまーに冒険者として活動しつつ、帰れる方法を探したりして」



 カナタはそう言いながら、サクラに微笑みかけた。

 サクラはそれにどきりとしながらも、話を続けるために、質問をする。



「じ…じゃあ、そうね…10年経っても帰る方法が見つからなかったら…?」

「まあ、そんなに経っちゃったら諦めてるかもしれない。10年後の自分の気持ちなんかわからないから。……どうしよっか? このまま付き合ってたら結婚しようか?」



 それを訊いたサクラは大きく目を見開く。

 ドギマギしながらも、そのカナタの何気ない問いに答える。



「も、勿論そ、そそ、そうしましょう。うん。結婚かあ…えへへ」

「まあ、10年後の話なんだけね。でも多分、俺は桜のことが好きなままだから」


 

 サクラはその言葉にひどく照れた。

 そーっと、カナタのより側に身体を持っていく。


 カナタは、顔を赤くしつつさらに頬が緩んでいるサクラの手をそっと握る。そんなカナタの顔も赤い。


 サクラはさらに目を丸くさせ、その手をギュッと握り返す。

 


「だからさ、魔神には勝たないとね。帰るにしても、生きて二人で過ごすにしても」

「うん」



____

___

_



 12時20分となった。

 未来の話を続けていたカナタとサクラはそれを中断し、ショーの部屋を訪れる。


 部屋ではリルが嬉しそうにニコニコしていた。



「何かあったんですか?」



 カナタはショーにそう訊いてみる。

 


「いや、別に。強いて言えばカップルらしい事をしてただけだぜ? 普通だろ?」

「ええ、そうですね」



 全員準備を終えてる事を一人一人に呼びかけて確認し、カナタは全員に自分の身体を触れさせる。



「じゃ、行きますよー」



 カナタは城へと瞬間移動をした。

 玉座の間に着くと、玉座の前でローキスの登場を待った。

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